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Vol.11 炭の復権? - 「罪人」からアートへ

美食の秋、読書の秋、芸術の秋、様々な楽しみが詰まったこの季節にぴったりな2人のアーティストを今回のmiaki galleryに誘いました。前回はチャレンジ精神溢れる若手芸術集団によるバーチャルと人形展を開催しましたが、今回の展示は少し落ち着いた雰囲気で、心静かに作品を楽しむことができる内容となっています。真っ白なmiakiのホワイトキューブが床まで続いており、作品を搬入した直後には、その高いコントラストの視覚空間に改めて感動しました。作品を眺めながら床に座って日本酒を一杯楽しむのも良いかなと思いましたが、間違いなくディレクターのユージさんに叱られるでしょうから、その計画は諦めておきます。

大谷陽一郎 x ヒョーゴ の二人展「echos」


今回の展示は二人展となっており、表面的な意味で言えば、視覚的に黒一色で統一されています。大谷さんの「雨」シリーズとヒョーゴさんの「炭」シリーズは、アジアや日本の歴史をはじめ、古代から続く感情や自然界の素材を通じて、様々な次元でつながっています。これについては私の貧弱な日本語ではとても語り尽くせる自信がありません。それぞれの作品への感想文レベルであればなんとかノートに残したいなと思った次第です。

「雨」と「炭」

まず、ヒョーゴさんについてですが、彼は檜(ひのき)を使用して炭を焼き、それを利用して彫刻作品を制作しています。一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、木炭を燃料として生産する際に好まれる木材としては、硬い木が選ばれることが多く、楢(なら)、樫(かし)、椚(くぬぎ)など、団栗(どんぐり)を実らせる木が使用されています。しかし、檜を炭にするための工房は数が少ないため、ヒョーゴさんは彼のアート制作のために拠点を栃木に移し、自由に作品を創造できる環境を築いています。

炭の彫刻たち

ヒョーゴさんの作品は、半分が自然の力によって、もう半分は彼自身の手によって形作られています。焼き上がりのひび割れや形は予測不可能で、まさに自然の芸術だなと感じました。

大きなひび割れも作品の一部であり、自然の一部である

木炭で作られたヒョーゴさんの彫刻作品は、光の角度によって変わる独特の光沢を放ち、触れると絹のような滑らかさを感じさせます。ヒョーゴさんから話を聞きながら、これに驚くことはないと気づきました。というのも、炭にはダイヤモンドという親戚がいるからです。炭とダイヤモンドはどちらも炭素の結晶でできていますが、その原子の配列が異なるため、まったく異なる物性を持っています。

不思議な光沢を放つ炭の彫刻
不思議な光沢を放つ炭の彫刻

炭はアートのマテリアルとしてほとんど私が見たことなく、もし他にもいたらぜひ教えて欲しいです。そして、ちゃんと自分の口からお客さんに説明できるようにしたいので、いろいろ炭について調べてみました。

「火山や雷などが原因で自然界に存在していた火を、いつから人類が生活の中に取り入れ始めたのかははっきりと分かっていません。しかしながら、約30万年前の北京人の遺跡から焚き火の跡や灰、炭などが見つかっていることから、その頃には人類が暮らしの中に火を取り入れていたということが分かっています。さらに洞窟など屋内で火を利用するには、燃やしても煙を出さない炭を早い段階で使っていたであろうことは想像できます。」

なるほど!そして、日本も炭とのかかわりが世界を見渡っても古くて深い方だと言われています。

「1958年、愛媛県の肱川町(現 大洲市)の洞窟から人骨や石器などに混ざって木炭が発見されました。この木炭も約30万年前のものと言われています。」

実用性の高い炭の代表格、備長炭

だそうです。なかなか尊い存在ですね、炭って。しかし、現代においては、長らく人類にとって必要不可欠であった炭が、「罪人」のような立場に追いやられつつあります。その理由は、炭を燃やすと二酸化炭素を排出してしまい、それが地球温暖化の一因となってしまうからです。世界的には木炭を燃料として使用する時代から脱却しようとしていますが、日本は街が綺麗とか空気が綺麗とか定評のある先進国なのになぜか脱炭素においては汚名の代表格「化石賞」を二年連続受賞したりします。そもそも犯人(被害者でもあり)は木炭ではなく、もう一人の親戚の石炭です。

「化石賞」

木炭が持つ様々な大きさの孔を生かし、ほかにも様々な用途で利用されています。二酸化炭素やメタンを吸着する力はさほど大きくないということですが、大気汚染物質、特に酸性物質を吸着できる可能性は高いです。

ヒョーゴさんが意図的に木炭を新しい素材としてアート作品に取り入れたことで、木炭が「再評価」され、「復権」する兆しが見られるのではないかと思います。木炭をアートの一部として再評価することは、人類が泥臭い過去から脱却し、新しい時代に向けて歩みを進める象徴的な意味合いを持っている大袈裟に考えても良いですし、私はむしろ「汚名返上」ではないかと考えております。

炭の復権!

炭という革新的な素材が、アートの世界に新風を吹き込んでいます!と格好よく言いたいですが、私などの言葉では十分にその魅力を伝えきれる自信がないです。是非ともアート愛好者であるあなたに実物を目にしていただきたいと思います。miaki galleryでお待ちしております。そして、アーティストはこの展示のために特別に、触れることができる作品もギャラリーに用意しています。驚くべきことに、これらの作品を手に取って触れても、手が少しも汚れることはありません。

Miaki Gallery on Instagram: ". . ヒョーゴコーイチさんに作品について、お聞きしています。 . . 【展示会情報】 古代より数千年の時を経てもあまり要素をそぎ落とすことなく現代にまで至って来た漢字の特性に着眼し、古代の人々が感じた自然の風景、音の響き、祈りのイメージを記号として保存してきた漢字をベースに独自の表現で制作する大谷陽一郎。 一方、縄文時代よりも古い石器時代から使われてきた炭。そのような燃料としての炭としてではなく、創作する為の炭として、炭化の新技法を模索しながら炭が持つ美の領域を拡張しているヒョーゴコーイチ。 「漢字」と「炭」というアーティストそれぞれの着眼点で、古代から人が感じてきた美の魅力を芸術の目線から伝える二人展です。 展覧会名: 二人展「Echoes」大谷陽一郎×ヒョーゴコーイチ 会期: 2023年10月7日(土)〜11月4日(土) 開館時間: 13:00〜20:00 休廊日: 日/月/火曜日 休廊 場所: Miaki Gallery 東京都港区西麻布1-14-16 ベルジュール2F ・東京メトロ 千代田線・乃木坂駅 5番出口 徒歩7分 ・東京メトロ 日比谷線・六本木駅 2番出口 徒歩8分 観覧料: 無料 . . @miakigallery フォローよろしくお願いします。 「Miaki Gallery」とは: 2023年5月20日、東京・六本木(西麻布)にオープンした現代アートギャラリー。 "現代アートを楽しむ文化やコレクションする文化を広げていく"ことをミッションに掲げています。 「Miaki」というギャラリー名は、待ち焦がれる気持ちという意味の「一日三秋(いちじつさんしゅう)」から「三秋」を採用し、待ち焦がれるような想いでアート作品を届けるという想いを込めました。実りの秋と言うように、ギャラリーが作家にとって作品を実らせる場所でありたいという願いも込めています。 . . #miakigallery #大谷陽一郎 #ヒョーゴコーイチ #Echoes #漢字 #炭 #art #artwork #contemporaryart #gallery #artcollector #artlover #loveart #roppongi #艺术 #藝術 #当代艺术 #현대미술 #アート #現代アート #コンテンポラリーアート #ギャラリー #画廊 #現代アートギャラリー #ギャラリー巡り #アーティスト #アートコレクター #アートコレクション #六本木 #西麻布" 17 likes, 0 comments - miakigallery on October 25, 2023: ". . www.instagram.com


展示情報:

2023年10月7日(土)- 11月4日(土)
開廊時間:13:00-20:00
休廊:日,月,火

※10月8日(日)臨時営業 13:00-20:00
※10月11日(水)時短営業 13:00-16:00

Miaki Gallery


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