見出し画像

帰還兵の戦争が終わるとき、を読んだ。

自分は戦争に行ったことがない。これからも行くことはないだろう。日本国憲法第9条により、日本国民は戦争への参加が禁じられているからだ。しかし、何か起こるかわからないご時世である。こちらを読み終えた。

イラク戦争に参加した米軍の退役軍人が、癒されない深い心の傷に苦しむ。不合理に奪われた仲間や民間人の命。彼らを最も苦しめたのはモラルインジャリーだった。

戦争から帰ってきた兵士に見られた精神的な症状をこう呼んだ。自身の行動が、または行動しなかったことが、本人の道徳心や倫理規定に反することに起因する心理的苦痛と定義される。うつやPTSDのような一般的な精神疾患とは異なり、モラルインジャリーは精神疾患ではない。しかし、これを発症した人は、自己または他者に対するネガティブな考え(例えば「自分は恐ろしい人間だ」とか、「自分の上司はヒトの命をなんとも思っていない」など)を持ってしまう。さらに、恥、罪悪感、嫌悪感などを強く感じるようになる。こうした症状は精神的な健康を脅かし、うつやPTSD、自殺企図などを誘発する可能性がある。 *日経メディカルから引用

誰しも「人を傷つけてはいけない」「命を大切にしなければならない」と教わってきたはずなのに、それが国家権力のもとで突然に合法化され強制されるという理不尽な環境、精神が正常なままでいられるわけがない。

著者は帰国して様々な対処法を試すが、どれもうまくいかなかった。酒に溺れ、自殺を考えない日がなかったという。ある日、実姉とのたわいもない会話の中で、アメリカ大陸を歩いて横断するという壮大な計画を思いつく。

退役軍人の現状を訴え支援を募るべく、その計画はプロジェクトとなった。あらゆる苦難を乗り越え、彼らは5ヶ月をかけ目的地の西海岸へと無事にたどりつく。そして著者の行く末は...気になる人は是非読んでいただきたい。

***

困難や悩みに打ち勝つ、跳ね除ける。聞けば勇ましいことかもしれないが、それよりも「受け入れる、認める」ことも重要だということを、改めて教えてくれた素晴らしい内容だった。

後日談だが、読了後にInstagramで本著を投稿したら、ご本人からDMをいただき「いつか日本に行きたいので、その時は色々とお話したい」とお誘いをいただいた。遠く離れたアメリカに、友達ができたようで嬉しく思う。

読書をすると、少しずつ、そして確実に世界は広がってゆく。今週もご安全に。



この記事が参加している募集

読書好きが高じて書くことも好きになりました。Instagramのアカウントは、kentaro7826 です。引き続きよろしくお願い申し上げます。