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真夏の夜の夢が明けても君はハイライトなヒロイン / Album 『ザ・ハイライト』 Sexy Zone

※一度4500字書いて、一瞬操作ミスったらnoteの勝手な自動保存で全部消えました。押してないんだって。戻せないんだって。こういう時に使うんだな。「……許せない!!!」©︎菊池風磨

Sexy Zoneは楽曲のクオリティが高いから、毎回アルバムを楽しみにしている。音楽性に注目した感想やレビュー記事を多く見かけるので、ある程度は彼らの意図する通りに届いているのだろうと嬉しく思っている。一応ジャニヲタの端くれとして、歌詞について重点的に書いてみた。曲がいいなと思ったら歌詞も是非じっくり読んでみてほしい。

"新章の幕開け"

発売前のブログで、菊池風磨は本作について「新章の幕開けです」と綴っていた。一人の不在が続く中、そういうことなんだろうかと察したつもりでいたが、蓋を開ければ予想以上の強いメッセージ性に驚かされた。

オリジナルアルバムとしての前作『POP×STEP!?』で体現した「色とりどりのPOPとSexy」の概念をさらに昇華し、シティポップを中心に、80's~90's歌謡曲(ポップス)を解釈して魅せる。そこには全編を通して、君という「ヒロイン」への強い気持ちがある。繰り返されるフレーズは、そばにいたい/会いたい/愛してる/忘れないよ。

収録楽曲は「全形態共通」。楽曲たちへの強いこだわり。公式では全曲試聴可能。
ティザー動画もセンスが良い。映像の中でも時間が経過していく。【LET'S MUSIC】でヘッドライトが光るから、やはりここから始まっていたんだなぁと思う。
歌詞にも様々なライトが出てくる中、その最高峰がHIGHLIGHTなのだろうか。なんなら『POP×STEP!?』のラスト曲は【HIKARI】だった…。
"僕にとっての光 それは君だ"


コンセプチュアルな「アーティスト」のアルバム

本作のうち最初に世に出た楽曲は【LET'S MUSIC】。『POP×STEP!?』の流れを汲み「いろんな音楽を楽しもうぜ」というメッセージを受け取っていたけど、『ザ・ハイライト』の中に置かれるとそれがさらに活きてくる。

さらにシングル曲として【夏のハイドレンジア】が先行している。この曲には「君が僕のヒロインなんだ」というメッセージが大いに込められており、それはドラマの主題歌として寄せたものと思っていた。ところが今回アルバムの中で並べられてみると、この曲以降2曲(「女神」も入れたら3曲)も同じフレーズが見られる。"どんな時も輝くヒロインなんだ"とは、Forever / Stay gold にも繋がる。単なる「君」ではなく「ヒロイン」とすることでアルバム全体が物語性を帯び、「色褪せず輝き続けるハイライト」にも説得力が生まれる。思い出は歳をとらず、色褪せず、美しくなっていく。そこには彼らのドラマがあり、ストーリーは続いていくのだ。

このアルバムの核となる2つのメッセージは、シングルで「予告」として出されていた。そんな「アルバムの組み立て方」を自分で全部曲を作っているバンドやアーティストではなく、様々な作詞作曲家や他のアーティストから楽曲提供を受けているアイドルがやっている意義(今回は珍しく誰一人作詞に参加していない)。歌わされているのではなく、意志を持って選んで歌っているのだと解る。

そして今作では、曲に合わせて歌い分ける表現力や英語の発音もレベルアップしていることに驚いた。
Sexy Zoneの、世界を見据えるアーティスト然とした姿勢を感じるのだ。

Sexy Zoneが今、シティポップを扱う意味

シティポップは1970〜80年代に流行った、都会的で洗練されたポップス。近年はサブスクやSNSにより、シングル曲以外の意外な曲も発掘され、ヒットしている。またサカナクションやYOASOBIがオマージュする等「ネオシティポップ」も生まれている。

リード曲MVやジャケ写などアートワークも近年流行っているシティポップカルチャー/ネオ〇〇/エモさの文脈内に生きているものだと感じるし、タイトルロゴも「ザ・ベストテン」を彷彿とさせる懐かしさと新しさが同居するようなフォントだ。(最近では「平成レトロ」なる概念も登場し、平成初期生まれには辛いものもあるが…)

インタビューでも「親世代には懐かしく、子供達には新しい。幅広く聴かれてほしい」といったことを語っていた彼らは今、「これまで知らなかった人たちからも(国内外問わず)改めて評価される」というフェーズを目指しているのではないだろうか。

そして、そこに向かっていくために【「君」の居た夏を無かったことになんてせず、ハイライトとして愛し続けていく】という姿勢を見せた。失くしたものは、失くしたものとして持っていられるのだから、忘れたりしなくて良いのだ。

全曲感想<第一章>「君は僕のヒロインなんだ」

01. Forever Gold
リード曲になっている、いわばアルバムの「自己紹介」曲。さわやかさと懐かしさと切なさの同居した曲に、国民的アイドルと認知され始める前の嵐兄さんを想起する。

"最低でも最高だった 蒼き日々たち"
"色褪せない日々は Golden Age of wanders
 輝いて 今がある"
"振り返るハイライト 君との Moments
 Shining so bright Shining so bright Forever Gold"
"心満たす Memories
 Beautiful Times Beautiful Lights"

ここでは"何があるわけもなく"見上げている。
"It's hard for me to say Good Bye"

普通の若者と、ブラウン管の中のスター。今っぽさと昔懐かしさ。
チューインガムを吐き捨てる風磨と"蹴飛ばした Neon nights"をネオンじゃなくニオンって歌うケンティーになんかぐっとくる・・・

02. Desideria
desiderium【熱望、切望】の複数形。desireと何が違うのか調べてみたら、やっぱり使用頻度が低い単語みたい。
「以前所有していて現在所有していないものをもう一度所有したいと強く思う気持ち」

ジャニーズでもおなじみの Jazzin'park 提供。
ここでは"夜明けはない"と歌っている。出てくる光はムーンライト。
ファルセットに重ねる菊池風磨の地声の色気…。

03. THE FINEST
"いつもそばにいるのに そばにいないみたい"
"ねぇこのままずっとそばにいて"と繰り返される、熱望。
JQ(Nulbarich)提供の洋楽ライクな1曲。世界観が日本じゃないんだよね、Hoppingできるdowntownとは・・・
ムーディーなベースとジャジーなピアノ、ブルーノート東京で聴きたい。

MVのアニメには既視感がある不思議。絶対に見たことないストーリーのはずなんだけど、なんか知っている気持ちになる。これがシティポップの懐かしさとか、レトロブームの逆に新しい感じに繋がる感覚なのかな。

04. 夏のハイドレンジア
*ドラマ『彼女はキレイだった』主題歌

作詞作曲は秦基博。単体でもドラマの世界観に沿った素敵な曲だと思っていたけど、アルバムの中に置かれると一際輝く。
「夏の」とついているけど、歌の中ではずっと雨が降っている。梅雨の紫陽花。

"雨の街に咲く花 ヒロインなんだ 君は"
涙をこぼす君を、花(ハイドレンジア)に例える。

"どんな時も 輝くヒロインなんだ 君は"
"幾度 季節(とき)が 巡っても ヒロインなんだ
 僕の最初で 最後のヒロインなんだ 君が"

実写MV(?)も勿論良いけど、リリックビデオが公式にあるのがまた粋。

05. Iris
冒頭、カセットテープで録音した音質…!アラサーの私でもギリギリだけど。
単体では甘々プロポーズ曲。

雨が降っていた【夏のハイドレンジア】から、
"雨のち風のち晴れ Stay gold… そんな二人でいられたら"
と繋げる美しさ。
"君という花"と明言するのも、また。

公式ライナーノーツでは「恋のメッセージ」という花言葉にも触れられていたけれど、もともとこの単語には「虹の女神」という意味がある。
"You’re my flower"=僕のIris、僕の女神。これもある種のヒロインかなと。

"当たり前が特別に変わる 僕らだけのOrdinary days"
"笑い合った日々も 涙の夜も
 全て今につながる 大切な Days"

ここで一度"夜中のPhone call"と出てくるのが「最終章」への伏線で好き。
"電話越しでも伝わる表情"と教えてくれている。

06. SUMMER FEVER
単体ではライブのブチアゲ曲。ドームで噴水出す演出が見たい(キスマイ育ち)。ジャニーズらしい絶妙な歌詞よ。
"溶け合って Midnight(みない)"
"熱くったって In the night(いいんじゃない)"

この曲もポイントとなるフレーズが散りばめられている。
"You are my heroine"
"Just baby stay with me"

07. Story
第一章の最終話。この曲が『ザ・ハイライト』のストーリーをまさに描いている、いわば概要の曲。2番のサビに世界観がぎゅっと詰まっている。

【Forever Gold】からの流れ(ヒロインへの熱望、輝く思い出)をまとめ、以降は【LET'S MUSIC】が説得力を持つような曲が続いていく。

出てくる光は"月明かりの Spotlight""夜空に Starlight"。
ここでは見上げたらShooting starが零れ落ちてくる。

<第二章>「いろんな音楽を楽しもうぜ」

08. Eliminator
起承転結の転、ここから振り幅のある曲が連続で置かれている。曲調も然り、社会批判にセクシー曲にコミックソング…。

最初と最後に確かめられる"Can you follow us now?"の説得力。
このロックな姿勢、反骨精神を持っているのも嵐兄さんの系譜を感じる…。

09. Freak your body
ベロベロにえっちな曲なのにダンサブルナンバーに仕上がってるおかげで、普通に口ずさんでしまいそうで怖い。立派にR-18です。レーザーの中で踊りまくるのをライブで見たい。
最後の"何が欲しいか答えろよ 連れていく頂上"はトップ獲る的な感じでカッコいいんだよね。エロの文脈だけど。
"うしろからぁ~"でいけないものを見た気持ちになる病が治らない。

10. 休みの日くらい休ませて
マイクチェックから始まり、昭和のコントを彷彿とさせる軽快なメロディ、コミックソングと見せかけて令和の会社員に刺さりまくる歌詞…。これを平均年齢14.4歳でデビューしたアイドルが歌っている衝撃…名曲そして迷曲。
歌い方の表現力に「あそび」ができる魅力を感じる。

岡崎体育先生は自分でも「この曲浮いてますね」って書いてたけど笑、たまにある「Sexy Zoneが一般人だったら」シリーズとして結構好きです。
ここで"生粋の日本人"は文脈として是非がある気もしなくはないけど。

私も"いっそ会社の上司がみんな子犬ならいいのに"って思うけど世話はしたくない。笑

11. LET'S MUSIC
*ドラマ『でっけぇ風呂場で待ってます』主題歌

第二章の最終話。振り幅に目眩がしたところで、この曲にさらなる説得力が生まれる。ここしか無い配置。むしろこれがあれば何でもできる。Sexy無敵Zone。

初めてドラマで聴いた時からずっと嫉妬してます。(この記事の最後に感想note貼ってます)

<最終章>「真夏の夜の夢が明けても君はハイライトなヒロイン」

12. Summer Ride
【Forever Gold】~【夏のハイドレンジア】~【Story】、【Eliminator】~【LET'S MUSIC】の2つのメッセージを経て、ストーリーが終盤へ向かっていく。
だからこそ、こんなにしっとりしたサマーライダーなのだと思う(個人的には他アーティストの楽曲によりアップチューンのイメージがあった)。乗りこなしているようで、夏の終わりの匂いがする。
作詞作曲はSTUTSとbutajiの共作。ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌の布陣。

思い出、つまりハイライトが、【Desideria】では「ない」と言った夜明けを連れてくる。『ザ・ハイライト』のストーリーが起承転結の結に向かっていく。
そしてその光る星は、概要の役割を果たす【Story】で、見上げたら零れ落ちてきたShooting starだったのかもしれない。

"思い出は 闇の中で 光る星さ
 心に刻み込めば 夜明けはすぐそこだよ"
"君が好きさ どこまで行こうとも
 忘れたりはしないからね
 愛してる 今もまだ そんな季節"

13. Dream
流石の作詞作曲 iri 様。彼女が参加してくれたというギターとコーラスもカッコいい。シンプルな構成だからこそ、終わりを余計に意識してしまうし、歌詞の切なさに読んでいたら涙が出た。
ここでのDreamは未来への目標や憧れではない。【Forever Gold】を回収し、【Story】ともリンクして、儚いユメ(物語)が、終わる。
もしこの曲で終わっていたら、ハイライトとは呼べない悲しい記憶になっていたかもしれない。

【Forever Gold】で言えなかったGood Bye、【Iris】でのOrdinary daysを踏まえながら、結末に向かう。
"それじゃさよなら 僕らのたわいない日々よ"
"君と僕にしかないこの野暮なやりとりも
 夢みたいに綺麗に消えて Ok?"

14. Ringa Ringa Ring
サブスクが解禁されていないからこそ、アルバムの組み立て方として【Dream】で終わらず、この曲で締めるのがズルい。

曲単体としてはかなりキュートで、往年のジャニーズソング感(Jrが代々少クラで歌うやつ。山下達郎御大に楽曲提供していただきたい…)。
それが『ザ・ハイライト』というアルバムの最後に置かれることで、"もう少し話してたいよ"と「予感」と「期待」で終わることができる。別離を悲しむだけでなく、君とのハイライトを切り捨てることなく、愛し続けていられるのだ。「会えなくても話せる」Phone callをモチーフにしているのもまた憎い。

アルバム内では本曲と【Story】の作詞をyouth caseが手掛けており、概要と最終話という所がまたリンク性を感じる。(ちなみにyouth caseは嵐への楽曲提供がとても多く、作詞曲の一番の有名どころはOne Love、作曲ではLove so sweetでしょうか…)

What is the HIGHLIGHT ?

君と過ごした真夏の夜の夢(物語)が明けても、続いていくストーリーの中のハイライトとして、持ち続けていく。君はいつまでも輝き続ける、ハイライトなヒロインなんだ。

そんな不在のヒロインに込めたメッセージを、ストーリーを綴り続けていく決意を、強く見せられた気持ちでいる。

彼らの新章がどんな世界に描かれるのか、引き続き見ていきたい。

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