見出し画像

データサイエンスを学ばなければならないのはエンジニアではなくビジネスマンなわけ


みなさん、「データサイエンティスト」というお仕事をご存知だろうか。もし構造データや非構造データの違いを理解していたり、時系列分析やディープラーニングの知識が全くなく、データから離れた仕事を普段していれば「え、データってMACとかに入っているExcelファイルを科学する?どういうこと?」ぐらいのイメージを持つ方が多いと思われる。私は、情報工学系専攻の方に比べれば圧倒的に機械学習に纏わるアルゴリズムの理論的理解が追いついていないが、計量経済学を学んだ経済学修士卒でSaaS系企業でデータ分析官として業務に携わった身として思うのは、「日本ではデータがそもそも溜まっていない、正確にはゴミデータが道端に無造作に投げられている組織がほとんど」だと思う。また、ゴミデータから魂が籠ったデータに生まれ変えられる唯一無二の人は、データを社会実装できるビジネスマン(データプランナー)だと思う。


画像1


データとは、一体何なのか、議論をする上でこんなにも良く使う言葉なはずなのに意外に多くの人は「データとは何か」を周りに説明することができない。国際標準化機構の「ISO/IEC 2382-1」および日本工業規格の「X0001 情報処理用語-基本用語」など専門的な事典を参考にすると、「データとは、伝達、解釈、処理などに適するように形式化、符号化されたもの」と表すことができる。これだと、意味不明になる方もいると思うので、もう少し砕けた説明をすると、「データとは、アナログをデジタルに変換した情報」である。これは、以下の写真に述べられたようなデータをイメージするととても分かりやすい。

例えば、みなさん普段営業や事務作業など肉体労働から非肉体労働まで色々なお仕事をされていると思うが、それらの経済活動は全てアナログに値する。これだけではただの行動や事象に過ぎないが、IT技術の発展により、私たちはこれらのアナログの行動や事象をデジタル化する事によって、半永久的に情報を整理したり、記録、分析を行えるようになった。これは、情報革命という言葉が生まれたぐらい人類にとってとてつもない大きな変化をもたらした。なぜなら、人類は、今までペンと紙では以下の写真のようなデータを量的に理解することなどほぼ不可能に近かったが、アナログ情報をデジタル情報として書き換えることで、自然社会の事象を多角的に理解するものさしを手に入れたからだ。


画像3


アナログ情報がデジタル情報に変換できる世界が到来するとまず何が起こるのか。これは、ITバブルが来た時代に近いことが起きる。例えば、昭和の時代であれば、営業はペンと紙とポケベルを活用して、顧客情報を手に入れ商材を提案していたが、IT技術の進化によって、ITを武器にした営業という新しい仕事ができた。今では当たり前だが、メールとSlackなどを活用して営業利益を最適化するといったことがそれに当たる。では、データを活用することが当たり前になる社会が到来すると何が始まるのか?これも全く同じで、データと職種の融合による新しい仕事が生まれる。例えば、今時のデータを活用した営業であれば、SalesforceなどのSaaS系営業支援ツールを導入し、営業状態をデータで管理し、最適な営業体制やKPI設定を構築することなどが可能だ。

さて、ここで問題を出したい。上記の仕事は、データサイエンティストがやる仕事なのか?正直、データサイエンティストの仕事の定義次第でいくらでも回答は異なるかも知れないが、SaaS系メガベンチャーや外資系IT企業でデータアナリティクス業務をした私自身が感じるのは、データサイエンティストは分析手法やアルゴリズムについて専門的知識を持っているケースが多いが、正直そんな専門的な分析などはビジネスで殆ど求められていない。(正確には、データサイエンティストが出るに至るまでの正規化されたビッグデータが殆どの企業に存在しない、またはゴミデータが散乱している状態が良いところだ。Googleなどにでも就職すればまだ別かもだが…)

別にデータサイエンティストが全く必要ではないとここでは強調しているわけではない。ここで言いたいのは、データサイエンティストという統計学や機械学習のスペシャリストを採用するよりも、ある程度ビジネス領域の経験がありデータをこねくり回したり、データを活用を前提とした企業のグランドデザインを考えられるビジネスマンを採用したり、オンライン教育ツールなどで育成させた方がデータ活用の道が早いんじゃないかと思う。以下の写真では、今後ニーズがほぼ確実に増えるであろうデータ活用を強みにした新しい職種である。


画像2


私も最初は計量経済学や統計学を大学で学び、大学院ではパネルデータ分析や時系列分析、機械学習などを活用した経済系の実証分析を行った。その後、ITベンチャーなどのインターンを通じて、将来はデータサイエンティストとして人間中心主義の持続可能なデジタル社会の実現に憧れを持った。しかし、私が現場で仕事をしていて思うのは、少なからず日本では、情報工学系のPhDや修士号を持った人材を増やすことももちろん大切だが、それよりも急務だと感じるのは、日本全体の情報&統計リテラシーの平均的な向上である。

なぜなら、日本で良く見るデータサイエンティストの多くは、研究者タイプで分析手法などに関して圧倒的な知識量を持っているが、ビジネスを前進させたり、アナログの業務をデジタル化するのは、そこまで得意ではなかったりする。

現在、早稲田大学など高等教育機関では、研究者以外のビジネスマン向けにデータリテラシー向上を目指したカリキュラムなどが徐々に整備されつつあるが、今後よりデータ活用を理解したあらゆる職種のスペシャリストが新しい仕事を生み出し、デジタル社会への一歩を踏み出してくれることを願う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?