「新規事業をつくる」イントレプレナーになってから2年間でやった7ステップ
36歳のとき、「新規事業をつくる」イントレプレナーになりました。
2019年、新規事業のつくりかたなど何も知らない状況からのスタート。
手探りだったこともあり、たくさんの間違いや回り道をしてきた気がします。なにより、たくさんの人に助けられ、ご縁を頂けたおかげでここまでやってくることができました。
2021年6月現在38歳となり、SIerで新規事業開発担当として勤務しながら、一般社団法人 社会システムデザインセンター(SSDC)で社会に役立つ事業を継続的に生み出すべく活動しています。今風でいうとオープンイノベーションというものです。
約2年経ち、いちど振り返って自身の活動を棚卸する時期に入ってきました。実際にやってみた7項目をご紹介します。
あくまで個人の1ケースに過ぎませんし、成功談ではなくいまでも日々学ぶことや反省することばかりですが、同じように企業内・組織内で「新規事業開発」あるいは「オープンイノベーション」を推進することになった方の参考になることを願い、筆を執ります。
そもそも、何をすればよいか分からなかった
もともと僕は、新卒入社したSIerでずっと営業畑を歩んできました。
法人営業を12年、その後企画職(事業推進→経営企画)を2年。新規事業開発担当になって最初に困ったのは「何をすればよい」という決まりがないことでした。
そりゃそうだ。既存の仕組みがないものをつくる仕事ですからね。
僕がもともとやっていた営業は、下の図でいうと「コアビジネス」。売上や利益をもたらすといった明快な基準があります。一方で「新規事業を創る(イノベーション)組織」の場合、売上や利益とは別の評価軸が必要になるためです。それがインサイトやPMF、打席に立つ回数などで表されるものです。
ともあれ、新規事業に関して誰に聴いたら良いかわからない。何を聴いたら良いかも分からない…こんなスタートでした。
1.Webコンテンツを漁った
とっかかりとして、さまざまなWebコンテンツを漁りました。
Googleで「新規事業」「スタートアップ」と検索し、あてはまるメディアは片っ端から。
なかでも現在、東京大学FoundXにいらっしゃる馬田隆明さんのSlideShareは理論と実践、そして参照すべき書籍がバランスよく、何度となく閲覧しました。
FacebookやTwitterでも新規事業らしきことをしている人の記事や、その人がお勧めしているセミナーを調べていきました。
noteにもお世話になりました。スタートアップ界隈の方がいろんなナマの成功体験・失敗体験を上げてくれていたのです。
デザイン思考?リーンスタートアップ?PMF?横文字わからん!みたいな状況だった僕にとって、追体験させてくれる記事の存在は何よりもありがたいものでした。
チャーリーさんの「ビジネスモデル2.0図鑑 #全文公開チャレンジ」や、
原健一郎さんの「PMFの大切さと実例、はかり方、見つけ方」など。
佐藤ねじさんの「小1起業家」は、誰かの役に立って、その結果利益を残すという商売の原点について考えさせられる内容でした。
noteにはこのほかにも、有益かつナマの情報がたくさん落ちているので、いまもたくさんお世話になっています。
2.書籍を読み漁った
書籍も大量に読み漁りました。
丸善や紀伊国屋などのリアル書店に行くと、新規事業関連の棚があります。そこで平積みになっている書籍をまずは手に取りました。
田所雅之さんの『起業の科学』に、
磯崎哲也さんの『起業のファイナンス』
そしてスティーブ・ブランク氏の『アントレプレナーの教科書』は、運命の歯車を回してくれました(後述します)
書店でAmazonも開きながら、「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」「この商品に関連する商品」を見て、口コミや目次がよさそうなものは芋づる式に買っていきました(書店員さんごめんなさい)。
2年間で200冊ほど、新規事業やスタートアップにまつわる書籍を読んだでしょうか。
(2022年1月追記)その後、フェーズ別のおすすめ書籍としてnoteにまとめさせてもらっています。
3.ピッチコンテスト・セミナーを見に行った
そもそもスタートアップのリアルな実態が分からなかったので、カンファレンスやピッチコンテストを見に行きました。
上司から機会をいただき、アメリカの500(ファイブハンドレッド)Startupsが神戸市と連携して実施している「500 KOBE ACCELERATOR」のデモデイ(ピッチコンテスト)も聴講させてもらいました。海外のスタートアップも含めた空気感を知れる、貴重な機会でした。
TechCrunch Tokyoは、日本におけるスタートアップコミュニティのお祭り。プレーヤー、それを支援するVC、エンジェル投資家など含めたエコシステム、なにより「ピッチ」の型をざっと知るにはとても良い場でした。
そして、とってもキラキラしていました。
2019年11月はまだリアルでの開催だったので、会場の独特な熱気と高揚感をいまも覚えています(この年の覇者は、AI搭載型クラウドIP電話サービスのRevComm)。
セミナーにも、有料無料おりまぜていくつも通いました。
思い出深いのは、2019年5月に参加した、前述のスティーブ・ブランク氏来日イベント。
ブランク氏は、『リーン・スタートアップ』で有名なエリック・リース氏の師匠にあたる方。新規事業の方法論として再現性のある「顧客開発モデル」を体系化した、まさに「スタートアップのゴッドファーザー」。
↓神降臨の瞬間。
聴講当時は、話している内容が1ミリもわかりませんでした…苦笑
…が、記事サムネイルの右側に写っている、堤孝志さんとの出会いのご縁を頂くことができました(後述)。
4.弟子入りした
そもそも、僕に課された役割は「新規事業を起こす人に伴走するための、再現可能で体系的かつ実践的な方法論を習得すること」でした。でも、自分には経験も何もありません。
上司(取締役副社長)がスタートアップ界隈にも多くの繋がりを持っていたこともあり、たくさんの打ち合わせに同席させてもらいました。
内容のすべては分からなくても、交わされる人物名やキーワードをメモし、うんうん頷きながらその場で検索したり後で調べたり…を繰り返していくうち、なんとか少しずつ話についていけるようになった気がします。
焦ってもなにもできないので、愚直に分からないことを潰していく日々でした。
加えて、セミナーでのつまみ食いの知識ではなく、より俯瞰的に全体像や手法を知る必要があり、様々な方に弟子入りをさせてもらいました。なかでも4人の方に、大いに影響を受けました。
1人目は、AIの専門家であり産学連携コーディネーターでもある高柳浩先生。
高柳先生には、新規事業開発担当になった当初からさまざまな観点でのアドバイスを頂いてきました。
産学の特性の違い、大学の先生とのコミュニケーション、理論と実践、中長期的な視点…なにより論理的に考え、整理し、伝えることの土台を徹底的に鍛えていただきました。
高柳先生もパネリストとして参加されているこちらの座談会(高度ICT人材育成の10年)は、SSDCを形作る原型にもなっています。
2人目は、前述のスティーブ・ブランク氏の来日イベントを主催されていたラーニング・アントレプレナーズ・ラボの堤孝志さん。
僕の所属するSSDCにて提供している「事業創造デザインプログラム」の骨組みも、堤さんから指導頂いた内容が大いに生きています。
堤さんは前述の『アントレプレナーの教科書』以外にも、『リーン顧客開発』『スタートアップ・マニュアル』などの和訳に尽力されています。すべてに共通するメッセージは「真実はいつも会社の外にある」というもの。
血肉になるまで何度も読み返しました。今でも傍らに置いています。
3人目は、起業家で幸せ視点の経営学を広げるためのオンラインスクール「hintゼミ」を主宰している斉藤徹さん(通称:とんとん)。
とんとんとの出会いは2019年秋。hintゼミ2期生(当時はリアル)の成果発表会を日比谷ミッドタウンのBase Qで開催していたときでした。
学生・社会人含めた受講生の方々とのやり取りがとてもアットホームで、かつ何かがここから生まれそうな熱量を感じたのを覚えています。
その場でとんとんに挨拶し、2020年4月の4期から参加しました。ちょうどコロナ禍によりオンライン開催を余儀なくされたタイミングでしたが、結果として多くの素敵な人たちと空間の制約を超えた出会いがあり、オンラインの学びの可能性を感じた経験となりました。
hintゼミはその後運営側にも携わらせてもらいました。5-6期では受講生を支援するラーニングファシリテーター、7-8期では事業化とPMF達成を目指すPMFスタジオのメンターなどを務めさせてもらい、今に至ります。
↓とんとんの書籍『だから僕たちは、組織を変えていける』『業界破壊企業』をもとに考察したnote記事
伴走者の立場で何十人ものアイデア壁打ちやインタビュー、現場観察を支援していると、徐々に事業づくりのピントが合ってくるような感覚がありました。
4人目は、T師匠。メディアマーケティングのたたき上げプロフェッショナルであり、所属するSSDCのメディア戦略の相談に乗ってもらっています。
僕よりも若く、道化を一見装っているときもありますが、その視点はきわめてまっとうで的確。表に出ることは好まない方なので、この記事で雰囲気を感じてもらえれば嬉しいです。
そしてなにより、こういった師との出会いのきっかけをくれた上司、手探りながらともに学んでくれた同僚(後輩)には感謝しかありません。
5.企画運営した
学びを血肉にするために必要なのは、兎にも角にも実践。
自社や個人で、いくつかの活動を企画運営しました。
堤さんから教わった内容を消化するなかで、SSDCの「事業創造デザインプログラム」や自社のボトムアップ型新規事業開発アワードプログラムに昇華させていきました。
事業創造デザインプログラムは、デザイン思考・ジョブ理論・Lean Startupなどの手法を背骨にしました。
↓自社のボトムアップ型新規事業開発アワードプログラム概要
理論を習得し、コンテンツをつくっても、伝えるのはとても難しい。再現性のあるかたちで人にやってもらうのはさらに難しい。そして事業という結果を生み出すのはなおのこと。遥か先行く先人たちを、本当に尊敬します。
…ともあれ、さまざまな試行錯誤の中で、たくさんの指摘や気づきを頂きつつ少しずつプログラムを磨いていきました。
プログラムはある意味では生きものであり、同じようなフレームを使ったとしても2度と同じようなアウトプットにはなりません。型だけをなぞっても、そこには魂が宿りません。
だからこそ、少しでも想いのある人を集め、熱量を高め続けていく必要があります。
現在も集客、運営、コミュニティ形成などまだまだ課題ばかりですが、やっとおぼろげながらも目指す形が見えてきたように感じます。
個人としても、ビジネスフレームワークや思考法をもっと身近に感じてもらうためのセミナーや勉強会を自発的に開き、コンテンツ作成→受講者(数十名に)インタビュー→磨き上げ、というサイクルを愚直に繰り返してきました。
前述のT師匠との出会いもあり、最近は自社と個人の双方でやってきたことを結び付けることと、形に残して次世代へ伝えていくことを強く意識するようになってきています。
6.応募した
2020年7月、経済産業省とJETROが主催する「始動」というアクセラレータープログラムにも応募しました。
結果は不合格でした(…無念)。
ともあれ、応募してみないと結果がでません。事業も興してみないと結果が分かりません。やってみて、はじめて分かることがあります。
始動への応募の過程では、事業発案資料のつくり方や動画での熱量の伝え方を徹底的に意識することになりました。
そしてそれは、事業創造デザインプログラムにも生きています。
7.仲間とはじめた
この2年間で様々な仲間と出会いがあり、様々な活動をはじめました。
事業創造デザインプログラムを受講頂いた方の一部とは、いまでも繋がりながら事業づくりの勉強会や実践編をやっています。
hintゼミのつながりでも、縁あって地域の魅力を届けるオンラインツアーの企画運営に何度も携わらせてもらいました。
オンラインの旅というと「リアルの置き換えかい~」と思われがちですが、リアル旅とはまた違った喜び、オンラインならではの体験を提供できるということを、実際の活動の中でひしひしと感じています。
中小企業診断士の仲間とも、2020年夏「アントレプレナーシップ研究会」という団体を立ち上げ、共同発起人にならせてもらいました。いまでは10名を超えるメンバーで毎月、最新のイノベーション理論や経験の共有を行っています。
イントレプレナーになってからの2年間を振り返って
書いてきたように、ここまでたくさんの回り道をしてきました。
共通する気づきとしてあったのは、
「インプットしたものはどんどん使ってアウトプットすると磨かれる」
「Giveしまくると、結果としていろんなものが得られる」
ということ。
この記事も、読んでくださった誰かにとって役立つときがくれば幸いです。
肝心な「社会に役立つ事業をつくる」についてはまだまだ道半ばですが、ここまでの活動を活かして実際に結果を出すために、これからは本格的に動いていきます。
SSDCではこんな試みも起こしています。
後日談
(2023/1/11追記)
新規事業開発「はじめの一歩」の教科書を1/6公開しました。
公開4日で10,000ビュー、100スキを頂きnoteの新規事業カテゴリ「人気トップ」に!感謝感激です。
28,000字超、12Stepで新規事業のつくり方をお伝えしています。3大特典もありますので、ぜひお読み頂ければ嬉しいです!
それではまた!!
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