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カレンダーストーリーズ

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『カレンダーストーリーズ』…丘本さちをと毎月のゲストが文章やイラスト、音楽などで月々のストーリーを綴っていく連載企画。
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2015年12月の記事一覧

『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(5)         【短編小説】作:丘本さちを

『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(5)         【短編小説】作:丘本さちを

「ついたよ」

 スネグーラチカは振り返って言いました。近くまで来てみると山小屋は本当に大きいことが分かりました。じっと見ているとまるで自分が小人になってしまったような心持ちさえしました。その理由は階や部屋の数が多いということではなく、ドアや窓、屋根の高さなど、山小屋のパーツというパーツが一様に大きかったからでした。

「ニコライを呼んでくる。そこで待っていて。ダッシャーと遊んでていいから」

 

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『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(4)         【短編小説】作:丘本さちを

『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(4)         【短編小説】作:丘本さちを

 私はスネグーラチカに手を引かれて父の別荘を後にしました。その時私の口から流れ出た説明は、幼い子供にしてもかなり辿々しいものだったと思いますが、スネグーラチカは一度も聞き返したり、疑ったりせず、私の身に起きた突然の状況を受け入れてくれたようでした。

「それは大変だったね」

 そう言った彼女の声は憐れみも同情も示していませんでした。“明日は金曜日だったね”。まるで曜日を確認するような声色でした。

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『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(3)         【短編小説】作:丘本さちを

『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(3)         【短編小説】作:丘本さちを

 山の空気はどんどん冷え込んでいきました。父が忽然と姿を消した後、私は誰も居ない別荘で雪が溶けるのを待っていました。麓の町までは車でもかなりの時間がかかります。この気温と積雪の中、子供の私が歩いて辿り着ける場所ではありません。幸いにして缶詰と燃料はまだあります。せめて状況がもう少し好転するまではここで待とうと決めていました。

 しかしそれは甘い考えでした。日が暮れて電灯を付けようとスイッチを入れ

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『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(2)         【短編小説】作:丘本さちを

『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(2)         【短編小説】作:丘本さちを

 夕暮れの頃にはもう、うっすらと白い雪が積もり始めていました。父は庭に面した奥の部屋にこもり、絵を描いているはずです。私は一人、絨毯の上にノートを広げ、父の真似事をして鉛筆を躍らせていました。側に置いてある石油ストーブの火が赤くゆらゆらと揺れています。雲の向こうの太陽が山並みに沈んだのでしょう。部屋の中は緞帳を降ろしたように暗くなりました。私はお絵かきを止めて立ち上がり、電灯のスイッチに手を伸ばし

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『カレンダーストーリーズ』ウラ12月 「冬のタモリ」            【短編小説】作:やさしいおばけ

『カレンダーストーリーズ』ウラ12月 「冬のタモリ」            【短編小説】作:やさしいおばけ





 暖をとるためにあるのは小さなストーブだけで、身体の正面は暖かいが背中は冷えたままだから毛布を羽織ってストーブと向き合う。ウォッカを買う金なんてなくて、こんなに寒い部屋なのに冷えた発泡酒を飲んでいる。カップヌードルと菓子パンばかりの不摂生な生活のせいで、体調はいつだって最悪だ。
 アパートは線路沿いにあって、電車が通るたびに大きな音がして揺れる。窓を開けていると鉄が激しく擦れるためか、く

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『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(1)         【短編小説】作:丘本さちを

『カレンダーストーリーズ』オモテ12月「ニコライ」(1)         【短編小説】作:丘本さちを

 それは別荘でのことでした。特に裕福だったではありませんが、私の父は山間に別荘を所有していました。後に聞いたところ、そこには元々祖母の一族が遊ばせていた土地があり、好事家の祖父が祖母を言いくるめて居宅を建てたということです。それを父が受け継いでいたのでした。

 私は八つでした。七つまでは神の内と言いますが、まだ物心がついたばかりの子供でした。母に似て肌の色は白く、とても大人しい性格でしたので、よ

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