KEISHIRO NINO

夢も希望もないが、好奇心だけはある。 ネガティブで卑屈な30代が海を渡るとどうなるのか、徒然なるままに。

KEISHIRO NINO

夢も希望もないが、好奇心だけはある。 ネガティブで卑屈な30代が海を渡るとどうなるのか、徒然なるままに。

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

第0話『憂鬱』#日本

言葉とは不思議なもので、類似した意味を重ねた熟語である「憂鬱」の方が一文字の「鬱」よりいささかマイルドな印象を抱かせる。 ともかく、出国より4.5日程前から僕は恐ろしく憂鬱だった。昔から好んでいる表現を使えば「得体の知れない不吉な塊」に始終圧さえつけられていたと言ってもいい。 旅程はおろか、宿泊先の確保やパッキングすら手につかない。当初の出国予定がインフルエンザに罹って延期となり、出鼻を挫かれたせいもあるが、どうもそれだけではこの心持ちは説明がつかない。 あれ程心待にし

    • BoN Voyage 🇧🇬🇬🇷

      居心地が良くて6日間も滞在したブルガリアはソフィアの最終夜、飛び込みで観戦した地元リーグの想像を遥かに超える盛り上がりに興奮覚めやらず、つい夜更かししてしまった。 バスターミナルまで歩いて10分の立地に宿をとっていたという油断もあるが、朝の便に乗るのにパッキングもせず寝てしまい、結局大慌てで宿を後にして、発車時刻7:30ぎりぎりの7:20にターミナルに到着。 結局毎度と同じくターミナル内の無数のバスの中を走り回りながら目的地のテッサロニキ行きを探す。 しかし、探せども探せ

      • チンチャンチョン処女卒業🇮🇷

        サッカー以外で大声を出したのは何年ぶりだろうか。 話やニュースを耳にする度にそんなの受け流せば良いのにと軽んじていたが、いざやられてみると感情的になってしまうものですね。 夕暮れ時。イラン、シラーズのカフェで一息ついていた折、向かいの席に5人の家族連れが。その中の10歳前後くらいのガキンチョが僕を見るなりチンチャンチョンと口にした。なにぶん生で聞くのが初めてなもので、最初はもしかしてと思って聞き流す。 しかし、その後もニヤニヤしながら僕の方を振り返り、何度も口にしているの

        • 月曜から夜ふかし〜後編・桐谷さん登場🇲🇾🇰🇿〜

          クアラルンプールのラウンジで食事もシャワーも済ませ、機内用にYouTubeもダウンロードした。カザフスタンはアルマトイ空港までの8時間の備えは完璧だ。 出発ロビーの待合は好きだ。これから向かう国の雰囲気をかすかに感じ取ることができるし、僕のフライトの道連れはこの中の誰なのかと夢想するのも一興。 搭乗が開始されたら早々に機内に乗り込む(LCCでは最後の方になると荷物棚が埋まっていたりして、預け荷物せずに行動している僕には死活問題なのだ)。窓際ではないことは残念だが、3人席で

        • 固定された記事

        第0話『憂鬱』#日本

        マガジン

        • くずのびんづめ
          16本

        記事

          月曜から夜ふかし〜前編・多様性を探して🇯🇵🇲🇾〜

          「世界一周」 そう息巻いて日本を飛び出したはいいものの、ドメスティックな事情とはいえ、ものの三ヶ月も経たずに帰国したのが昨年夏。様々な方々から送別会など開いていただいていたこともあり、居た堪れないという表現がぴったりの帰国であった。 そんな背景もあり、今回は極力静かに旅立つことにした。7月8日。七夕を終えた月曜日である。 幾人かの友人が見送りに足を運んでくれ、深夜便を待つ間酒盛りの流れに。(遅延もあり25時30分フライト) 丁度都知事選の翌日だったこともあり、政治活動

          月曜から夜ふかし〜前編・多様性を探して🇯🇵🇲🇾〜

          映画『PIGGY』はラスト台詞で色物映画から大傑作に化ける。

          『PIGGY』 99分 スペイン 監督 カルロタ・ペレダ 主演 ラウラ・ガラン 【STORY】 スペインの田舎町。精肉屋の娘、女子高生のサラはその体型から周囲から「子豚」と罵られいじめられていた。ある日、近所のプールに一人水浴びに出掛けたサラは、怪しげな男と、いじめっ子の女子3人組と遭遇する。そこでもサラは溺れかけるほどに苛烈ないじめを受け、着替えや荷物も持ち去られてしまう。泣く泣く帰路につくサラであったが、その道中、プールで見た男に車に押し込められ、血まみれで拉致されるい

          映画『PIGGY』はラスト台詞で色物映画から大傑作に化ける。

          僕が映画『怪物』が大嫌いな理由

          カンヌで脚本賞を受賞し、興行的にも大成功を収めた今作。 羅生門的手法で物事を多角的に見せ、我々が認知できるのはあくまでも一面に過ぎず、見えない部分、得体のしれない部分=怪物であり、そういった意味では人間は皆が怪物と言える。 なるほど、タイトルと映画の内容も上手くハマっているし、画の綺麗さ、役者の演技も名監督と名優の化学反応も素晴らしいと思いました。 だがしかし、僕は言葉遊びでなく、今作が大嫌いなので、その理由を忘れてしまう前に記録として言語化しておこうと思います。 個人の

          僕が映画『怪物』が大嫌いな理由

          『くないは飛ぶよ。インドまで。』 ~日本語のお話~

          「景色キレイくない?」「終わったくない?」 最近の若者言葉では「くない」が飛び交っている。勿論「寒くない」「赤くない」のように形容詞の連用形ではないので、明確な誤用である。 この手のいわゆる「若者言葉」が使われ始めた時に、「馬鹿者言葉だ」と不快に感じるか、「実に面白い」と興味を持つか反応の別れるところだ。後者の方がなんだか「本物感」「知的感」があるので(僕の中では荒俣宏を連想する)、本音では前者の感覚に近いはずなのに、努めて後者を装うのが凡夫たる私めの悲しい性なので、少し考

          『くないは飛ぶよ。インドまで。』 ~日本語のお話~

          Eternal Travel ~ロシア人の巣窟にて~

          「ウクライナ軍がロシア軍の侵攻阻止、戦車〇両撃破~」「ウ軍反転攻勢で拠点奪還成功~」このような報道を目にする度に、僕は心のどこかにざらつきを感じていた。この戦争のロシア=加害者、ウクライナ=被害者という世界の共通認識に異を唱えるつもりはないが、ロシア軍の戦車が撃破されたということは、ロシア人が確かに死んでいるのだ。マクロ視点では当然喜ばしいことなのだろうが、少なくとも当事者ではない国の人間が「やりました!」みたいなテンションで報じることには違和感を覚えずにはいられなかった。

          Eternal Travel ~ロシア人の巣窟にて~

          『ペニスJAPAN』~ジョージアの温泉で裸の心震わせて~

          男子校をしっかりとこじらせていた中高校生時代。合コンという一大イベントでは必ずグループ魂の『ペニスJAPAN』を歌っていた。そうして女子をげんなりさせた帰り道、ダサ男たちは「結局女はラッドウィンプスなんすかね‼」なんて散々愚痴って盛り上がるのである。しかし、稀に現れるノリノリでぶち上げてくるJKには気後れして「いや、ちょっとあれは下品だわ、、」なんて言い出すのだから童貞男子は始末に負えない。 さて、今回は三十路を過ぎてもそんな病気の後遺症が消えない僕がジョージアの温泉を訪れ

          『ペニスJAPAN』~ジョージアの温泉で裸の心震わせて~

          『健康優良不良少年』

          インド、ヒンドゥー教の聖地バラナシ。ガンジス川の沐浴で有名なこの地がやけに気に入って、10日間ほど滞在していた時の話。 日の出、日没とともに河原で行われるプージャという礼拝を僕は毎日欠かさず見学していた。 ある朝、見学を終えちょっとした堤防の様なところに腰掛け、何をするでもなくぼうっとガンジスを眺めていると、突然背後からHey!!という声が。驚いて振り返ると5人組の少年たちに取り囲まれていた。年の頃は15.6くらいであろうか。明らかにやんちゃそうな雰囲気を醸し出している。彼

          『健康優良不良少年』

          「優しさのベクトル」

          「なんでこいつらこんな自己中なのだろう。」 海外で何度この負の感情を抱いたことか。例えば飛行機内でひじ掛けは間違いなく占拠されるし、ホステルの室内では夜中であろうとイヤホンも使わずに動画を大音量で見ていたりする。日本人であればまずしないことばかりだ。 その度に「なんて嫌な奴だ」と表に出さずとも敵愾心を抱くのだが、その火がなかなかどうして続かない。というのも、「嫌な奴」のはずの彼らは、僕の気も知らずに屈託の無い笑顔で話しかけてくることがざらにあり、更にはお菓子をくれたりなんかも

          「優しさのベクトル」

          第2話『聖戦』#タイ2

          バンコクでの宿はカオサン通りのホステルを取っていた。カオサン通りはバックパッカーの聖地と呼ばれ、旅の始まりにはうってつけだろう。 ホステルといえば、単身バックパッカーが多く、そこで交流が生まれるのも楽しみの一つである。しかし、結局は身軽を好む人間たち同士なので、深く干渉し過ぎることもなく、一期一会の邂逅を楽しむ。どこか新宿のゴールデン街に似たところがある。 僕の宿泊するホステルは欧米人9割、アジア人1割という白人宿だった。予約サイトを見た段階である程度の想定はしていたのだ

          第2話『聖戦』#タイ2

          28話『旅の恥を搔き集め』

          バラナシで有名な和食屋「MEGU CAFÉ」は残念ながらコロナで閉店したようなので(26話参照)、別の和食屋「BUNNY CAFÉ」へ訪れてみることにした。日本だったら間違いなくガールズバーかその類のこの店名、今回はGoogleの最新口コミが2週間前ということも確認済みなので、閉店ということはないだろう。 GoogleMapもあてにならないとにかく複雑なバラナシの路地を右往左往しながらやっと店を見つける。厳密には和食屋ではなく、日韓料理屋のようだ。店内には韓国人グループ2組

          28話『旅の恥を搔き集め』

          第1話『計画的無計画計画』#タイ1

          バンコクはカオサン通りで「Anti Social Social Club」のTシャツを着ている青年を見かけた。ファイトクラブといえばブラッド・ピットの肉体と、ヘレナ・ボタム=カーターの嬌声。そして、この言葉遊びである。 旅の予定は狂うことこそ醍醐味だと信じてやまない僕からすれば、バンコクのドンムアン空港に着いた瞬間に入った一通の連絡は僥倖といえた。タイで会社を営む友人のO君から、今から事務所に遊びに来ないか、というものだ。もともと連絡は取っていたのだが、繁忙期らしく、会えれ

          第1話『計画的無計画計画』#タイ1

          第27話『散髪』

          髪を切った。理由は主に3つ。 1つ。 特にやることもなく、朝晩はガンガーを眺め、暑すぎる昼はカフェで過ごす日々が続き、何かイベントが欲しくなる。 海外で、しかもインドで髪を切るなんて話のネタには充分だろう。 2つ。 僕が滞在しているホステルはいわゆるヒッピー宿で、共有テラスでは昼夜問わず宿泊客がガンジャを吸っている。というのも、バナラシは大麻の神でもあるシヴァ信仰が強い。伝統的な大麻入りラッシー「バングラッシー」が合法の名物だ。しかし、ガンジャ(乾燥大麻)は違法である。余

          第27話『散髪』