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読書記録「そして、バトンは渡された」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」文藝春秋 (2020) です!

・あらすじ
森宮優子は今年で高校3年生になるのだが、かれこれ4回名字が変わっている。だけど困ったことに、一度も不幸だと思ったことがない。

生みの親である両親と離れ、父の再婚相手である梨花さんと小学時代を過ごす。中学3年間を泉ケ原さんの家で過ごしたが、卒業と同時に森宮さんという梨花さんの再婚相手と過ごすことになる。

周りから見たら「親が何度も変わって可愛そう」と思われることが多かった。

だけど、優子自身親が変わることを困ったことはない。そもそも「血の繋がっていない自分を大切にしてくるれる」こと自体が、ありがたかった。

今の親である森宮さんは、東大出身で一流企業に勤めているものの、どこか抜けたところがある。高校3年生の始業式にカツ丼を用意したり、夏バテを危惧して餃子を大量に作ったりと。

だけど、森宮さんは優子が笑顔で成長していくことが、なによりも幸せであった。

梨花さんと結婚することが、高校生の優子を育てることでもあることを、重荷ではなく、なによりも幸せだとも考えていた。

どんな厄介なことが付いて回ったとしても、自分以外の未来に触れられる毎日を手放すなんて、俺は考えられない

同著 315-316 頁より抜粋

優子は様々な親に支えられて生きてきた。それは別れや辛いことももちろんあったし、愛情の形は様々だけれども、自分を大切に育ててくれたことは変わらない。

家族からのたくさんの愛情を注いでくれた優子。受験や最後の学校行事、友達や恋人との付き合い方に、子供時代の経験を思い出しつつ乗り越えていき、そして、バトンは渡されていく。

読書会で瀬尾まいこさんの本が紹介されたのをきっかけに、前々から気になっていた作品を紐解いた次第。

子どもは親を選べない。最近だと親ガチャという言葉があるように、親の教育方針や経済力は、少なからず子どもに影響を与える。

我が家の場合は、家族の仲が良い方だと思う。夕飯は必ず家族揃ってからだし、高校生にもなって家族旅行にも行く。男二人兄弟で、それらしい反抗期もなく、一度たりとも壁に穴が空いたことはない。

その上、親族付き合いが非常に強い方である。小さい頃は年上の従姉妹と遊んだり、一時期は職場が近いからと従兄弟が居候していた時もあった。今もグループラインで甥っ子・姪っ子の近況報告が絶えない。

私にとってはそれが当たり前であり、今の自分の考え方を作り上げているのは言うまでもない。

きっと優子にとっても、もちろん親との別れは辛いことではあるけれども、いちいち悲しんでいたら身が持たないし、強く生きようと思わずにはいられなかっただろう。

何より、優子にとっても幸せだったのは、優子の親になった人たちが、形は違えど、みんな愛情深く接してくれたことである。

以前見た動画の中に、血の繋がっていない子どもに対して差別する親を見かけたら、あなたはどうするかというものがあった。フィクションのような設定だが、ありえないことではないのだろう。

私自身、子どもを持ったこともなければ、養子を預かるなんて経験もないから、親の気持ちを理解することはできない。

だけれども、家族や次の世代を大切にすることの価値は分かる。

たまに会うと、いつの間にか大きくなっている姪っ子や甥っ子を見て、微力ではあっても守ってやらねばと思うものである。

まぁ私にできることは、宿題の読書感想文用の絵本を用意することぐらいしかできないのだけれども。

それはともかく、自分自身も親や親戚から愛情を注いでもらったからこそ、今こうして生きている。

だから私も同じように、愛情というバトンを、次の世代に渡していきたい。

当たり前だけれども、ふと忘れがちな大切なことを、そっと教えてくれるいい作品でした。それではまた次回!

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