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クリエイターになるための5つのステップ

こんにちは。交通技術ライターの川辺謙一です。

今回は私の専門である交通の話からちょっと外れて、「クリエイターになるための5つのステップ」という話を書きます。ここでいうクリエイターとは、私のようなライターだけでなく、イラストレーターや小説家、芸術家、音楽家、漫画家などのように、創作活動に携わる人のことを指します。

この記事が「これからクリエイターになりたい!」と考えている方のお役に少しでも立てば幸いです。

■なる確率を上げるための手段

まず結論から言います。

クリエイターという職業は、一般の会社員とくらべると、なるのがとても難しいです。もしなれたとしても、その業界で長く生き残っていくのは容易ではありません。

そのおもな理由は、以下の通りです。

・なるための方法が明確に決まっていない
・ライバルが多く、なれる確率が低い
・なったとしても、同業者とのきびしい競争を強いられる
・収入が不安定である(フリーランスの場合)
・常に技能や感性をアップデートしないと時代に取り残される
・年齢を重ねると、体力の衰えとともに創作意欲が低下しやすい

もちろん、それでもクリエイターになりたい方はいるでしょう。
そのような方のために、クリエイターになる確率を上げる方法をご紹介します。
その方法とは、以下の5つのステップを踏むことです。

(1)クリエイターになるという強い意志を持つ
(2)クリエイターが自分に適しているかを分析する
(3)「自分がやりたいこと」と「社会のニーズ」を合致させる方法を考える
(4)クリエイターを目指して行動し続ける
(5)周囲に反対されても行動を止めない

なお、この5つのステップは、あくまでもクリエイターに「なる確率を上げるための手段」であり、「確実になるための手段」ではありません。このため、クリエイターになることを保証するものではなく、あくまでも参考にしていただく考え方の一つとしてとらえていただければ幸いです。

■技術者からクリエイターへ

さて、これからこの5つのステップをそれぞれ説明しますが、その前に、かんたんに自己紹介をさせてください。

私はクリエイターの一人です。現在は組織に属さないフリーランスであり、「交通技術ライター」と称して、交通に関する難解な技術を一般向けに翻訳し、紹介する仕事をしています。なお、肩書きでは「ライター」と名乗っていますが、文章の執筆だけでなく、イラストの制作や、写真の撮影、企画の立案、絵本の監修などを手がけています。

クリエイターになる前は、メーカーの技術者として働いていました。厳密に言うと、大学院時代にイラストレーターとして出版界でデビューしたあとにメーカーに就職し、技術者とイラストレーターという二足のわらじを10年近く履いたあとに独立し、フリーランスとして現在までに18年間活動してきました。

現在「ライター」と名乗っているのは、フリーランスとして活動している間にライターとしての仕事が増え、活動のメインになったからです。これまでに書いた本は、海外で翻訳されたものもふくめて20冊以上あります。

つまり私は、技術者になってからクリエイターになっためずらしい人間なのです。

その経験でいうと、技術者になる方法とクリエイターになる方法は大きく異なります。

技術者になるためのステップはおおむね決まっています。私の場合は、大学や大学院で工学を学んだあと、化学メーカーに就職し、危険物取扱者などのさまざまな資格を取りながら、研究開発に携わってきました。つまり、大学などの教育機関で技術に関するある程度の専門知識や技能を学び、それを活かせる企業や研究施設に就職すれば、技術者になれるのです。

いっぽうクリエーターになるためのステップは、技術者とくらべると明確ではありません。もちろん、大学や専門学校で芸術を学ぶとか、その道のベテランの方を師事して修行を積むといったステップは存在します。ただ、「どうすれば一人前のプロフェッショナルとして働き、経済的にも自立できるようになるのか」という問いに対する明確な答えはない、と私は考えています。なぜならば、私はクリエイターになるための学校に入学したことはなく、誰かを師事したこともないからです。

■クリエイターになるための「工夫」

さて、ここで先ほどの5つのステップの話に戻りましょう。

(1)クリエイターになるという強い意志を持つ
(2)クリエイターが自分に適しているかを分析する
(3)「自分がやりたいこと」と「社会のニーズ」を合致させる方法を考える
(4)クリエイターになるために行動し続ける
(5)周囲に反対されても行動を止めない

(1)(2)(3)については、別の記事「夢の職業に就くための3つのステップ(ある車掌の場合)」とよく似ています。

ただし、車掌という業種は、クリエイターとは異なる部分が多々あります。車掌は鉄道事業者(鉄道会社)に属する職員(社員)であり、特殊なトレーニングを受けているという点では技術者に近く、個性が求められない職種だからです。

そこで今回は、対象となる職業をクリエイターに限定し、新たに(4)(5)を追加しました。

それでは5つのステップをそれぞれくわしく説明しましょう。

■強い意志を持つ

もしあなたがクリエイターになりたいと思うならば、高いハードルを越えなければなりません。もちろん、それをすぐに越えることはかなり難しいです。

そこでまず必要になるのが、(1)で紹介した「クリエイターになるという強い意志を持つ」ということです。なぜならば、強い意志がないと、高いハードルを越えるためのモチベーションを保てずに諦めてしまいますし、希望通りクリエイターになったときに後悔するからです。

どのような職業でも、ポジティブな面とネガティブな面があるので、希望する職業に就けたら、その両方を受け入れなければなりません。

このため、クリエイターに憧れてばかりいると、そのポジティブな面しか見えず、なれたときにネガティブな面に直面して失望することがあります。

このため、「どうしてもクリエイターになりたい」という強い意志を持ち、ネガティブな面も受け入れる覚悟をする必要があるのです。

■自己分析をする

ただし、たとえ強い意志を持てたとしても、自分がクリエイターに適しているとは限りません。なぜならば、「適材適所」という言葉があるように、われわれ人間には、それぞれ異なる適性や能力を持っており、それらに合った仕事を与えられないと、持っている実力を最大限に発揮できないからです。

そこで必要になるのが、(2)で挙げた「クリエイターが自分に適しているかを分析する」です。

もし、なりたいけれど自分に適さない職業に就くと、たいてい苦労します。

たとえば私は、後述する理由で当初技術者を目指して、それになりました。ただし、仕事をこなすうちに自分が技術者に向いていないことがわかりました。

それからは日々の仕事が苦痛になりました。また、仕事がハードで雰囲気が悪い職場に配属された結果、残業時間が長くなり、過度のストレスを受けて身体を壊しました。会社を辞めて独立したのは、このためです。

このような失敗を避けるには、自己分析を慎重にする必要があります。自分は何が得意で何が不得意なのか。それらを整理したうえで、クリエイターに対する適性があるのか、クリエイターとしての活動を通して社会に貢献できるかを冷静に判断する必要があります。

私のように一度身体を壊すと、回復に長い時間がかかり、限られた人生の時間の多くを無駄に消費してしまいます。これを避けるためにも、ぜひ自己分析を慎重にやってみてください。

■社会に貢献する方法を考える

もしあなた自身がクリエイターに適していると判断できたら、(3)に示した「『自分がやりたいこと』と『社会のニーズ』を合致させる方法を考える」をやってみてください。

なぜならば、「自分のやりたいこと」と「世間のニーズ」が合致しないと、その時点であなたはクリエイターになるのが難しくなるからです。つまり、自分だけでなく、他人もハッピーにすることで、互いにWin-Winの関係を構築できるかが問われるのです。

言い換えるならば、自分が何で社会に貢献をできるかをじっくりと考える必要があるのです。自分だけが満足することを考えて、希望通りの職業に就けるほど、世の中は甘くありません。

私の場合は、技術者だった経験を活かしつつ、身近な技術を一般に紹介することで、社会に貢献したいと考えました。なぜならば、難しいと思われがちな技術に関する情報を一般向けに翻訳して伝えるという行為に社会的なニーズがあると考えたからです。

そう考えた背景には、日本特有の状況にあります。

私は、ある科学教育に関する講演会を聴講し、日本は科学リテラシーが海外の主要先進国とくらべて低く、マスメディア関係者に大学の理系学部出身者が極端に少ないゆえ、科学や技術に関する誤った情報が広がりやすい傾向があることを知りました。つまり、この国では「一般の人」と「科学者・技術者」の間に大きな認識のギャップがあるのです。

これでは、科学者や技術者の努力は一般の人に理解されず、彼ら彼女らは報われません。また、科学や技術に関する誤った情報が広がることは、社会的に大きなマイナスとなります。

そこで私は、自分の得意分野や経験を活かしながら、このギャップを埋める活動を始め、微力ながら社会に貢献しようと考えました。独立から現在までフリーランスとして18年間活動を続けることができたのは、この考え方を変えなかったからではないかと自己分析しています。

■まずは「行動」あるのみ

もしあなたが自己分析で「クリエイターに適している」と判断できたならば、(4)で示した「クリエイターを目指して行動し続ける」をやってみてください。

なぜならば、クリエイターは、頭の中で考えているだけではなれないからです。

そこで必要になるのが、クリエイターになるために「行動」することです。「行動」しないと、何も始まらないからです。

なお「行動」すると、最初はたいていつまずきます。それでも気にする必要はありません。「行動」を繰り返していれば、だんだんつまずかなくなるからです。

ポイントは、「成果がすぐに出なくても行動し続けること」です。一定の成果を出すには長い時間がかかります。それに耐えられずに行動を止めてしまったら、それで終わりです。まさに「継続は力なり」です。

私の場合は、大学・大学院時代から出版社に作品を送ったり、出版社に出向いて自分の作品を見てもらうという「行動」をしていました。もちろん、相手にしてくれた編集者は優れた作品を日々見ているので、だいぶきびしいことを言われることも多々ありました(今ではそのことに感謝しています)。

そのような「行動」をしているうちに、ある雑誌でイラストレーターが必要になり、編集者が私に声をかけてくれました。だから私は、20代半ばで出版の世界に足を踏み入れることができたのです。

なお、出版社に企画などを売り込む「行動」は、今も続けています。なぜならば、クリエイターは、泳ぎ続けないと死んでしまうサメのように、「行動」し続けないと生き残れない職業だと考えているからです。

■反対されたらどうするか

最後に紹介するのは、(5)に示した「周囲に反対されても行動をやめない」ということです。

「クリエイターになりたい」という希望を他人に語って「行動」しようとすると、たいていそれを反対し、止めようとする人が現れます。そう言う人は「何をバカなことを言っているんだ」「そんなの無理だ」「もっと堅実な道を選べ」などと言い、クリエイターになることを諦めさせようとしてきます。

先ほども述べたように、クリエイターは、なることが難しいだけでなく、なれても得られる収入で生活できる保証はないので、そう言われても仕方ないかもしれません。

ただ、このような助言は、いっさい無視してOKです。なぜならば、このようなことを言う人の多くは、なりたい職業がとくになかったか、なりたい職業に就くために「行動」した経験がない人であり、参考にならないからです。

また、このような人たちの中には、身近な人が自分よりも大きな存在になるのを恐れ、その人の足を引っ張ろうとする人もいます。だから、こうした助言を無視して、どんどん「行動」を継続すればいいのです。

■親の助言を聞く「ふり」をする

ただし、このような助言をしてくる人が親の場合は、少々やっかいです。希望の職業に就くには、学費などの親の支援が必要になる場合が多いからです。

この場合に対応する方法があります。その一つが、親が納得するような堅実な道にとりあえず進み、並行してこっそりとクリエイターになるための「行動」を続けるという方法です。つまり、親に対して「あなたの助言に従って安全な道を歩いていますよ」と見せかけて、陰で自分が本当にやりたいことに突き進み、腕を磨き続けるのです。

小説家や漫画家、音楽家などのクリエーターとして活躍されている方の中には、実際にこの手法を利用した方がおられます。

かく言う私もそうです。東北大学という比較的メジャーな大学の工学部に入学し、大学院を経て大手化学メーカーに入社し、ブランド志向が強い親が期待する堅実な道を歩んでいる「ふり」をしました。その後に、いきなりリスクの高いクリエイターに転身し、自分の一番やりたかったことを職業にして、現在まで突進し続けながらきびしい生存競争のなかで生き残ってきました。

なお、これは20年以上前の話です。現在は、当時とくらべると大学や企業のあり方が大きく変わっており、「メジャーな大学や企業に入れば一生安泰」などという何の根拠もない神話はすでに崩れ、通用しなくなっています。このため、SNSなどのツールを使って個人で情報を発信し、マスメディア関係者に注目されることのほうが、認知度を上げ、プロのクリエイターになる上で重要になりつつあります。

■急がば回れ

ただ、先ほど紹介した「親が安心するような堅実な道を歩む」という手法そのものは、現在も通用すると思います。「急がば回れ」という言葉があるように、大回りでも確実で安全な道を歩いたほうが目標に近づきやすい場合もあるからです。

若いときは、クリエイターに憧れ、それになりたいと強く思えば思うほど、危うい「早道」を選びがちです。だからこそ、安全性を重視して、ちょっと「回り道」をすることも考えてもいいと思うのです。

この「回り道」は、作品の「隠し味」としてプラスに働くこともあります。

たとえば漫画の場合、以下のどちらの作品を読んでみたいと思いますか?

(A)幼いころから漫画家を目指し、美大や専門学校を経て漫画家になった人の作品
(B)事業で失敗し続け、紆余曲折を経て、独学で漫画を描くようになった人の作品

これについては、さまざまな意見があると思いますが、私個人はまず(B)を読みたいです

もちろん、画力においては専門的なトレーニングを受けた(A)の方が勝るでしょう。ただし、今は美大や専門学校に行かなくても絵が上手い人がたくさんいます。

いっぽう(B)は、漫画家自身が大きな「回り道」をした希少な存在なので、たとえ画力が高くなくても、その人が紡ぎ出す物語を読んでみたいと私は考えます。ただし、画力があまりにも低く、絵柄が受け入れられない場合は読みたいとは思いませんけどね(笑)。

みなさんは(A)と(B)、どちらの作品が読みたいですか?

さあ、ここまでは、私の経験を踏まえて、クリエイターになる確率を上げる方法として5つのステップを紹介してきました。繰り返しになりますが、この5つのステップは、あくまでもクリエイターに「なる確率を上げる方法」であり、「確実になる方法」ではないことをご了承ください。

今回の記事が、これからクリエイターになりたいと思う方にとって、少しでもお役に立てば幸いです。

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