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くずのびんづめ

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旅行記。
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2023年4月の記事一覧

第27話『散髪』

第27話『散髪』

髪を切った。理由は主に3つ。

1つ。
特にやることもなく、朝晩はガンガーを眺め、暑すぎる昼はカフェで過ごす日々が続き、何かイベントが欲しくなる。
海外で、しかもインドで髪を切るなんて話のネタには充分だろう。

2つ。
僕が滞在しているホステルはいわゆるヒッピー宿で、共有テラスでは昼夜問わず宿泊客がガンジャを吸っている。というのも、バナラシは大麻の神でもあるシヴァ信仰が強い。伝統的な大麻入りラッシ

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第26話『振り返れば奴がいる』

第26話『振り返れば奴がいる』

今夜は日本食を食べに行こう。胃袋山根君。油ものもスパイスも苦手な僕にインド料理のハードルは高く、とにかく薄い味の優しいものを求めていた。

調べると、MEGU CAFÉという和食屋が有名なようだ。宿から徒歩40分程下流のところにあるようなので、ディナーをいただいた後で別のガートのプージャを味わおうと算段し、16時過ぎに宿を出た。

いつも通り最寄りのアッシーガートからガンガーに降り、河沿いを歩き始

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第25話『Leave me alone』

第25話『Leave me alone』

ガンガーの朝は早い。日の出とともに朝のプージャ(ヒンドゥーの礼拝儀式)が行われるからだ。昨晩のプージャで隣に座り色々と教えてくれたサーシ君が朝も一緒に行こうと誘ってくれたので、朝5時にアッシーガート(ガートとは河辺に設置された拠点広場で、ガンガーには84存在する。僕の宿にほど近いアッシーは上流の端に位置する)で待ち合わせをした。

ガンガーに朝日が昇る様は筆舌に難く、荘厳と言う他ない。朝のプージャ

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第0話『憂鬱』#日本

第0話『憂鬱』#日本

言葉とは不思議なもので、類似した意味を重ねた熟語である「憂鬱」の方が一文字の「鬱」よりいささかマイルドな印象を抱かせる。

ともかく、出国より4.5日程前から僕は恐ろしく憂鬱だった。昔から好んでいる表現を使えば「得体の知れない不吉な塊」に始終圧さえつけられていたと言ってもいい。

旅程はおろか、宿泊先の確保やパッキングすら手につかない。当初の出国予定がインフルエンザに罹って延期となり、出鼻を挫かれ

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