見出し画像

【日記】心が折れそうになったとき、病院に通うことについて

 
「メンタルを安定させる方法」についてはさんざん調べ、ありとあらゆるライフハックを試し、自分を励ます言葉をおまじないのように唱え続けてきたが、結局のところ、やはり一番効果があったのは、クリニックに通うことだった。そう、精神科・心療内科である。
 まあ、もともと、平均よりかなり心が折れやすい方というのは自覚していた。だからこそ、いろいろな精神統一術、環境を整えるなどの根本解決策系、筋トレやランニングなど肉体系まで、さまざまな方法を試してきたわけで、いろいろ試しすぎて、もはやどれが一番効果があったのかもわからなくなってきたが、結局最終的に、「病院に頼る」というシンプルな方法に落ち着いた。うん。やっぱりね、それが一番よかったよ。具合が悪いときは、病院に行くに限る。

 心療内科に通ってよかったことはいくつかある。
 まず、クリニックの待合室に、たくさんの患者さんがいること。
 私が通っているクリニックは比較的規模が大きいので、待合室が大混雑していることもある。椅子に座れず、入り口の外で立って待っている人もたまにいるくらいだ。
 はじめて行ったときびっくりしたのは、いろんな、本当にいろーーーんな人がいることだった。制服を着た女子高生もいれば、バリバリ仕事をしてそうな、スーツ姿のビジネスマン、オフィスカジュアル的な服装の女性も。ここは内科ではないので、鼻をずびずび啜ったり、熱でほてった顔をしていたりする人はいないけれど、ぱっと見てわかりやすい「症状」が出ている人ばかりではないけれど——それでも、心の裡側には、何かしらの傷を抱え、その傷をなんとかしようと——あるいは共存しようと、あるいは隠そうと——して、この場所に来ているわけだ。
 その光景を見ていると、文字通り、こう思うのだ。
 自分だけじゃない。
 だって、本当に自分だけじゃないんだもん。平気そうな顔をして、でも何がしかの問題を心の底に持っている人が、こんなにたくさんいるなんて、なんだか安心できるじゃないか。

 それから、自分の、いわば「心の体調」とでも言うべきものを、定期的に確認する機会を得たというのも、通院しはじめてよかったことの一つだ。
 私がクリニックに通うようになってもう二年くらい経つ。
 今は、だいたい四週間に一回くらいだろうか、先生と話して、薬をもらう。「最近はどうですか」と聞かれる。「そうですね」と答えようとしたとき、うまく説明できないときがある。あれ、最近の自分、どうだっけ? と自分でもよくわからなくなるときがある。そんなときは、ちょっと疲れてるな、と認識して、心がぽっきりと折れきってしまわないように、いつもより自分の心に気を遣う。そんな感じ。
 なんか今日は肩のあたりがだるいな、なんか今日は偏頭痛がするな、とか、今日の体の調子を確認するのと同じように、「心の体調」にも気を配っていいのだ、というのが、病院に通いだしてから得られた学びだ。
 それまではずっと、心が折れてから病院に頼るものだと思っていた。
 でも実際に、本当にばきぼきと、心が粉々に砕け散ったあと、はじめて病院に行ったとき、思ったのだ。さっさと来てればよかったと。
 折れたあとに対処してもらうのもいいが、折れないために通う、というのもありなのだと知った。

 さて、そろそろ薬も減ってきた。今月もどこかで行かなくちゃならない。あー、歯医者と眼科の定期検診も行かねば。でもさー、病院ってまじでめんどくさいよね。まあ、元気に働くためには致し方なし。





初小説『元カレごはん埋葬委員会』。好評発売中です!!

第1話をまるごと公開中です!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?