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リワークを有効活用するために

メンタルヘルス不調者の120%の活躍につなげる活躍支援型メンタルヘルス対策において、リワーク等の利用は非常に重要な要素だと考えている。一方で、「リワークを利用しても、うまくいかないこともある」という話もよく聴く。これについて、私はリワークの活用の仕方の問題だと考える。今回は、リワークの有効活用についてお伝えしたい。

リワークにも限界がある

日本においては、うつ病リワーク協会が中心になってその精度向上や普及を行っており、具体的なエビデンスも積みあがってきており、利用することによる就業継続率の向上は、医学的な根拠に基づいて説明ができるレベルである。また、医療リワーク以外のリワークにおいても、明確なエビデンスとまでいかないが、レベルが上がってきており、メンタルヘルス不調者の復帰支援の質の向上に寄与している考える。
しかし、リワーク等においては、日々利用者と向き合い、互いに信頼関係を築いていきながら、本人にとって重要でより深い部分に踏み込んでいくが、本人の本当の課題を見出すには本人の協力が不可欠である。
また、本人自身が、リワーク等を利用する動機がなければ、どんなにすばらしいプログラムを提供しても、見につかない。
さらに、実際に本人が戻る職場や、生活環境をみることは難しいという限界もある。また、職リハリワークは、利用期間の制限もあり、本人や職場が求める到達点に達せられないこともある。
つまり、リワーク等の限界を理解し、そのうえで有効活用するという姿勢が重要だ。

利用前の動機付けをする

リワーク等を有効活用するためには、利用者自身の目的意識が重要である。一般社会におけるリワーク等の認知度はあまり高くなく、メンタルヘルス不調で休業する人でも、リワークという言葉をはじめて聞くという人は多い。いざリワーク等を利用したとしても、主治医や産業医等に勧められるがままに利用している場合が多い。場合によってはリワーク等のプログラムに通いさえすればよいと考えているケースもある。それでもほとんどのプログラムでは、利用者に対して新たな気づきやきっかけを与えてくれが、なぜ自分がリワーク等を利用するのか、何が課題で、どんな状態を目指しているのかを利用者本人が認識しているかどうかで、リワーク等で過ごす時間の価値が大きく変わってくる。
メンタルヘルス不調に至る背景には様々な要因があるが、再発のリスクをコントロールするには本人要因への対応は不可欠だと考える。だからこそ、利用者本人が本人要因に目を向けて、課題を見出し、その解決のためにリワーク等を利用してもらいたい。例え今回の休業の主な要因が本人以外にあったとしても、本人要因に目を向けて、リワーク等で取り組むことは必ず本人にとって価値のある時間になる。逆にリワーク等を利用しても利用者自身が本気で自分と向き合おうとしなければ、貴重な時間を浪費するだけである。
支援側としてリワーク等に送り出すなら、何が本人の課題なのか、そして何のためにいくのかを本人が理解し、明確な動機を持って利用できる状況を、作ってもらいたい。そして、復帰可否の判断の前に、送り出す時に、この課題や目的が達せられたかどうか確認していただきたい。課題や目的が明確であれば、きっとそれを達成することで、職場復帰後に安定した活躍が十分期待できる状態になっているはずだ。

会社として復帰可否を判断する

リワーク等では、一般的な労働現場を想定して復帰準備をしていくが、当然ながら職種や事業場によっては求められるレベルや内容は異なる。そして、本人が戻る職場の受け入れる姿勢や雰囲気もケースによって千差万別である。そのため、リワーク等のプログラムが修了できたことが、必ず職場で安定して働けることではない。やはりそこで重要なのは、会社や事業場として、職場復帰させられるかを判断するということである。ここで求められるのは、人を雇用しマネジメントする力であり、病気の診断や治療の能力ではない。「専門家ではないし、わからない」という人事や職位者が時々いるが、ここでやるべきことは、人事や職位の本来の役割そのものである。もちろん主治医や産業医等の専門職の意見を求めて然るべきだか、自分の会社や職場で目の前の人を安定的に働かせてられるかどうかを判断するのである。この姿勢がなければ、リワーク等でどんなにいいプログラムをうけても、真の意味で活かされない。会社が主体的にとりもうとすれば、不安があれば必要な情報を集めることも必要だろうし、振り返って判断自体の精度も確かめるようにもなる。そうすることが、リワーク等を有効活用することになる。

リワーク等を有効活用するために必要なことをお伝えした。リワーク等の利用はあくまで手段の一つであり、その目的を本人を含む関係者が理解し、それぞれが主体的に取り組むことが重要だ。
リワーク等に関わる関係者は日々支援の質の向上のために努力している。この貴重な資源を最大限活かすために、利用する側の姿勢も意識していきたい。


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<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 
日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」


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