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コトバでシニカルドライブ

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頭の中でたまーに構成する言葉とコトバ。 その組み合わせは、案外おもしろいとボクは思う。誰に向けるでもなく、自分の中にあるスクラップをつなげてリユース。エッセイや小さな物語を綴りま…
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#記憶

[ちょっとした物語]窓際のターンテーブル

[ちょっとした物語]窓際のターンテーブル

 窓の外から聞こえる車の走る音は、いつもより少ないような気がした。深夜に走る車は、昼間に比べると颯爽と駆け抜けていく。ハエの羽音のように。
 エアコンの効きがえらく悪い。そんな昔のものではないはずなのに、と思いながら壁の方を向く。壁に照らされた街灯の明かりが、車の影とともに横切る。また訪れる暗闇、そしてまた照らされるこの部屋は、鼓動を持って揺れているようだ。
 ついでのように照らされた机の上にある

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[ちょっとした物語] 霜の降りる朝と

[ちょっとした物語] 霜の降りる朝と

 吹き荒ぶ風の音に目が覚める。

 布団の触りと留まったほのかな温かさが体を動かしてくれない。しかし微かに聞こえるお湯の沸く音。まもなく生活の針が動き出す頃だ。
 窓から見える空の色は、澄んでいて、冬の日のそれを一身に表していた。

 ふと目を閉じてみると、季節の環が駆け巡る。春の、夏の、秋の、それぞれの時は都合よく目の前に現れては消えてゆく。
 一瞬の光は、常に重なり合って、また季節は折り重なる

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