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漢の読み物「バトルもの」

 バトルものというジャンルは、特に少年漫画などでよく見られる、登場人物たちがそれぞれの能力を駆使して戦闘を繰り返し、高みへと上っていく様を描く作品だ。それは確かに起伏のある「ストーリー」を展開し、何人もの「キャラクター」が登場するものの、実のところその存在の目指すところは1つである。

 ただ、戦うために戦う。それがバトルもの唯一の、明確な筋である。誤解を恐れず言えば、そこには他に特別な思いなどなく、純粋に、キャラクター達が力比べをするためにバトルをする。強さと強さのぶつかり合い。それを示すのが目的となる。
 だから、これはいわゆる「男性的」物語だと言えよう。私達の感覚の中に未だにこびりつく「暴力」への男性的なイメージが、それを裏付ける。戦いは男のものであり、それを純粋に楽しむのも男である。理由などいらず、ただ強さを示すことに興奮する気持ち。あるいは何か理由があっても、理屈なく力と力のぶつかり合いの末にそれが解決してしまう。
 バトルものには、そういった精神が宿っている。だからこそ、バトルが主役なのだ。キャラクター達の個人的な過去や性格や交流や、あるいはストーリーの整合性やきちんとした起伏とか、理由とか結果とか、そういったものを楽しむことは、また別の次元にある。

 ただひたすら、バトルが面白いと感じること。それが、本当に求められるバトルものの条件である。あるいは、バトルそのものを楽しめないのであれば、バトルものを楽しんでいるとは言えない。「バトルする動機がない」「バトルしたからって解決するの?」」「このキャラ達はバトルしてほしくない」などという感想は、バトルものに対する不遜である。
 そしてまた、バトルは何かをたとえた代替表現でもなく、バトルものの登場人物達はそれぞれ、真剣にバトルと向き合っている。
 バトルが少年漫画の歴史の中で醸成させてきた歴史とは、そういったいわゆる男性的な価値観だ。ストーリーというのは時代に応じて激しく変化を遂げるものだが、そこに通底する精神はまだまだ変わらない。

 バトルものは、戦うために戦うのである。ただひたすら、強さのために。それを克明に表現し続けることこそが、このジャンルの目的となる。

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