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大きな企業グループが必ずしも良いわけではないと思っておく大切さ

世の中には”~ホールディング”という名前がつく会社がある。

ぼくの会社もホールディング制をとっている。日本語でいえば持ち株会社制度。簡単に説明すると一つの会社の下にいくつも個別の会社がぶら下がっているような形態のことをいう。

名前はなんだかかっこいい雰囲気がある(と感じる人は多いかもしれない)。この体制にはいろいろとメリットとデメリットがあるというのは良く言われることだが、今日はそんな体制の話と会社の規模ってどれだけ大切なのかという話について。

■会社の規模というのはある程度は重要だが・・・

大企業というのは今でも就職先として人気があり、安定志向が強まっているというニュースを見かける。ベンチャーやノマドワーカーやフリーランスなど様々な働き方が増える一方で、小さい会社というのは安定性にかけるので大きな会社に入って一生働こうと思っている人も多い。

ぼくの感覚では大企業が安定してるというのはそうも言い切れないと思っているしなかなか働くうえでキャリアが描きづらいというデメリットもあると思っている。

大企業でもつぶれるときはつぶれるし、銀行のように国債ではもうからず企業の資金需要も細っている中、新たな金融ビジネスが次から出てきて昔ながらのスタイルから規模的に買われず次の成長エンジンを見失っている業態もある。

「人はもういりません」という感じでまずは自分がいなくなればいいものの、若手や中堅を何千人単位でリストラする会社もある。

自動車もそういう道をたどっている。自動運転など(いわゆるCASE関連)の技術的な進化こそあれもし自動車が家電化したら全く業界のプレイヤーが変わってくる可能性もあるし、今まで自動車メーカーに仕事をもらっていた部品会社の方がもっとよく見極めないとEV化などで無くなる会社も出てくる。

そういう意味では「業界での適切な規模やポジション」というものはあるので、ただ単に売上や時価総額が大きいということではなく、その業界で強身を発揮してある程度シェアをもっているかというのは大事だといえるかもしれない。

文房具の会社と鉄鋼会社では扱っているものが違うし、市場規模時代もケタが全然違うので単純にこの2社を規模で測ってはいけない。それぞれの市場でどういう位置づけの会社なのかということをちゃんと考えたうえで、その業界での規模だったりポジションを考えて”大企業”を思考するのであればまだ良いのかなと思う。

■ホールディングス制の会社の良し悪し

大企業というのは単一の事業で事業をやっている会社とそうではなくて、いろいろな事業をやっている会社というのがある。

海外投資機関はどちらかというと単一事業で勝つことを好む傾向があり、日本企業はいろいろな事業を多角的にやっていくことを好むところがある。いろいろな事業がある中で業績が良い事業も悪い事業もある中で総合的に価値を上げていくようなスタイルは、業界によって好不況は変わるのでリスクヘッジをしながら事業ができるという魅力がある。

ホールディング制をとるメリットというのはまた別の記事にでも書こうと思っているが平たく言えば個別の事業運営に集中できるということが大きなメリットといえる。

会社を別にすることでそれぞれの会社が意思決定をすることで迅速な意思決定ができるようになるし機動力もあがるというのが教科書的なメリットといえる。親会社となるホールディング会社のメリットとしては個別の会社を売ったり、新たな会社を買ったりすることがしやすいということだが、これを実行できている会社は少ない。

あとは別にホールディング制をとらなくても各事業に権限を渡せば済む場合も多く、あえてホールディング制度にする必要性はない場合も多い。カンパニー制で各事業をカンパニーと称してそれぞれで事業をやっていくスタイルも多くの大企業がとっている。ホールディング制度で個別の会社をつくってしまうと、それぞれに財務、総務、人事などの余計なスタッフ部門を置く必要が出てくるし、連結決算などかなりめんどくさい作業も増えるし、資金が分散してしまうというデメリットもあるのでカンパニー制をとる会社も多い。

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一方でホールディング制をとったとしても例えば権限を各社に与えない場合は、ものすごくデメリットが強くでてしまう。

権限はホールディング会社のトップが握っているのに、会社を分けると完全に”会社ごっこ”の状態になる。

個別の会社の社長はただの部長のような立場になってしまうし、それぞれで意思決定ができないのに会社が分かれていると、意思決定をするまでに個別の会社での意思決定をしてさらにホールディング会社の承認をもらうという二重の意思決定が必要になり時間がかかる。

もちろん親会社としてホールディング会社が承認しなければならない重要案件というものは存在するので当然と言えば当然だが、あまりに事業会社の権限を削ぐとなんでもかんでもトップにお伺いを立てる文化になってしまい各社は自立することはできない体制になってしまう。

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もっというと、経営者によってはそれを良しとする経営者も実は結構な人数いるものだ。特に創業者がいるような会社だったり、創業者はいないが古い会社で社長のポストに社長が長期に居座る会社に多い。

そういった会社でなぜホールディング制をとるかというと、他責にできるからという理由があったりする。自分が社長であとは部門長しかいないような体制だと、全部の責任は自分で決めなければならないし、全部の意思決定は自分で行わなければならない。

権力は失いたくないけど、仕事で楽をしたい。そう思った経営者はホールディングス制度を導入して個別の会社の社長を作る。そうするとその人の仕事は各社の社長の仕事にすることができる。

そうなると「もっとこうしろ、あーしろ」「自分はグループの成長のことを考える必要がある」というようなことだけ言っていれば良いので便利な制度にうつる場合がある。こういう体制を作ると最悪で、権限を持たない中間管理職を新たにつくるだけで機動力もなくコストが肥大化した組織が出来上がってしまう。特にするのはその社長だけで、その社長が高齢で引退するころにはこの高コスト体質は定着し、市場での競争力が失われている可能性もある。

■ そして会社は結局は個別事業の集まり

このようにホールディング制には良し悪しがあり、あまりカンパニー制と変わらない場合も多いが、いずれの場合でもいろいろな事業を手掛けている会社は多いが、結局は個別の事業で勝てているかというのが大事であって、そういった意味で会社の規模はあまり重要ではないといえる。

大きなグループをとっている会社でも事業間に全く交流がなかったり、別々に運営されている場合も多い。

ソニーはCMOSセンサーを作る舞台もあれば、プレステを作る事業もあれば、保険などの金融業や映画や音楽を作る会社もある。ソニー的にはシナジーはあるが投資家からしたら分解して選択と集中をすべきだという人もいる。

ベネッセホールディングも「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」といったサービスのほかにいろいろな塾や英会話のベルリッツなどを買収して教育関係でジャンルはそろっているものの、結局は個別の事業で運営されていてただ規模が大きくなったような印象をうける。

三菱ケミカルホールディングも事業が違いすぎる。たくさんあった化学会社を集約した三菱ケミカル、他にも田辺三菱製薬という製薬会社や、産業ガスの最大手大陽日酸などがある。それぞれが大企業で個別に規模を高くしてグローバルに戦う方向性は理解するが、一緒のグループである意味というのはあまり見出しにくかったりする。
 
最近日立化成を買収して話題の昭和電工。ここは事業部がたくさんあって、大中小様々な企業の事業が集まっている。鉄の製造に使われる黒鉛電極、パソコンなどのハードディスクなどなど実に多くの事業があるがそれぞれあまり関係性が低いものも多い。

他にも国内最強のサニタリー会社の花王。バス用品、オーラルケア、化粧品など様々な事業はあるが、結局はブランドとしては統一されてはいるものの、それぞれのジャンルで戦うしかない。資生堂もブランドが大量にあって、ブランドを買収したり売却したりしているだけで、規模が多くなったり儲かっている会社を買ったりしている投資会社のような一面も感じる。

RIZAPも手広くいろいろな事業に手を出したあとに赤字に陥り一世を風靡した社長も引退し、買収しまくった事業もそれぞれまた売却をするなどまったく共通点がないような事業を一つの会社のメソッドを導入しようとした企業もある。

このように、必ずしも会社は規模ではないし、結局は個別の事業をいかに強くするかということ、ほとんど関係がないような事業をいくつもやっていると資源が分散するということもあるといえる。

■まとめ

どの会社も次の成長の柱が見えにくくなっている中、いろいろな事業を手掛けてはいるが企業グループというのは何を目指すべきかがさらに大事な時代に突入している。

自社では新たな新事業は作れないので他社を買収することは得意にはなってきているが、売却することは人を仕分けることになったり単に売上規模が減るという理由で日本企業は不得意でやろうとしない。そうなるとますますいろいろな事業が混ざった企業グループができやすい環境がある。

企業グループはどこかの時点で、グループ全体の売上や利益の額の規模を気にしてばっかりな会社になりやすく、そうなると株価や企業価値の向上と称して事業の中身に興味がなくなり、上層部は現場から離れて椅子取りゲームや社内政治にあけくれるようになる面がある。

そういった会社が好きで入社したければ別だが、規模だけで安定しているとか、昔からある会社だから大丈夫といったことは考えない方が良い。その会社がどういうポジションだったり業界における規模はどうかというようなことをまず考えた方が良い。
 
結局はどれだけ経営者が事業の中身を理解して自社のコア事業を認識して戦略を練っているか。これに尽きるのだ。


keiky.
 

 
 

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