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【連載】ある小学校で起きた冤罪 〈第4回〉「性癖」もシロ

【イントロダクション】
 千葉市のM小学校で1年生のクラスを担任していた講師の男性Jさんは、2018~2019年に、担任する1年X組の女子児童3人を個別に倉庫に連れ込み、服を脱がせて身体を触ったとして強制わいせつの罪に問われ、一貫して無実を訴えながら裁判で懲役3年6月の判決が確定した。現在は関東地区の某刑務所で服役している。
 私は、Jさんの裁判記録をもとに検証を重ねた結果、Jさんは無実であり、そもそも女子児童3人がわいせつ被害に遭ったという事件は存在しなかったのだと確信するに至った。このマガジンでは、そのことを検証結果に基づいて報告していく。
 
【バックナンバー】
〈第1回〉30人の児童がいるクラスの教室で目撃者はゼロ
〈第2回〉事件の存在を否定する「現場の状況」
〈第3回〉「物証に関する捜査結果」も事件の存在を否定

小さな女の子への性的欲求を示す事実は皆無

   このマガジンでは、過去3回、
 
・被害者とされる女子児童3人が供述する被害内容に現実味が無いこと(第1回)
 
・M小学校の1年X組には30人の児童がいながら、教室でJさんが行ったとされる犯行を誰一人目撃していないこと(第1回)
 
・現場の状況も事件の存在を否定していること(第2回)
 
・物証に関する警察の捜査結果も事件が存在しなかったことを示していること(第3回)

 
 などを根拠として示し、Jさんが無実であり、そもそもこの事件は最初から存在しなかったことを説明してきた。
 
 そして実を言うと、この事件の犯人とされている張本人、Jさん自身にもこのような事件を起こさないことを示す事情が存在する。それは、Jさんには、小さな女の子に性的欲求を抱く人物だと示す事実が皆無であることだ。
 
 今回は警察の捜査資料に基づき、そのことを説明したい。

性癖に関する警察の捜査でわかったこと

 小さな女の子相手に性的犯罪を行った嫌疑をかけられた被疑者については、警察は必ずそういう犯行を行うような性癖の有無を調べる。被疑者がクロであれば、その周辺からそういう性癖があると示す証拠が見つかる可能性が高いからだ。
 
 そういった捜査で被疑者から「同種の余罪」が見つかることも多い。とくに現在は被疑者のパソコンや携帯電話、スマホからそのような証拠が見つかることが増えている。インターネット上にそういう画像や動画が溢れているし、そういう事件を起こす被疑者は通常、検索サイトでそういう画像や動画を見つけるための検索を行うからだ。
 
 したがって、この事件でも当然、警察は捜査の過程でJさんの周辺から、そういう性癖があると示す証拠を徹底的に探している。その根拠となる事実を示す。
 
 以下は、警察が、
 
(1)2019年3月23日にM小学校の男子職員更衣室及び同更衣室にあったJさんのロッカー
 
(2)同4月23日にJさんの自宅

 
 でそれぞれ捜索差押を行い、作成した調書に編綴されていた別紙だ。いずれも捜索の際に「差し押さえるべき物」と想定していた様々な物が列挙されている。

2019年3月23日に行われた捜索差押の調書に編綴された別紙 ※赤線は引用者による
2019年4月23日に行われた捜索差押の調書に編綴された別紙 ※赤線は引用者による

 見ておわかりの通り、警察はJさんの「性癖」や「年少者に対する性的嗜好」を裏づける証拠を収集するため、Jさんの周辺を徹底的に調べたわけだ。そしてこの捜索の際、警察は実際、Jさんの周辺から大量の書類や衣類のほか、デスクトップパソコン、携帯電話(iPhone)、USBメモリーなどを押収している。しかし結局、Jさんが小さな女の子に性的欲求を抱く人物だと示す証拠は何一つ見つからなかったのだ。
 
 パソコンや携帯電話、スマホなどのデジタル機器のデータ解析については、様々な犯罪捜査に使えるため、警察は現在、技術レベルの向上にかなり力を入れている。仮にJさんが小さな女の子に性的欲求を抱く人物で、インターネット上からそういう画像や動画をダウンロードしたり、そういう画像や動画を探すために検索サイトで検索したりしていれば、それを裏づける証拠が押収されたパソコンや携帯電話(iPhone)から一切出てこないというのは、通常ありえないことだ。
 
 そして、小さな女の子に性的興味を持たない人物が、Jさんが行ったとされるような犯行を敢行することも通常ありえない。換言すると、Jさんには、担任していた1年X組の女子児童たちにわいせつ行為をするような動機すら無かったということだ。
 
 これほど明白なシロと示す事情を見過ごし、20代の小学校講師に「担任していた1年生のクラスの女子児童3人にわいせつ行為をはたらいた性犯罪者」という酷い汚名を着せ、社会から抹殺した捜査関係者や裁判関係者の罪は極めて重いと言わざるを得ない。

(つづく)
        ※次回(最終回)は、2月2日(金曜日)公開予定です。

〈2月2日公開〉
ある小学校で起きた冤罪 〈最終回〉捜査で作られた「性被害の記憶」

【ご留意ください】
 3人の女子児童は存在しないわいせつ被害を訴えてはいるとはいえ、決してJさんを貶めるために嘘をついているわけではありません。女子児童の保護者の方々も同様です。そもそも、捜査や裁判で子供の証言や記憶は取り扱いが難しいことはよく知られていることです。この冤罪の責任を問われるべきなのは、捜査関係者や裁判関係者です。
 女子児童や保護者の方々は、このような冤罪事件に巻き込まれたという意味では、やはり被害者です。このマガジンを読んでくださる方々は、そのことをご理解のうえ、女子児童や保護者の方々への批判はくれぐれもご遠慮ください。

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