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フリーランスは、なぜ「成長できない」と言われるのか?

半年前にフリーランスになりました。

独立するにあたっての不安は「フリーランスになると成長できないって聞くけど、それが本当だったらイヤだな」ということ。

ぼくが新卒で入ったベンチャーを1年半で辞めて個人事業主になった決め手は、それがいちばん「後悔がなくて面白そう」だったからで、いちばん「成長できそう」だったからではありません。

しかし成長しないと面白くないのも事実ですし、成長できるならどんどん成長したいです。

ということで、せっかくフリーランスになったのなら「フリーランス成長しない説」について、体験しながら考えてみようと思いました。

まだ明確な結論が出たわけではないのですが、ひとまず「なぜそう言われるのか」「どう対策すればいいのか」に関する、現段階の仮説を書いてみようと思います。

※本noteで想定しているフリーランスの主な職種は、ライター、編集者、エンジニア、デザイナー、web広告運用者などです。それ以外の職種の方だと、事情が違うところもあるかもしれません・・・!

フリーランスも成長できる

最初にぼくの意見を言ってしまうと「フリーランスは成長できない」はウソだと思います。

フリーランスも成長できます。

ではそもそも、なぜフリーランスになると成長ができないと言われるのでしょうか?

あくまでもぼくがこれまで見聞きしたもの、そしてぼく自身が体験したことを集約したものですが「フリーランスになると成長できない理由」として挙げられるのは、以下の2つです。

  1. できる仕事ばかりになる

  2. フィードバックを受けにくくなる

1つ目の「できる仕事ばかりになる」と言われる理由は、クライアントは基本的に「フリーランスが"いま"できる仕事」に対してお金を払うからです。

これが会社員だと、たとえばちょっと実力が足りないかなと思っても「この社員の成長になればいいな」と仕事を任せてもらえることがあります。実力が追いつかずに成果を出せていない間も、会社員なら給料を受け取ることができます。

フリーランスはその立場の関係上、この「投資機会」を受けにくいのです。

フィードバックを受けにくくなる理由

2つ目の「フィードバックを受けにくくなる」については、会社員だと、同僚や先輩から「こういうふうにしたらいいよ」といったフィードバックを受けやすいです。

しかしフリーランスとして一人で活動することが多くなると、普段から頻繁に仕事をする人が減ります。また一緒にプロジェクトを進めるクライアントも、別にそのフリーランスを育てる義務はないので、積極的にフィードバックする気持ちが動機が小さいのです。

自分一人の頭だけで考えるより、複数の人のアイデアや観点を参考にしたほうが成長しやすいですが、フリーランスはそういった機会が減ります。

この2点の「成長しにくい理由」について、フリーランスになると構造的に起こりやすくなることは「本当」だと思います。

実際、ぼくもフリーランスになって最初の頃は「できる仕事をやっている感」が会社員の頃よりめちゃ増えましたし、逆にフィードバックを受ける機会はめっちゃ減りました。

ただ、これらは別にフリーランスが成長できないと言われる「本当の原因」ではないと思います。

なぜなら対策ができるからです。

「できる仕事ばかり」を対策するには?

1つ目の「できる仕事ばかりになる」問題を対策するために大切なのは、大きく2つあります。

まず「クライアントからの信頼度を高めること」

まずは「できる仕事」に全身全霊で向き合って、期待以上の価値をお返しする。

そうすれば「次はこんな仕事を任せてみようかな」や「あの人にこの仕事をお願いしてみたら、どんなアウトプットが出てくるのか見てみたいな」と感じてもらえるようになるのは、会社員でもフリーランスでも同じなんじゃないかと思います。

相対的に会社員のほうがその機会を受けやすいのはその通りだと思いますが、別にフリーランスでも無理じゃない。

たとえばあるフリーライターの山田さんが、株式会社ABCの社員インタビュー記事の仕事を担当していて「いい記事を書いてくれてありがとうね」と信頼を積み重ねていたとします。

そうすると、ある日「今度うちの会社のミッション作りも手伝っていただけませんか?山田さんはたくさんの社員インタビューをしていただいてうちの会社のカルチャーを知っていただけてるし、言語化能力もすごく高いなと感じました。新規のコピライターさんにお願いするよりも、山田さんに担当していただいたほうがいいミッションができると思ったんです」みたいなことがあるかもしれません。

これはインタビュー記事の編集という「できる仕事」を通して信頼を積み重ねるなかで、会社のミッションを言語化するという「新しいチャレンジ」をさせてもらえる例です。

依頼されなくても、自分でやっちゃおう

そしてもうひとつ、できる仕事以外のお仕事もするようになるために必要な2つ目のポイントは「自分でやっちゃう」ということ。

たとえ売上にならなくても、むしろ自費で赤字になっても、まずは「自分でやっちゃう」のです。

たとえば、ぼくはいま編集者として活動していて「取材させていただくこと」や「文章を編集すること」に関しては、クライアントからお金をいただけるスキルがあります。

そのため便宜上「できる仕事」に分類しておきます。(もちろん、まだまだ磨かなきゃいけないところだらけですが!)

そこでぼくが「エッセイも書きたいな」と思ったとします。これは現時点では「できない仕事」です。

だから、クライアントからお金をいただくことはできません。

ではどうするかというと、このnoteの自分のアカウントでエッセイを書くんです。

そうすればエッセイを書く訓練になるし、もし反響があれば、どこかの雑誌から「エッセイを書きませんか?」とオファーをいただけるかもしれません。

そうやってお金をいただけるようになるまでは、まったく売上に繋がらないし、もっと言ってしまえばそのエッセイを書いている時間に「できる仕事」をやっていれば目先の売上は高くなったわけなので、売上の機会を逃しているとも言えます。

でもそうやって自分の時間やお金の一定量を「自分でやっちゃう」ことに使うのは、フリーランスの中長期的な生存戦略としては大切だと思うのです。

「フィードバックを受けにくい」を対策するには?

次にフリーランスが成長できないと言われる原因の2つ目である「フィードバックを受けにくくなる」に関して、こちらも対策は2つあると思っています。

対策の1つ目は「単発ではなく、継続的な仕事を獲得すること」

会社員がフィードバックを受けやすいのは「目先のことだけを考えれば、フィードバックをするのは労力がいるし大変だけど、そのフィードバックのおかげで成長してくれたら、中長期には自分たちのチームや会社にとってプラス」と考えてもらいやすいからです。

それであれば、業務委託であっても「この人には丁寧なフィードバックをすることが、いずれ自分たちにとってメリットになる」とクライアントから思っていただくことが重要。

思っていただくというか、継続的に仕事をご一緒させていただくなら、実際にそっちのほうがクライアントにとってもプラスだと思います。

ということで、一回限りのお仕事ではなくて継続的なお仕事をすることで、クライアント側のフィードバックの動機を大きくすることが大切かなと思っています。

言われなくても、自分で気づく

フィードバックを受けにくくなる問題の2つ目の対策は、ちょっとだけ精神論みたいな感じになってしまうのですが「自分で気づく」です。

別に人から言ってもらえなくても、自分から「気づこう」という意識をするだけで、いろんなことを吸収できるはず。

たとえば別に原稿のフィードバックをもらえなくても、自分なりに「原稿のタイトルをこれにすれば、前の原稿よりも興味を持ってくれる人が増えて、ページビューが増えるのではないか」という仮説を立ててその反響やデータを見ることで、新しい気づきを得ることが可能です。

そういった「結果」が何よりのフィードバックになることは多いと思います。

たとえばYouTuberだって、いちいち視聴者から「このサムネなら興味をそそる」「このサムネはここがイマイチ」なんてフィードバックはもらえません。しかし自分なりに「今日はサムネに人の顔を出してみよう」「文字のサイズを大きくしてみよう」といった具合で、細かいデータを経験則的に蓄積しているはずです。

人から直接言ってもらうだけがフィードバックではなく「自分で気づくこと」も大切なのかなと思います。

これらの問題は、工夫次第でどうにかなる可能性がある

……といったように、フリーランスは構造的に会社員よりも「できる仕事になりがち」ですし「フィードバックを受けにくいこと」はたしかです。しかしそれらは工夫次第では、どうにか対策できるのではないかなと思っています。

だからこれらは別に「フリーランスが成長できない」と言われる、本当の原因ではないと思います。

次の見出し以降にて、ぼくなりの「フリーランスが成長できないと言われる本当の原因」について書いていきます。

「成長」を定義する

「フリーランスが成長できないと言われる本当の原因」について話すには、まず成長を「狭義の成長」と「広義の成長」に分ける必要があります。

本noteにおいては「狭義の成長」とは「特定のスキルを磨くこと」と定義します。

そして「広義の成長」とは「売上を伸ばすこと」です。もちろんお金だけが成長のものさしではないのですが、ひとまず分かりやすさを優先してこのように定義します。

巷で言われる「フリーランスは成長できない」は「狭義の成長」を指しているのではないかというのが、ぼくの仮説です。

どういうことかについて説明するためには、広義の成長である「売上を伸ばすため」の工程を、大きく3つに分解する必要があります。

  1. ニーズを見つける

  2. スキルを磨く

  3. 供給能力を上げる

の3ステップです。

1つずつ説明していきます。

売上を伸ばす3ステップ

売上を伸ばすための1つ目のステップは「ニーズを見つける」です。

そもそもニーズがないと、どれだけスキルが高くてもビジネスにはなりません。どれだけ靴を速攻で脱げるスキルがあっても、それは他者からのニーズがない(or 少ない)ので、お金は稼げないのです。

だから売上を伸ばす、というかまず売上を出すためには、それにお金を払ってでも手に入れたいと思う「ニーズを見つけること」が大切です。

売上を伸ばす2つ目のステップは「スキルを磨く」。ちなみにこれが「狭義の成長」に該当します。

たとえば1つ目のステップで「美味しいご飯を食べたい」というニーズを見つけたとします。

そこで料理のスキルを磨いて美味しい料理を作れば、より単価を上げたり、たくさんの人に料理を食べてもらえたりします。そうすると売上が伸びる。

そして最後、売上を伸ばす3つ目のステップは「供給能力を上げる」。

供給能力を上げる具体的な手段は、たとえば「人を増やす」や「機械に任せる」などです。

たとえば「美味しい料理を食べたい」というニーズを見つけて「料理」というスキルを磨いた。そこからさらに売上を伸ばすためには「人を雇って、その美味しい料理をもっと作れる人を増やす」や「ロボットで下処理できるようにして、人が直接やる工程を少なくする。そうやって短時間と少ない人数でたくさんの料理を出せるようにする」とかってことが考えられます。

1人の時間や労力は限られていますが、こうすればよりたくさんの美味しい料理を作れる(=供給能力が上がる)のです。

広義の成長である「売上を伸ばす」ための3つの工程について紹介しました。(本来ビジネスはこんな簡単なプロセスではないと思いますが、分かりやすさを優先して、ひとまず大まかに3つに分けています。)

この前提をふまえたうえで、次の見出しにて「フリーランスは成長できないと言われる本当の理由」について書いてきます。

フリーランスは成長できないと言われる本当の理由

フリーランスが成長できないと言われる原因は「カバーしなければいけないビジネスの工程が増えるから」です。

最初のステップである「ニーズを見つける」は会社員の場合、すでに会社がやってくれていて、それを解決するためのサービスや事業を立ち上げている状態のことが多いと思います。

ライティングやプログラミング、デザインなどに対して、すでにその会社でニーズがあるから、採用されていることが多いでしょう。また新規の案件は営業担当の人が取ってきてくれたり、新しい事業は「新規事業の開発担当」などの人がやってくれたりします。

そして最後のステップである「供給能力を上げる」は、平たく言えば「チーム化」や「マネジメント」ということでもあるのですが、そもそもフリーランスはプレイヤーとしてガンガンやりたい人たち。

だから結果的に、会社員のころにやっていた業務の多くが「特定のスキルを磨くこと」で、成長がそのまま「特定のスキルを磨くこと」とイメージされがちになるのだと思います。

独立すると「スキルを磨くこと」の工程もカバーする

しかし、いざ独立してみたら「ニーズを見つけること」も「供給能力を上げること」も自分でやらないといけません

「ニーズ探し」に関しては、よっぽどお金に余裕がある人以外は、なるべく早くお金を稼げる状態にしないといけません。

だから「ゼロからニーズを探す」のではなく「いま自分が持っているスキルで解決できるニーズを探す」ことになります。それが結局、冒頭の「実力以上の仕事ができていない感」にもつながるのです。

また③の「供給能力を上げる」ことに関しては、フリーランスなので一旦「人を雇うこと」を選択肢から消します。そうすると、持っている時間やかけられる労力は同じのままで、どうやって供給能力を上げるかと考えると「省力化」にたどり着きます

つまり「どうやって少ない時間や労力で、これまでと同じクオリティを出すか」という思考。これは「どうやってスキルを磨いて、高いクオリティを出すか」を追求したい人にとっては、ある種で真逆の発想です。

そして、あくまでも感覚ですがフリーランスのなかには「どうやって労力を少なくして、同じアウトプットを出すか」よりも「労力がかかってもいいから、どうやってよりよいアウトプットを出せるか」に意識が向く人が多いと思います。

もちろん「クオリティの上限を上げる(=②スキルを磨く)」方向性も大切なのですが、①の「ニーズを見つける」や③の「省力化」と比べると、それ自体にめちゃくちゃ時間や労力がかかるうえ、それが売上に直結するかというと、微々たることが多い。

結局、独立してから使っている時間が「ニーズを見つけること」や「省力化」といったことが多くなって「あれ、自分ってフリーランスになってから成長できているんだっけ?(=スキルを磨けているんだっけ?)」となってしまうのではないか。

これがぼくが見つけた「フリーランスは成長できない説」の正体です。

「スキルを磨くこと」以外も立派な成長

でも別に、成長って「スキルを磨くこと」だけじゃないと思うんです。

「ニーズを磨くこと」も「効率化を図ること」も、ビジネスにおいてめちゃくちゃ大切なこと。

ぼくが会社員だったころ、社長と2人でランチに行って「社長になっていちばん成長したと感じることってなんですか?」と質問したことがありました。

社長はしばらく考えて「うーん…何とかする力かな」と答えたんです。

当時は「なんか社長らしいな」くらいにしか思わなかったのですが、いまならその気持ちがちょっとだけわかります。

ビジネスの売上を伸ばしたいときに「スキルだけ磨けば解決すること」って、実はそんなにないんだと思います。

むしろ課題は「そもそもニーズを見誤っていた」とか「社内の組織が崩壊しかけている」とかって原因のほうが多かったりします。

ぼくは職業柄、いろんな経営者さんに取材させていただく機会があるのですが、話題はたいてい「どの市場を攻めるか(=どこにニーズを見出すか)」と「どうやって組織づくりをするか(=どう供給能力を上げるか)」です。

無数にある課題のなかから「どの課題を解決するのが、自分たちのビジネスの売上を効果的に伸ばすために大切か?」を考え抜きそしてやり切ること。

それをぼくの古巣の社長は「なんとかする力」と呼んだのだと思います。

ビジネスの売上を伸ばすために、なんとかすること。

これも立派な「成長」だなと、最近は思うようになりました。

ということで「フリーランス成長できない説」について、まだフリーランス歴半年の駆け出しではありますが、ぼくなりに考えてみました。

ここまでめちゃくちゃ偉そうなことを書きましたが、ぼくも「成長できているかな?」と試行錯誤しながら毎日を過ごしています。

このnoteがフリーランスを検討している方や、いまフリーランスとして活動されている方のなんらかの参考になればうれしいです。


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