川代紗生(カワシロ・サキ)

小説・エッセイ・取材など。新刊小説『元カレごはん埋葬委員会』発売中→ www.amaz…

川代紗生(カワシロ・サキ)

小説・エッセイ・取材など。新刊小説『元カレごはん埋葬委員会』発売中→ www.amazon.co.jp/dp/4763140965 |エッセイ『私の居場所が見つからない。』|noteは日記|問い合わせはサンマーク出版までお願いします!

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【小説『元カレごはん埋葬委員会』】第1話:元カレが好きだったバターチキンカレー「あなたに好かれる女のふり」

 女をふる場所に、よりにもよってラブホを選ばなくたっていいでしょうが、ばかー!  渋谷のラブホテルのベッドの中で、私は嗚咽をこらえるのに必死だった。  本音を言えば、もっとちゃんと大声で泣きたかった。おーいおいおいという文字が口から飛び出てくるくらいわかりやすく泣きたかったけれど、唇を噛み締めて我慢した。これは最後の意地なのだ。  なぜなら、人ひとりぶん開けたすぐ隣に、ついさっき私をふったばかりの憎たらしい男——高梨恭平が、寝ていたからだ。  背を向けているから顔は見えないけ

    • 【日記】「選んだ道を正解にする」思考の危うさ、たまには後ろ向きに。

      「『正解の道』なんてものは存在しない。自分が選んだ道を『正解』にするしかないんだ」という考え方がある。ビジネス書などでもときどき見かけるやつだ。一般社会で成功する人というのは、得てしてこういう哲学を持っていたりする。現状を正解にする力。自分が選んだものを肯定し、行動し、まわりにも「あのときはどうなることかと思ったけど、なんだかんだ、あの道を選んだのが成果につながったよね」と認めさせる、その勢い。  選んだ道を正解にする力。  わたしも以前は、その考え方を大事にしていた。一

      • 【日記】「文庫専用本棚」を買ってみたら《ここ1年で買ってよかったもの》

         唐突だが、非常に唐突なことは理解しているが、ここ1年で買ってよかったものの話。  みなさん、「文庫専用本棚」とやらをご存知ですか。ええ、その名の通り、「文庫本しか入らない本棚」です。新潮文庫、講談社文庫、ちくま文庫などなど、小さな文庫本を整理するための本棚を、ついに買いました。いつだったかな、今年? いや、去年?(適当すぎる)まあいずれにしろ、購入してから半年から1年くらいは経ったかな、というところです。  買ったのは、楽天で。「家具衛門」というメーカーの、「文庫本専用本

        • 【日記】正直であることと引き換えに何かをもらおうとすることについて

           あるいは、正直というよりも、赤裸々、という言葉のほうが近いかもしれない。ぶっちゃけ話。あなたにしか言えない本音。みんなの前ではこういう態度をとっているけど、ほんとのわたしはこうなんです、という打ち明け話。そういうやつ。  そういうたぐいの正直さと引き換えに、なにかをもらおうとしている自分に、どこかで醒めてしまった。瞬間があった。前々から、「実はわたしね、」ととっておきの打ち明け話をしたり、「この話するのはじめてなんだけど、」とずるい前置きをしてから、そのいかにも本音

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        【小説『元カレごはん埋葬委員会』】第1話:元カレが好きだったバターチキンカレー「あなたに好かれる女のふり」

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        • 小説制作日記【元カレごはん埋葬委員会】
          29本
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        • 貯金20万のアラサー女子が一念発起!ゼロからはじめる投資思考
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          【日記】文章のリハビリ中

           こんなにすっからかんになることってあるんだ、と、まずはびっくりした。文章の話だ。  今までも、なんとなくキーボードを打つ手が重くなったり、自分の気持ちを表現する言葉がするするっと出てこなくてもんもんとする時期はあったものの、今回ほど「すっからかん」という表現がしっくりくるほど、書けなくなるというか、今までずっと居座り続けていた自分がすっかりいなくなっちゃったような感覚を味わったことはなかった。あーん、どうすれば前みたいになんも考えずに書けるようになるんだよう、っていうか

          【日記】文章のリハビリ中

          【日記】「前から思っていたことをこの人は言語化してくれた」と頻繁に思うとき、問うべきこと。

           自分だけの「正しい」をちゃんと守れる人でありたい、と思う。守れているか? と問う。誰かに決められた「正しい」でもなく、誰かへの憧れを投影させたがゆえの「正しい」でもなく。  私が、私の頭で考えて決めた「正しさ」がほしかった。自分にはそういうものがないと、10代の頃から不安だった。遠くまで走ってもふりかえればぱっと見つかるような、まっすぐでしゃんとした旗印がほしかった。  あるとき、もう決めてしまおうと思った。19歳の頃だ。いろいろな言葉を調べ、自分にしっくりくる「何か」

          【日記】「前から思っていたことをこの人は言語化してくれた」と頻繁に思うとき、問うべきこと。

          【日記】7年前からの憧れiMacをついに買いました!「心から納得のいく原稿」を書いたあとに残るもの。

          みなさまこんにちは、川代です。うひゃー、今日はご機嫌です、屋上にのぼって汗だくになるまで踊り散らかしたい気分です、それっくらいうれしい! というのも、ついに、ついに、念願だったiMacをゲットしてしまったのです!! 今こうして書いている文章も、iMacの画面を見つつ、付属のキーボードを打っているわけですが、いやはや、こうやって文章を書いているだけでもわくわくします。最高!!! なんでまたこんなにテンションがぶち上がっているのかといえば、7年前からずーっと、iMacがほしく

          【日記】7年前からの憧れiMacをついに買いました!「心から納得のいく原稿」を書いたあとに残るもの。

          【日記】20歳で描いていた「いつか」を、私はもう通り過ぎてしまったんじゃないか?31歳の不安。

           ふっと気づいてしまった瞬間があった。「あ、私の人生って、世界一周しないまま終わるかもしれないんだ」と。  んな大袈裟な、とすぐに自分でつっこみを入れたが、続けて、いや、ガチでありえるんだよ、31歳ってのはそういうことを考えるべき年齢なんだよなあ、という言葉が、すぐにあとを追いかけてきた。Fire TVを操作していたリモコンを持つ手が、ちょっとひやりとした。  きっかけは、YouTubeだった。世界一周をする旅人の動画だ。アジア、ヨーロッパ、南米。世界遺産から都会の街

          【日記】20歳で描いていた「いつか」を、私はもう通り過ぎてしまったんじゃないか?31歳の不安。

          【日記】きついときほど、「疲れた」を感じられる自分でいる

           なんというか、いくらなんでもそこまで一気に詰め込まんでもいいでしょうと文句のひとつも言ってやりたいくらいの、トラブル続きの一ヶ月だった。めっちゃ楽しいことがあったと思ったら、めっちゃしんどいことがあって、体調も崩して、なかなか治らなくて、ようやく落ち着いてきたと思ったら、今度はトイレが詰まった。もー、なんでよ!! というわけで今、なんとかかんとか、刻一刻と迫り来る尿意と戦いながらキーボードを打っている。管理会社には連絡したけど、なかなか来ない。お願いはやく来て! ずっとこん

          【日記】きついときほど、「疲れた」を感じられる自分でいる

          【日記】心が折れそうになったとき、病院に通うことについて

          「メンタルを安定させる方法」についてはさんざん調べ、ありとあらゆるライフハックを試し、自分を励ます言葉をおまじないのように唱え続けてきたが、結局のところ、やはり一番効果があったのは、クリニックに通うことだった。そう、精神科・心療内科である。  まあ、もともと、平均よりかなり心が折れやすい方というのは自覚していた。だからこそ、いろいろな精神統一術、環境を整えるなどの根本解決策系、筋トレやランニングなど肉体系まで、さまざまな方法を試してきたわけで、いろいろ試しすぎて、もはやど

          【日記】心が折れそうになったとき、病院に通うことについて

          【日記】「ときめきの塊」みたいなお洋服

           パフスリーブで、ほんのりグリーンがかった淡いブルーで、お花のジャガードで、さらにさらに背中にリボンもついてるむちゃんこに可愛いお洋服を、えいやっと(それはもう清水飛び降り価格)買ってしまった。3日前に届いた。かわいい。まじでかわいい!  それはそれはもう、胸がときめいて仕方がない洋服だった。こんなに猛烈に「かわいいいい!!!」と思ったの、ひさしぶりだ。どこに着ていく予定もないのに。生地が繊細で、汚したら一発アウトみたいなやつで、Tシャツとデニムばかり着ている最近の私には

          【日記】「ときめきの塊」みたいなお洋服

          【日記】SNSから少し距離を。「正しさ」が一夜にして別物になる怖さ

           最近ちょっと、SNSというか、ネットの世界から離れるようにしていた。ずーっと眺めているとだんだん、世間の人々が思う「正しさ」に、自分の中が侵食されていくような感覚があったからだ。怖い、と思った。純粋に。自分のこころが布巾で包まれた豆腐みたいなものだとしたら、その布巾の大きな網目から、じゅわりじゅわりと、醤油が染み込んでくるような。  これ、気づかないうちに私の心臓は醤油まみれになって、内部にまで染み込んで真っ黒な豆腐になっちゃって、最終的には自分のこころがただの素朴な豆

          【日記】SNSから少し距離を。「正しさ」が一夜にして別物になる怖さ

          【日記】こころにじっと耳を澄ませる

           自分のこころにじっと耳を澄ませる、みたいなことが、ここしばらくできていなかったなあと、ようやく思う。そう客観的に思えるような余裕が、ようやっと、ちょっとずつ出てきた、ということだ。  書く——という行為に取り組むようになってから、十年以上は経つものの、ちっとも慣れてきた感覚は得られないし、書けば書くだけ、自信を失っていく。「なんでこんなに下手くそなんだろう」「なんでもっとうまい表現が思いつかないんだろう」と、キーボードを打つ右手を、ふつふつと加熱していく頭を、がつんと殴

          【日記】こころにじっと耳を澄ませる

          【日記】島根県の「ブックセンタージャスト大田店」に行ってきました!

           先週末の土日、島根県に行ってきました! 土曜日の夜の飛行機で羽田を出て、日曜日にすぐに帰るという弾丸旅行。  いやー、でも、一瞬だったけど、ほんと、楽しかったなあ。自然がたっぷりで、ごはんもめちゃくちゃおいしくて。  滞在時間が短かったので、今のうちに島根グルメを食べ尽くそう! ということで、出雲市に到着してすぐに、のどぐろが有名なお店へ。  やってやりました、やってやりましたよ、のどぐろ祭り! へへーん! 皮がこんがり香ばしくて、おいしかったなあ。  地魚の盛り合わ

          【日記】島根県の「ブックセンタージャスト大田店」に行ってきました!

          【日記】小説家デビューしたら、無口な父がいちばんに「面白い」の言葉をくれて、ちょっと泣けた。

           意外にも、真っ先に「面白い」の言葉をくれたのは、ほかの誰でもなく、父だった。発売日の本当にすぐあとに、連絡をくれたのだ。自分の親ならばべつに「意外にも」というほどではないんじゃないかと思う人もいるかもしれないが、私にとってはやはり「意外」だった。なぜなら私たちには、あまり仲の良くない時期があったからだ。  子どもの頃の我が家は余裕があると言えるような状況ではなく、いつもどこかピリッとした空気が流れていた——ように、思う(あまりに前のことなので記憶もかなり曖昧だ)。父も張り

          【日記】小説家デビューしたら、無口な父がいちばんに「面白い」の言葉をくれて、ちょっと泣けた。

          【お知らせ】明日2月20日(火)夜、テレビ出演情報

          テレビ大阪『さらばのこの本ダレが書いとんねん!』2月20日(火)放送回、ぜひ見てくれ〜〜!! 地上波関西ローカル24:30から30分間、『元カレごはん埋葬委員会』についてたっぷり話してきました!さらば青春の光の2人が“ひとクセある本”の著者を招き、気になる事を聞きまくるトーク番組です。 ものすんごく緊張して頭まっしろだったのですが、森田さん、東ブクロさんをはじめ、プロの皆様がめっちゃくちゃ盛り上げてくださり、最後は笑ってばかりで苦しいくらいでした。楽しかった〜! お二人の元

          【お知らせ】明日2月20日(火)夜、テレビ出演情報