#中島敦
「木乃伊」中島敦著(ちくま文庫『中島敦全集1』所収):図書館司書の短編小説紹介
波斯王が埃及に侵攻した時、武将の一人であるパリスカスの様子に異常が見えた。
「見慣れぬ周囲の風物を特別不思議そうな眼付で眺めては、何か落着かぬ不安げな表情で考え込んでい」たという。
彼は、「今迄に一度も埃及に足を踏入れたこともなく、埃及人と交際を持ったことも」ないのに、埃及軍の捕虜たちが話す言葉の意味を分かるような気がするのだった。
波斯王は侵略を決定的なものとするために、埃及の先王ア
「名人伝」(新潮文庫『李陵・山月記』)中島敦著 :図書館司書の短編小説紹介
天下第一の弓の名人を志した紀昌。
彼は、当時の弓の名手・飛衛に弟子入りし、まず瞬きしないよう、目を鍛えることを命じられる。
一瞬かつ絶好の瞬間を見逃さないためかと思われるが、紀昌が選んだ修行場所というのは、妻の機織台の下。
そこに潜り込み、機織りの用具が激しく上下に往き来する所を至近距離で見つめ続け、それに怯まずにいられるようにしようと考えたのだ。
目を下ろすと、機織りの糸の下に瞬き