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子供のころから寂しさや不安てある~「ふくろうくん」から可愛いユーモアを感じて~

 「がまくんとかえるくん」で知られているアーノルド・ローベル展に行ってから、なつかしい絵本を引っ張り出してきた。 

 45年ほど手ばなせない絵本の中に「OWL AT HOME(ふくろうくん)」がある。

 気に入った絵本は引っ越しの度に持ってきたので、残っているってつまり好きだったのだろう。実は「格別気に入っていた!」の気持ちは覚えていたものの、内容を覚えていなかった。色合いの暗さからも、息子に改めて日本語版を買って読むことはなかった。

 今回、展覧会に行くと「ふくろうくん」はアーノルド・ローベル本人が「最も個人的な作品だ」と語ったと知った。彼の子供たちも「お父さんはふくろうくんに一番よく似ている」と語る。

 ふくろうくんて、どんな個性だっけ。何故私はこれをまだ持っているのかしら。と何十年ぶりかに読んだ。


 短編ばかりいくつか話があって読み始めたら記憶がよみがえってきた。

 中でも「寝ようとして布団に入ると、下の方にでっぱった物が二つ見える」話が、特別気に入っていたのも思い出した。

 足元にある二つのでっぱりは自分のつまさきなのに、ある夜に「なんなのあれ!」って気付いてびっくり。
 布団をめくるけどそりゃあ何もいない。
 なのに寝ようと布団に入るとまたいる。

 可愛すぎて、読みながら笑いが止まらなくなった。

 ふくろうくんは、優しさと不安に満ちていて、いつも何かを心配している。

 雪たちってきっと外を寒がっているんじゃないか。とか。
 一階にいる時には二階を確認できず、二階にいる時は一階を確認できない。とか。

 幼い私でもわかる「当たり前」なのに、その不安になる気持ちだけはすごくわかる。ふくろうくんもそうなんだーとちょっと安心する。

 どれも特に解決策はなくて、「こうやって今晩は過ごすか」ってふくろうくんがとりあえず落ち着くのも可愛い。

 アーノルド・ローベルの話って寝て終わるとか、ベッドでお布団かぶるとかのシーンが多いと思っていたら、「一晩寝ちゃえば良い」の精神が彼の中にあったらしい。病気がちだったのも関係しているかもしれない。

 「ふくろうくん」の最後は、月がついてくるように感じる話。歩きながらどうしてついてくるのと不安に感じてそのうち怒ってしまったら、偶然雲に隠れる。月と「うまくいかなくなった」とすっかり落ち込んでいると、月がまた雲から顔を出したのが寝室から見える。
 「Owl did not feel sad at all」で終わるところに、アーノルド・ローベルの可愛さや優しさが表れている。


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*2023年8月25日追記
昨年書いたものですが、メディアパルさんの企画に参加して紹介します。

#わたしが一緒に育ったロングセラー絵本



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