マザーグースの忘れられた謎々⑨
今回は番外編。『鏡の国のアリス』第9章で言及されているfiddle-de-deeについてです。
複数の書籍やサイトを見たのですが、日本語で紹介されているのは4行1連のバージョン。
原詩A
Fiddle-de-dee, fiddle-de-dee,
The fly shall marry the humble bee.
They went to the church, and married was she:
The fly has married the humble bee.
(意訳)
バカバカしい、バカバカしい
ハエが慎ましいハチと結婚する
彼らは教会に行った
結婚相手は彼女だった
ハエは慎ましいハチと結婚して現在に至る
純愛の異種婚が成立してめでたしめでたし、というお話なのですが、一部の時制や3行目の脚韻にやや不自然さが残ります。
もう少し見ていくと、英文のサイトには5連のバージョンが何種類か出ていました。
おそらく5連の方が原型で、後に1連の短縮バージョンが出来たのだと思われます。
さらに、fiddleがriddleと韻を踏んでいたり、第5連が問いかけの形式になっていたりすることから、謎々詩であると判断しました。
(謎々としては少し易しいですが)
細かな差異のどれが文献初出かも分からないので、代表的な形を混ぜて示します。
原詩B
Fiddle-de-dee, fiddle-de-dee
The fly has married the bumble bee.
この繰り返し部分を(X)とします。
(X)
Says the fly, says he,
"Will you marry me,
And live with me,
Sweet bumble bee?"
(X)
(X)
Says the bee, says she,
"I'll live under yor wing,
And you'll never know
That I carry a sting."
(X)
(X)
So when Joyce and Beetle
Had joined the pair,
They both went out
To take the air,
(X)
(X)
And the flies did buzz,
And the bells did ringー
Did ever you hear
So merry a thing?
(X)
(X)
And then to think
That of all the flies
The humble bee
Should carry the prize.
(X)
注1:(X)の挿入位置や回数はまちまち。
注2:Joyce and Beetleはthe parsonやParson Beetleなどの異型あり。
(意訳)
「バカバカしい、バカバカしい、
ハエがマルハナバチと結婚した」(X部分)
(X)
ハエの彼が言う
「僕と結婚して
一緒に暮らしてくれませんか
素敵なマルハナバチさん」
(X)
(X)
マルハナバチの彼女が言う
「暮らしましょう、貴方の羽の下で
(私が針を持ってることは
生涯貴方に知らせない)」
(X)
(X)
ジョイスとカブトムシが
式を執り行い
2匹は共に
空へと旅立った
(X)
(X)
ハエはブンブン羽ばたいて
鐘はリンゴン鳴り響くー
こんなおめでたい話
君は聞いたことあるかい?
(X)
(X)
では、ここで考えてみよう
慎ましいハチは富を得るだろう
それじゃあ、全てのハエたちは?
(X)
針を持っていてハエより強いはずのハチは、針を隠して慎ましく振る舞ってみせることで富を得ます。
そんなこととは気付かないハエは、せっせと働いて・・・
謎々の答は「人間の結婚生活」でしょうね。(1連バージョンとの落差が・・・)
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