見出し画像

花と言葉って似てるよね。映画「mellow」感想

つい昨日の出来事だけど、終電で家に帰ってたら、西武線が遅延して高田馬場で終電を逃した。お金かかるけどタクシーで帰ろうかなーって思いながらふと思いついたのが、映画を見ようっていう案。
とりあえず新宿まで行けば始発も早いし、映画の時間は電車のなかで調べた。

何見ようか考えたとき、ちらっとTwitterで良さそうだなーと思った、「mellow」が思い浮かんだ。どんな話かも全然分からないけど、田中圭が出てる日常を描いた映画っぽくない映画らしい。まあ見る価値はあるかなって感じでバルト9に向かった。

券売機で空席を確認したら、上映開始時間5分前とかなのに、どこの席も予約されてなかった。貸切だ、ラッキーと思いながら、映画館のど真ん中の席を選択。

席に着くと周りに誰もいない、携帯触ってても何してても誰にも咎められない。
なぜかふと思いついたのが、前田さんのメモの魔力。彼は映画館でも内容をメモするらしい。
どうせなら俺もメモの魔力にあやかって携帯でメモしながら映画見るかみたいなテンションで貸切上映が始まった。

以下そのメモを元にして好き勝手に感想を書きます。(ネタバレを一部含みます。)

田中圭の元に女子高生が花を買いに来るところから物語はスタートする。
女子高生は誰かへのプレゼントの花束を買いに来たようで、花屋さんの田中圭はその子を接客する。
その様子は長回しで撮っていて、ごくありふれた日常会話を横で盗み聞きしてるのように、自分も映画の中の登場人物になってるんじゃないかというほど、世界観に溶け込みやすかった。

その後、たくさんの常識を裏切るような場面が出てくる。
後輩の女子が先輩の女子に告白するシーン、妻が好きな男性に想いを伝えられるように話し合いの場を設ける夫のシーン、小学生が学校に行きたくないからといって花屋さんで1日を過ごしたり、ラーメン屋の店主が若い女性だったり。

別にここでジェンダーの話をするわけではない。だけど、ここに違和感を感じさせる、という映画の撮り方は、まだジェンダーの認識に世間はフラットな見方を持っていないという考えが監督の頭の中にはあると思う。まあ実際そうだと思う。

話を戻すと、この映画の中でのキーワードは
「ありがとう、でもごめんね。」

この映画の中でたくさんの告白が行われる。女子同士でもそうだし、子供時代の淡いものから大人の恋愛まで。

人と感情は切っても切り離せない関係にある。
感情というものは言葉にして伝えなければ、その人の心の中にしか存在せず、世界に出てくることはない。それは無かったも同然で、どんなに情を持っていたとしても伝えたい相手には伝わらない。

映画のヒロインことラーメンウーマンは自分の店を閉めることにした時に「辞めるなら張り紙した方がいい」と助言した田中圭に言う。
「辞めるから来るっていうのは所詮その程度なんですよね。埋め合わせ的な。相手のためというより自己満足ですよね。」

伝える、愛情を表現するという行為は自己満足な行為なのか。感情を自分の中に収めておくことが出来なくて、相手に伝える、感情をぶつけることである意味カタルシスを感じているにすぎないのか。

結局、言葉にした感情って花みたいなもので、花束をもらうと嬉しいけど、枯れちゃったり色あせたりする。言葉も花も保存は効かない、効果が発揮されるのは一瞬だけ。でも伝えるか伝えないか、あげるかあげないかは天と地ほどの差がある。

花も感情も相手に送って嫌な気持ちにさせることはない。「ありがとう、でもごめんね。」で終わり。

今まで個人的に花をプレゼントに、という発想はなかった。もらっても飾らない限り綺麗なまま保存できないし、すぐに枯れるし、もらった側は困るだけじゃないかと思っていた。

4年前頃の母の日に、友達がカーネーションをプレゼントするから一緒に来てって誘われてついでに一本だけカーネーションを買って帰った。
母にプレゼントするとかなり喜んでたようでなんだか照れくさかった。

多分人生で人に花を渡したのはそれだけ。今でも多分好きな人とか大切な人に花を渡すなんて恥ずかしくてできない。

それと同様に、個人的に人に告白するだとか愛を伝えるだとか、まず言葉にして伝えるという行為全般とか、そういうのが苦手で、感情を素直に人にぶつけたり、感情を表に出したりということが少ない。

言葉にできない、というよりは言葉を現実の世界に持ってきて相手にぶつけた時に、相手にどう思われるんだろうとか、これを聞いてすごい嫌な気持ちになったらどうしようとか、そんな慮りの結果、感情をストレートに出すという行為が苦手になってしまった。

言外の感情を読み取ってくれれば楽なのに、って思ったりするけど、言葉にしない感情が相手に届くなんてそんなよくできた世界じゃない。
ちゃんと感情は伝えた方がいい、自分にとっても相手にとっても。いつか言えなかった思いが成仏せずに後悔に変わってしまうかもしれないから。

今年は伝えたいことは伝える。会いたい人には会う。そんな一年にしていけたらいいな、と。
当たり前のようなことだけど、自分の中では革新的なこと。

この映画のエンディングで主人公の恋が実ったかどうかは観客の想像に全て委ねられる。
伝えるということが1番大事、結果は二の次。そんなメッセージを伝えたかったんだろう。
この文章も同じ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?