人生後半の旅・生きる根源とは〜離島パナリの秘密の祭祀に導かれて/私自身の八重山③−1
いまから話そうとしていることは、
口外することをタブーとされています。
じゃ、書けないやん。
はい。
しかし、私が書きたいのは
ルポルタージュではないので、
書いても大丈夫、
と思います。
日本の南のはしの八重山諸島のなかに
新城島(アラグスク島)という島があります。
はじめて聞く人もおられるでしょう。
石垣島のさらに離島です。
新城島は
上地島と下地島からなり、
この二つの島をあわせてパナリ島ともいいます。
この島に秘密の祭祀が伝わっています。
私は、2017年と2018年の2回、
現地で体験しました。
沖縄では
久高島、大神島、新城島の祭祀が
三大秘祭とされていますが、
新城島だけが取材禁止になっています。
取材禁止だからカメラも録音機も持ちこめない。
口外することも禁止。
破ろうとしようものなら祟りが起きる、
と言われています。
じっさい事件があった、と聞いています。
だから、コンテンツには触れません。
取材禁止、口外禁止の「秘密の祭祀」と言うと、
なにか煽っているの、
と誤解する向きもあるかもしれませんが、
決して、そんなつもりはありません。
私が伝えたいのはシンプルなメッセージ。
ここでは、
人はなぜ祭祀を必要とするのかを、
私の内的体験をふくめて
書き留めておきたいのです。
どこかの土地のたいていの祭祀は、
多くの人に開かれています。
しかし、新城島につたわるのは、
観光客や部外者をいっさい入れないで、
五百年のあいだ
内輪だけでひっそりと伝えてきた
秘密の祭祀です。
夏のある日、
人口10人、40世帯ほどの小さい島に、
年に一夜だけの祭祀をおこなうために、
全国に散らばった島にルーツをもつ人たちが
帰郷します。
そして、
一夜のことは、
その瞬間だけで跡形もなくなり、
そのあとはいっさい口外されることなく、
内輪だけの共通の体験として
かれらの記憶の中だけで
保存、共有されるのです。
そのことはきっと、
一族の連帯感を深め、
アイデンティティーを確かめるのに
おおいに役立っているのだろうと
想像します。
自分は、どこの誰なのか。
安心して生きていくためには、
自らのルーツとしっかり繋がることが、
必須なのだと思います。
生きる根源とは、
そういうことなのだと思います。
自分はなぜ、ここにいるのか。
自分を確認するために、
人は祭祀を必要としている
のだと、思います。
そんな秘密の祭祀に、なんで
島に縁も由もない私が
出かけることができたの?
新城島出身の人のお誘いがあったのでした。
ただし、島の人の引受人のない部外者が
紛れ込んでいると、つまみ出されます。
何かあっても
警察も介入できないから、御用心。
私が島の人と親交をふかめるようになったのは、
京都から石垣島に移住したことが
きっかけでした。
旅行者だった私は、
いくつかの偶然がかさなって、
八重山に住みはじめました。
2007年のことです。
20代、30代は大阪の新聞社に勤務、
30代の半ばで結婚、破綻。
公私ともにうまくいかず、
心理の世界をさまよっているうちに
たどり着いたのが
人生後半をどう生きるか
ということでした。
答えは内界に求めよ。
人生後半を生きるのに必要な
ヒントは
自らの内側にありました。
私は自分を取り戻すために
自己探求の旅に出たのでした。
後半へ
つづきます
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