#27 空手道全日本チャンピオンまで上り詰めて、燃え尽きた話。

自分が学生時代の経験で、唯一誇れる事「空手道全日本チャンピオン」

小学3年生から始め、小学生の卒業文集で「全日本チャンピオンになる」と書き、高校1年生で達成しました。
こんな短期間で将来の夢を達成した人、中々いないと思います。笑

しかし、決して順風満帆な空手道人生ではありませんでした。
ただ、間違いなく今の自分を形成した、大事な経験でした。

■小学生「武道って楽しく無いな〜」

サッカー・野球など、みんなキラキラしたスポーツをやっている中、
武道一家に生まれた私。(父は剣道)

父に問答無用で道場に連れていかれ、気づいたら入会手続きが終了。
武道家人生がスタートしました。

元々運動神経は良く、体格もクラスで1〜2番目に大きい。
色々と恵まれた面もあり、同年代では敵無し状態で稽古をしていました。

小さい頃から、人と仲良くするのが苦手で、一匹狼。
個人競技の空手道は、自分にとても合っていました。
※他の同年代の人達は、当時だいぶ絡みづらかっただろうな。と反省しています。笑

ただ、みんなが野球やサッカーなど楽しそうにやっている中、自分は空手の稽古。
正直、楽しくはなかったです。

※空手道は「武道」という位置づけになり、スポーツとは違います。礼節に異常に厳しいですし、蹴って殴っての稽古(キックボクシングに近いです)のため、子供が楽しい!と思える瞬間はおそらく少ないと思います。

とはいえ要領は良かったため、特に苦労はなく、順調に稽古に励みました。

■中学生「人生で一番辛い稽古。そして仮面ライダーの登場」

中学生時代は、部活動で野球もしておりました。
週6で野球、週3で空手という、ハードスケジュールをこなしていました。

中学生時代も、同年代では基本敵なし。
この頃から、練習相手に大人も交えてするようになりました。

180cm 100kg近い人たちと、殴り合い。
正直、本当に辛かったです。
毎日アザ。たまに隣の人が嘔吐。たまに骨折。

「俺は何でこんな辛い事をしているんだろう。」と、自分自身がよくわからなくなりました。笑

そんな稽古の甲斐があり、中学2年次、実力が認められました。
本来であれば関東選抜を勝ち抜かなければならなかったのですが、
欠場者の推薦枠に特別に入れてもらい、全国大会に出場しました。

トーナメントの対戦相手は、「選抜予選で優秀な成績を出した人ほど、有利な組み合わせ」になります。
私は推薦枠だったため、一番立場が弱いです。そのため、優勝候補と初戦から戦うことになりました。

緊張はしながらも、ある程度の自信は有った私。
しかしそこに、とてつもない対戦相手が現れます。

試合前のアップ。
対戦相手の優勝候補を発見。見ると、明らかに体つきが違う。

・・・腹筋がブロック状に割れている。明らかに試合慣れしている。
体が大きい。何だあの胸板は。本当に中学生か??
それを見て、中学生の私は一言

「あいつ、仮面ライダー見たいな腹筋してやがる」

最強の空手家、仮面ライダー爆誕。

そこからはもう、仮面ライダーの事で頭がいっぱい。
試合前から完全に相手のオーラにのまれながら、仮面ライダーとの試合が始まりました。

「始めっ!!」試合が始まりました。

・・・・気づいたら、観客席に横たわってました。

「あれ、何で自分は観客席にいるんだ?試合は?」

顔面を蹴り抜かれ、失神KO負けしていました。
衝撃で、前後の記憶が無くなっていたのです。

後でビデオを見返しました。
大勢の観客の中、とんでもなく無様な負け方でした。
プライドがボロボロになりました。

結局、仮面ライダーは、圧倒的な強さで優勝しました。
閉会式が始まりました。各階級の入賞者が表彰されていきます。
自分はそれを、下から眺めている事しか出来ませんでした。

そこから数日は、中々立ち直れなかったです。
空手をやりたく無くなりました。

ただ、自分には空手しか無かったです。
親からの、厳しい目もありました。

何より、自分のプライドが許しませんでした。

そこから1年間、本気で稽古に励みました。
週3回の稽古に合わせ、パーソナルトレーナーを付けて、筋力トレーニングにも励みました。

必死でした。仮面ライダーの亡霊と、常に戦っていました。
今思い返しても、よくあんなに練習できたなと自分を褒めてあげたいです。笑

■高校生「そして、仮面ライダーになる」

辛い中学生時代を終え、高校生。

体の成長も相まって、メキメキと強くなっていきました。
1年前の無様な負け試合からは、想像も出来ないほどに。

この年は、関東選抜大会から出場しました。
並々ならぬ覚悟で参加しました。

結果、優勝しました。
自分で言うのもアレですが、圧倒的な強さで。

正直、ここで嬉しい気持ちはありませんでした。

自分のプライドは、全国大会のあの場で優勝しない限り、取り返せない。
気持ちは完全に、全国大会に向いていました。

そして、来たる全国大会。
自分は関東選抜で優勝していたため、トーナメントも一番有利な組み合わせでした。

ただ、トーナメントの組み合わせは関係ありませんでした。優勝しか見ていませんでした。

そして何より「あの仮面ライダーに勝って優勝する」ことしか考えていませんでした。

しかし、仮面ライダーは参加していませんでした。
ショックだった反面、どこか安心している自分がいました。ただ、安心している自分に自己嫌悪しました。

仮面ライダーがいない。どうしよう・・・
そこで決心しました。

「だったら、自分が仮面ライダーになれば良い。それだけの練習はしてきた。」

そう覚悟を決め、いざ初戦。
・・・相手を8秒で失神させ、KO勝ちしました。

この瞬間、気分が楽になりました。肩の荷が、スッとおりました。
亡霊から解放されたようでした。

そこからはもう、あれよあれよと勝ち進み、決勝戦。
流石に決勝戦にもなると、かなり相手も強く、苦戦したのを覚えています。

しかし、勝ちました。優勝しました。
死に物狂いの練習が、身を結んだ瞬間でした。

1年前、下から眺めている事しかできなかった閉会式。
今立っているのは、1番高い表彰台。

ここに立った自分は、もっと喜びに溢れているはずでした。
しかし、自分から湧き上がった感情は、意外なものでした。

「ああ、終わった」

燃え尽き症候群って良く言いますよね。あれをまさに体感しました。
「嬉しい」と言うよりも、「解放された」という感情の方が強かったのを覚えています。

何故、自分がこのような感情に襲われたのか、今でも分かりません。
ただ、そこで自分の空手に対する気持ちの糸が切れてしまったのも確かです。


「あの仮面ライダーも、同じような気持ちだったのかな」

ニコラス


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