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本を書いてみた(中)

 6月28日、初の単著となる『海外事業を加速する 中途採用の成功法則』が発売されることになりました。既にAmazonでは予約販売が始まっていますので、もしよければ表紙だけでもご覧ください。

 前回の「本を書いてみた(上)」では、出版の動機や背景についてお伝えしました。

 ただ実際に出版をしようとすると、その作業は大変なものです。共著での出版経験はあったため、ある程度その大変さは分かっていたつもりでしたが、実際に書き終えてみると、その大変さは想像以上でした。

 自分もいつか本を書いてみたいと考えている人のために、なぜ私にそれができたのか、私にとって、本を書くために必要だったのはどのようなことだったか、エピソードを交えてお伝えしていきます。

  1)動機(問い)と中身
  2)文章力
  3)パートナー
  4)自分と向き合う強さ(謙虚さ)

1)動機(問い)と中身

 本書は、一言でいうと「人材採用」に関する書籍です。
 執筆する上での最も根源的な問いは「なぜいつも採用は間に合わないのか」で、これは日々仕事でお伺いする各社が、それぞれ素晴らしいビジョンや計画・展望を有しているにも関わらず、それを実現する上で不可欠な「人材」確保が常に遅れがちであるという、私自身が肌で感じる問題に対する答(解)を見つけたいとの願いが込められています。

 私の仕事に密接な、海外事業を行なう日本企業各社にとっての積年の課題であるグローバル人材不足をいかに克服するか、という問題に特に焦点を当てて書きました。

 この問いの周辺には、実に様々な事象が複雑に絡み合っています。
 まず国内外の経済、社会の動向。その中で日本企業が海外に事業を展開する背景やそのトレンドについて。そしてこれらは日本企業の人事のトレンドにも直接的な影響を及ぼします。労働人口の減少が高齢者雇用の促進や労働市場の流動化促進といった政策に繋がり、またITをはじめとする高度な専門性をもつ人材の給与が世界的に高騰するのを受けて国内でも給与制度の見直しが進んだりするのはそういうことです。

 またそもそも、日本の雇用慣行が諸外国といかに異なるのか、またそれが出来上がった歴史的経路は、というようなことを考えていくと、知的関心は果てしなく拡がっていきます。

 私はもともとこれらのことに関心をもって、新聞やビジネス誌、折々の新刊などで知識をアップデートしてきましたが、いつの頃からかそこでの学びを文章といて書き残す習慣を身に着けました。最初はただ自分の備忘録として、次に社内の研修用資料として、そしてこの習慣が完全に定着したのはSNS、特にLinkedinやnoteと出会ってからです。

 SNSは本来、人との繋がり(ネットワーク)を拡げることを目的に行なうものだと思います。今では幸いなことに私も約6,000人(Linkedin)の方と繋がっていますが、当初は繋がりを拡げるというよりはただ新しい知識や自分の考えを言語化し、整理するためだけに投稿していました。

 5~6年前から始めたこの作業によって私のアカウントには数百本の投稿が貯まっていますが、実は今回の出版ではその中から幾つもの文章を再利用しています。この「書き貯める」作業を行なっていなければ、おそらく今回の書籍の出版にはもっと時間がかかったか、場合によっては自身の考えを整理しきれずに出版に至らなかった可能性もあります。

2)文章力

 これについては自分で評価をするのは難しいですが、ひとつ誇れることがあるとしたら、それはこれまで一貫して書く手間を惜しまなかったことです。
 社内外から求められるレポートやエッセイなどはもちろんのこと、ちょっとした連絡や報告、お礼状など、多くの文章を書いてきました。

 とかく、タイパ、コスパと言われる時代です。書き手、読み手の労働時間も昔に比べていい意味で制限されています。
 会社(上司)によっては極力書く量(時間)を減らすように指導・指示をしています。
 しかしそんな職場にも、どうしても文章を書かざるを得ない場面はあります。そんな時、普段から文章を書く習慣のない人は膨大な時間をかけて、結局は適切な文章を書くことができない、ということになってしまいます。

 また、リモートワークの普及によって社会の常識も変わったように感じます。
 これまでは「メールを打つ暇があったらすぐに一本電話をいれろ」と言われてきましたし、面会のアポイントを取る最適なツールは電話でした。
 辛辣なビジネス・インフルエンサーの中には「仕事でメールを使うヤツはバカ」とまで言う人もいました。しかし今は、「こちらの都合も考えずに突然電話をしてくる人」は失礼な人と見なされることもあります。
 まだ会ったことのない人に、面会の目的と熱意を過不足のない文字量と正しい語彙・文法を用いて伝える。出張中の上司に顧客とのちょっとしたトラブルについて事情と解釈をしっかり区別した上で伝え、指示を仰ぐ。そんなメールを時間をかけずにサラっと送ることができるスキルは、「文章を書くのは時間の無駄」という価値観のもとでは絶対に身に着くことはありません。

 むしろ、無駄に見える場面でも書くことを惜しまない人は、「無駄」と思わせないくらいの短時間で適切な文章を書けるもののです。

 次回は
  3)パートナー
  4)自分と向き合う強さ(謙虚さ)
についてお伝えします。
(続く)


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