「返信が遅い人」は仕事ができないのか?
フリーランスになってから、5ヶ月が経ちました。
人生ではじめて、本格的に「クライアントワーク」というものをやっています。
というのも、会社員のときはマーケティングの部署にいて、特定のクライアントを担当することがなかったんですよね。
はじめてガッツリとしたクライアントワークを5ヶ月やるなかで感じたこととか、試行錯誤していることとかについて書きます。
「気持ち」と「時間」にギャップがある心苦しさ
クライアントワークをはじめて大変、というか心苦しかったのは「優先順位をつけなきゃいけない」ということ。
社会人3年目にもなって「優先順位が大切だ」なんて、なにをいまさら新人研修で習うようなことを言ってるんだという話ですが・・・。
もちろん、たとえばクライアントAさんに向き合うときは、クライアントAさんのことだけを考えているので「気持ち」のうえでは、100%で向き合っています。
ただクライアントが2社以上になった時点で、クライアントAさんにぼくの「時間」を100%注ぐことは、物理的に難しくなっちゃうんですよね。
そしてどのクライアントにどれくらいの時間を使うかは、金額やクライアントとの関係性、その案件領域に対する自分の興味の大きさなど、いろんな要素によって決まります。
その時間配分が、結果的に「優先順位」を生んでしまう。
あとぼくの場合、お仕事の9割以上が「紹介」や「もともとの知り合いの方からのご相談」で始まっています。
世の中にたくさんライターや編集者がいるなかで、わざわざ「ぜひ藤本さんにお願いしたいです」と連絡をいただいてお仕事がはじまるんです。
そんなのめちゃくちゃありがたいし嬉しいから、どのお仕事もフルパワーで取り組みたいに決まっているじゃないですか。
また、紹介やもともとの知り合いじゃないお仕事はお仕事で、ぼくから「ぜひお仕事したいです」と連絡しているわけなので、それもめっちゃ気合が入っています。
クライアントAさんと話すときも、Bさんと話すときも、どっちにも「100%でやりますよ!」っていう顔をしておいて、もちろん「気持ち」は常に100%なのですが、結果的に「時間」はそのクライアントに100%使えていない状態になっている。
その気持ちと時間のギャップが、けっこう心苦しかったですね。
会社員のときは「優先順位」に困らなかった
「優先順位をつける」なんて話、会社員のときはべつにそんな困った記憶はなかったんですよね。
なんでかなと思ったら「優先順位を明言できたから」だったのかもなと思いました。
最初にチラッと書いたとおり、ぼくは会社員のときはマーケティングの部署にいたので、ぼくの評価主である「マーケティング部署の上司」に対して「いまいちばん優先順位の高いタスクはこれで、いったん他のタスクの優先順位は落としています」って、明言することができたんです。
いっぽうでいまはフリーランスでクライアントワークをしているので、ぼくの評価主は「クライアント」。
クライアントに対して「いまあなたの優先順位は◯番目くらいです」なんて、口が裂けても言えないじゃないですか。
当たり前ですが、クライアントにとってぼくが他にどんなクライアントと仕事をしているとか、リソース状況がどうとかなんてまったく関係ありません。
あのカスタマーサクセスは仕事ができなかったのか?
繰り返しになりますが「気持ち」のうえでは、どのクライアントに対しても「1番」で向き合っています。
ただ物理的にどうしても「割ける時間」という意味での優先順位がついてしまうなかで、返信するスピードだったり、期日の調整の仕方だったりが変わってきてしまう。
会社員のときにいたマーケティングの部署は、クライアントワークを「する側」ではなくて「してもらう側」でした。
いろんなツールベンダーさんや外部のパートナーさんにお仕事を「発注する側」だったので、いまと立場が逆だったんですよね。
当時「あの会社のカスタマーサクセス担当の人に依頼した仕事、数時間くらいで終わるはずなのに、なんで5営業日も待たなきゃいけないんだ」みたいなことを思うときもありました。
ただあれはそのカスタマーサクセスの方が「仕事ができない人だった」というよりは、単純に「ぼくらの会社の優先順位が低かった」だけなのかもしれません。
あのインフルエンサーは仕事ができなかったのか?
会社員のときにいわゆる「インフルエンサー」というか、ぼくが一方的にTwitterで知っているような方とお仕事をさせていただく機会が、ありがたいことに何回もありました(ぼくの力ではなくて、会社の看板のおかげです)。
ぼくはめちゃくちゃワクワクしながら「よろしくお願いします!!!」とプロジェクトを始めるのですが、ごくまれにのれんに腕押し感というか「もっと熱い感じを期待していたのに、返信も遅いし意外とサバサバしてるな」ってことがありました。
言葉を選ばずにいうと「期待外れ」なこともあったのですが(えらそうな言い方してすみません)、あれもいま思うとそのインフルエンサーの方が悪いわけではまったくなくて、単純にぼくが力不足すぎて、その方から見たぼくへの優先順位が低かっただけなんだろうなって思います。
雑に言っちゃうと、パフォーマンスって「スキル×優先順位」のかけ算で決まるんだなと気づきました。
どれだけスキルのある方でも、優先順位が低ければ、最終的なパフォーマンスはそんなに高くならないんです。
でもインフルエンサーの方がSNSにアップしているのは、基本的に「いちばん優先順位の高いプロジェクトの実績」。
ぼくたち発注する側は、全員がその「優先順位が1番」の姿を想像して仕事をお願いするから「期待と現実のギャップ」を感じる人も出てくるのだと思います。
相手の返信が遅いのは「仕事ができないから」ではなく「優先順位が低いだけ」のときもあるのだなと気づきました。
ときには「仕事を断る」ことも誠意
「クライアントに優先順位がついてしまう」ことに対して、ぼくのなかでまだ明確なソリューションが生まれたわけではありません。
現在進行系で試行錯誤中です。
ひとまずは、最近ようやく「優先順位はついてしまうものなんだ」という現実を受け入れつつあります。
そのうえで、最近は「ときにはお仕事を断ることも、ひとつの誠意」なのかなと思うようになりました。
フリーランスになったばかりのころは、やっぱりお仕事を依頼していただけることが嬉しくて、相談いただいたものは「はい喜んで!」と基本的にぜんぶ受けていたんです。
ただ自分のリソース状況をまったく考慮していなかったので、気づいたら手が回らない状況になっていたこともありました。
(そのときの反省をつづったのがこちらのnoteです↓)
クライアントワークは難しくて楽しい
先ほども書いたように、仕事のパフォーマンスはざっくり「スキル×優先順位」で決まります。
同時に進める案件が増えるほど、とうぜん「時間的な優先順位が下がるもの」も生まれてきてしまい、結果的にそれだけ「100%のパフォーマンスから遠ざかったお仕事」が増えることになってしまう。
あと会社員のカスタマーサクセスは、解約されても「その"会社"のサービスと相性が悪かった」と、評判が「会社」に集約されることが大半です。
しかしフリーランスの場合は「その"フリーランス"との相性が悪かった」とそのまま「個人」に評判が集約されます。
「せっかくご相談いただいたからには、リソースがもうないけど一緒にお仕事やりたい!」と無理をしてしまうと、相手にとってはパフォーマンスを出せないし、ぼくにとっては評判が下がってしまうという意味で、だれもハッピーになりません。
だったら「いまちょっとリソース的に受けられそうになくて…」と正直に伝えて、たとえば別の信頼できるライターさんや編集者さんを紹介するとか、また時期を改めてご一緒できるタイミングを探すとかのほうが「無理をしてでも受ける」よりも誠意になることもあるのかなと思うようになりました。
「クライアントワーク」は、なかなか奥が深いです。
いまも日々試行錯誤中ですが、直接お客さまと接しているからこそ聞ける「ありがとうございます!」とか「藤本さんに頼んでよかった」とかって言葉は、マーケティングの部署にいたときにはなかなか得られなかった経験なので、めちゃくちゃ楽しいです。
これからもひとりでも多くのお客さまに喜んでいただけるよう、精進していきます。
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