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時代の変わり目の新規事業創出と「始動Next Innovator」

2020年4月23日(木)に、Zoomで行われた「始動Next Innovator」卒業生主催のオンラインイベントに参加しました。卒業生である知人がFacebook上で教えてくれたのがきっかけです。幾つも刺激と気づきが得られたので備忘を兼ねてシェアします。

(2020.6.10追記)
2020年版のサイトがオープンしました!
<応募受付期間>
2020年6月10日(水)~ 7月8日(水)正午 となっています


■「始動next innovator」って?

経済産業省とJETROが主催する、いわゆる「アクセラレータープログラム」です。オフィシャルサイトには、以下のように紹介されています。

次世代イノベーター育成プログラム「始動Next Innovator」
〜THINKER TO DOER(考えるだけの人から直ちに行動・実践する人へ)
まだ世の中にない、新しい価値を創出するために 今の領域をはみ出せ!

「始動Next Innovator」は、「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」の一環として次世代のイノベーションの担い手を育成することを目的に2015年度に立ち上がりました。過去4年間で約500名の多種多様なイントレプレナー・アントレプレナーが活躍しています。

より速く、より遠く、より力強く、ダイナミックに世の中を変えるには、グローバルにマーケットを捉え共に進むパートナーを見つけることが必要です。 「始動Next Innovator」はシリコンバレーに代表されるスタートアップの方法論を体得し、選抜者には実際にシリコンバレーに赴いて本場のスタートアップエコシステムを体感することで、世界に通用するイノベーターを育成。 参加者は日本のイノベーションエコシステムの一員として、日本の成長戦略に寄与することが期待されます。

本プログラムは、国内プログラム(全11日間)及び選抜者を対象としたシリコンバレープログラム(全10日間)、Demo Day(2020年2月下旬予定)で構成されており、様々な講師ならびにメンターとともに実践的な活動を遂行することで、イノベーターとしてのマインドセットとスキルセットの体得を目指します。

「THINKER TO DOER(考えるだけの人から直ちに行動・実践する人へ) 」というのがキーワードで、過去4年間で約500名の方が参加している。

すごーく、意識が高そうです(汗)。


■実際のプログラム報告書を読んでみた

始動は第5期までが実施されています。過去に行われたプログラムの報告書を探して読み込んでみました。毎年フォーマットが異なり、経産省のサイトに直接載っているものとそうでないものがあり大変…

特に2018年度(平成30年度)の報告書に詳しく書いてあったのですが、ざっくりと分かったのは、以下のようなことです。

・応募数と選抜数:毎年2~300名超の応募者→約120名が受講生として選抜
・応募時の事前審査:第3期以降は「書類+動画」にて審査
・受講生の男女比率:女性比率が増加傾向、近年は約4分の1が女性
・受講生の企業比率:近年はほぼ一定。大企業が約65%、中小・ベンチャーが約25%、その他(行政・大学・団体他)が約20%
・受講生の地域比率:近年はほぼ一定。関東が約75%、関西が約10-15%
・受講生の年齢分布:20代が約20~30%、30代が約40-55%、40代が約10-25%
・シリコンバレー選抜:受講生のうち特に優秀な約20名が、シリコンバレー派遣組として選抜

おもに関東圏の大企業に所属している若手・中堅をメインターゲットとしつつ、受講者層のバランスがとれるようなスクリーニングがされていると考えてよいでしょう。

第5期:2019年度(令和元年度)プログラム報告書

始動2019


第4期:2018年度(平成30年度)プログラム報告書

始動2018


第3期:2017年度(平成29年度)プログラム報告書

残念ながら見あたらず…


第2期:2016年度(平成28年度)プログラム報告書

始動2016

第1期:2015年度(平成27年度)プログラム報告書

残念ながら見あたらず…


■始動卒業生主催のオンラインイベントに参加して

あらためて、以下のイベントに参加してのレポートです。どうやらイベント当日は100名以上の参加者希望者がいたものの、Zoomの仕様(おそらく主催者の方の有償プラン上の制約)で見られなかった方もいるとのこと。なのでオフレコの箇所は外しつつ、できるだけ有用だと感じたポイントを紹介します。

ゲスト講演してくださったのは、株式会社インキュベータ代表取締役の石川明さん。

リクルート社に1988年入社後、社内起業制度「New-RING」事務局として新規事業創出にかかわり、2000年、リクルート社員としてAll About社を創業、2005年にJASDAQ上場。その後2010年に独立して、現在はSBI大学院大学(MBAコース)客員准教授でもあり、起業者支援の立ち位置から、ボトムアップにより新規事業創出の支援をされている方です。1000件以上の新規事業創出に関わってきたとのこと(途方もない…)。
石川さんの著作は以下のとおり。


■石川さんからの問いかけと、時代の変化

石川さんからは、以下の問いかけがありました。

・1年前の自分より成長していると自信をもっていえるか?
・社外の同世代の人の話を聴いて「やばい」と感じることは?
・なぜ就職先にいまの会社を選んだか?
・就職先に、いまの会社を選んだ想いは叶えられているか?
・いまもその時に持っていた「青臭い思い」はあるか?
・成長していくきっかけがないことを、もどかしく感じることはないか?

そして、特に若い人に知っておいてほしいことが語られます。

企業の人事評価の基準が変わってきている
ー事業環境が変わる中では必然の流れ
ー新たな価値を、自ら生み出していける人かどうか
ー主体性・能動性・創造力・変革力がますます重要視される指標に

「経験格差」の時代が始まっている
ー経験を人事部がおぜん立てしてくれる?
ー経験は自ら機会を創り、獲りに行くもの

若いころの良い経験が、次の経験をつくる。じっと待っていても何もおきないが、いまは新たな挑戦をする最大のチャンス。なぜならコロナを発端にした「動乱(≒社会の揺らぎ)」が起きており、そういう時は成り上がる機会だし、少しくらいヘンなことをしていても大丈夫だから笑。そう石川さんは語ります。


■事業とは「不」を解消するもの

そうはいっても、自分に新規事業なんて提案できるのか?と思うでしょう。

・発想力が高くて、斬新なアイデアが出せる人?
・アンテナが高く、最新の情報に触れている人?
・経営学の知識があり、企画できる人?

自分は難しいのではと感じる人に対して、石川さんが語ります。

そもそも事業とは、「不」を解消するもの
ー不平、不満、不便、不利、不都合、不幸…
ー誰かが抱えている「不」に対して、自分が寄与することで、どうやって解消するのか、を考える
ビジネスチャンスを探す=世の中にある「不」を探すこと
ー誰かのお困りごと、喜んでくれることを探すこと
新規事業開発=「不」の新たな解消方法を考えること

「不」というのはリクルート流の言い方ですが、とてもシンプル。

ではどうやって?ここからの話が凄く分かりやすくて、自分も使おうと感じたところです。


■新規事業の芽はこうやって探す

新規事業の芽を探すための手順として、石川さんは学生時代の科目を思い出そうと語ります。そして、その順番がとても大事だと言います。

国語
ーどこで、誰が、どんな「不」を抱えているのか
ー人の気持ちを丁寧に探る。リアリティ重視。超具体的に
算数
ー「不」の大きさを確認する
ー①「不」を抱えた人の数②頻度の高さ③深刻さ で総量を測る
理科
ー「不」が生じている理由を分析する
ーロジカルシンキング。ツリー構造で分解
社会
ー「不」が解消されていない背景を理解する(PEST分析などを活用)
ー理屈のうえではそうでも、現実的に解消されていないのはなぜか
図画工作
ー「不」の解消方法を考える(事業アイデア)



体育
ー「不」の解消のために事業を実行する
※体育は、参加者から「体育もあるよね」とコメントが出ていたので追記

このあたりの話は、Webでも石川さんの記事がありました。


■企業で勤める人にとっての意義と「仕事」の原点

「始動」がおもに大企業勤めの若手・中堅をターゲットにしていることもあり、石川さんの視座は、そうした社内でくすぶりかけている人に向いていました。「辞めることだけがすべてじゃないよ」と。

外から自分の会社を見直してみる機会
ー自社の強み、「らしさ」、誇れるもの、会社を通じて為すべきことは何か
社内の○○No,1を目指せる
ー「これは自社のなかで自分が一番考えた」と自負できるものを持ち帰る
ー何かの「社内No1」になると得られるもの…

そして最後に石川さんが話してくれたのは、起業体験を通じての「仕事」の原点。

事業とは、誰かの役に立って、喜ばれ、その対価を得るということ
ー事業を遂行するのが「仕事」
ーお客さんにどんな価値を提供して、どうすれば喜ばれるかを考えるのが「事業」の本質
ー事業を通して、「世の中をより良いものにしていこう」という人が増えていくのならば、「始動」は国として公共性の高い、とても有意義な先行投資


■「始動」に参加するメリットとは

石川さんの講演と前後して、卒業生によるパネルディスカッション。始動に参加するメリットが語られていました。特に印象に残ったのは以下の点です。

講師陣・メンター陣によるトップクラスの指導
ー意識も行動も、変わらざるを得ない
受講者・アルムナイ(卒業生)のネットワーク
ーもらったもの、学んだものを次の世代に返していく連鎖の仕組み

2019年度の活動報告にも載っていましたが、まさに第一線の人たち。本当にうらやましいです。とともに、こうした方々の指導を主体的に吸収するのか、受け身になってしまうのかは、自分しだいとも言えます。

受講者や卒業生として、お互いに何が貢献できるかという視点と具体アクションも重要です。
↓参加者のメリット

始動2019merit


さらに石川さんからの観点で、「始動」へのエントリーのススメがありました。

有意義な経験の機会
ー企画・開発・調達・製造・販売・管理の全プロセスを自分が当事者として考えて取り組む機会
ー残念ながら、大企業でその機会を得られる人はわずか
ノーリスクで「経験」ができる機会
ートライして失うものはない
なぜThinkerではなくDoerなのか?
ー新規事業やイノベーションを、知識として学ぶだけで力をつけることは難しい
ー自分で考える、創る、起案する、などは実体験の中でしか力をつけることはできない
ー参加するからには、新規事業として実現して、世の中に価値を生み、貢献してほしい
ーただ、自分が勉強をすることで成長したいだけなら、正直なところ、税金は使わないでほしい

このあたりは、僕自身も新規事業創出に関わる立場として非常に共感しました。自分自身の勉強や成長のためだけではなく、世の中に価値を生み、次世代のために貢献していくことが、応募にあたり必要とされるマインドセットでしょう。



■求められている人物像

始動2019年度の始動ホームページには、以下のような参加者像が定義されています。

・社会にインパクトを与えるイノベーションを起こしたい人
・自らの事業アイディアを持ち、ビジョンの実現に向けて当事者意識を持つ人
・世界にうって出られる事業へ成長させるために、リソースとチャンスを得たい人

これはなにも「始動」に限った話ではなく、世の中全体が、こうした人を必要としているのだと感じます。だからこそ、決して少なくない税金を投入してでもやっているのでしょう。

選定基準に関しても、2018年度プログラム報告資料には以下のようにありました。

書類審査では、事業コンセプトにおける課題の内容や論理的思考能力、
課題と解決方法との一貫性社会的インパクトの大きさなどを評価し、
動画審査では、事業に対する本人の意欲や意思を評価した

書類審査では、社会人としての基礎的な課題解決能力などのスキルセット動画審査では、アントレプレナーとしてのマインドセットが問われているのだと思います。


最後に…いまだからできること

いろいろと話を聴いてきましたが、参加者コメントも踏まえて、いまだからできることを備忘としてまとめておきます。

Stay Homeしている間になにをすべきか?
・自分を振り返る
・好きなことをやってみる
・口で言っていることを、実際に紙に落としてみる
・友だちに聴いてみる
・「不」の当事者に、オンライン会議で聴いてみる
・アンケートを取ってみる
・事業計画書を書いてみる

内省でやるのが向いている人、外圧でやるのが向いている人、それぞれいます。なので自分にあったやり方でやればいいでしょう。

以下はあくまで僕自身の考えです。

世の中の流れ(外的なトレンド)自分の興味・強み(内的なアセット)を重ねながら、やりたいこと・やるべきこと・食べられることを組み合わせて仕事を「志事」としてやっていく。それを事業化する。

このほうが、楽しくて、世の中の役にも立てて、好きな人たちといることができて、次世代に何かを残すことができて、幸せなことなんじゃないかなーと、ぼんやり感じています。

そういう意味では、パンデミック下で世の中の変化を見つめたり、自分のことを内省する機会が増えるのは、捨てたもんじゃないですね。

そして、この時期だからこそ、次の時代を見据えて「不」を解消する事業を考え、行動していくつもりです。
というわけで、「始動」の次の募集開始を楽しみにしています。

ここまでお読みいただいて、ありがとうございました!


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