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マザーグース『ヘイ、ディドル、ディドル』の謎々について(続)

1年くらい前に、私はマザーグースの『ヘイ、ディドル、ディドル』の唄が謎々詩で答はmouseだと推定する記事を書きました。

→前回の記事はこちら

詩文に折り込まれた手法の異なる3つのヒントがすべてmouseを示しているので謎々の答はほぼ間違いないと思うのですが、最近新たに思い付いたことがあったので追記します。

まず標準的な形。

Hey diddle diddle,
The cat and fiddle,
The cow jumped over the moon;
The little dog laughed
To see such sport,
And the dish ran away with the spoon.

さあ謎々だ、謎々だ
ネコとフィドルの謎々だ
ズンと月越え跳ぶ雌牛
ミてた
小犬も笑ってた
陰へ逃げたは皿と匙

この4行目ですが、元々の形は「The dog smiled small」だったのではないでしょうか。

little≒small
laughed≒smiled

smallには副詞としての「小さく」という用法もあるのでsmiled smallでも文法上の問題はありません。

また、[l]と[t]の発音が近いので、smallとsportが「不完全韻」で4行目と5行目が脚韻を踏んでいた可能性も考えられます。

今回想像した形。

Hey diddle diddle,
The cat and fiddle,
The cow jumped over the moon;
The dog smiled small
To see such sport,
And the dish ran away with the spoon.

さあ謎々だ、謎々だ
ネコとフィドルの謎々だ
ズンと月越え跳ぶ雌牛
ミてた犬まで
微笑み浮かべ
陰へ逃げたは皿と匙

おそらく、最初は脚韻(不完全韻)を踏んで頭韻もsで揃えたsmiled smallの形で書かれたものの、時代が下るにつれてlittle dog laughedの異型の方が支配的になっていったということではないでしょうか。

そしてチャップブックへの採録とか、ハリウェルやオーピー夫妻らの研究等で文字に固定されることにより完全に消滅してしまった・・・と。

こんなストーリーはどうでしょう。
もちろん、物証はありませんけどね。

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