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メンタルヘルス不調者が新しい一歩を踏み出すために

私は、メンタルヘルス不調になって休業した従業員が、体調を改善させ、職場に戻って活躍するために、仕組みづくりやそのための考え方についてお伝えをしている。メンタルヘルス不調になっても、適切な療養と治療、そして職場復帰に向けた準備ができれば、それまで以上に活躍できると信じているし、事実として、私が関わった多くの方がそれを実現している。
その中でも今回は、メンタルヘルス不調になった方が、活躍するために新しい一歩を踏み出すきっかけがどんなものかお伝えしたい。

等身大の自分

これは、必ずしもメンタルヘルス不調になった方に限らないことだが、精神的に大きなストレスを感じている人の多くが、等身大の自分を正確に把握していないことが多いと感じる。等身大の自分を把握していなければ、そこから成長したり、変わろうと思っても、なかなかうまくいかない。これから自分が行こうとしている場所があっても、今の自分がどこにいるのかが、明確でなければ、北にいくべきか、南に行くべきかもわからないし、どんな手段で行くかもわからないので、多くの努力は徒労に終わってしまう。そんなことがあるのか?と思われるかもしれないが、ありたい自分や、なりたくない自分のイメージが強いと、本当の自分とはかけ離れてします。特に周囲と比較できる場面では、本来の自分ではなく、他人と比較してこれくらいの状態でいるべきという思いが強くなる。例えば、「入社3年目ならこれができてあたりまえ」とか、「母親なら当然やるべき」などである。
このように、等身大の自分ではない自分が、今の自分だと思っていると、仕事や生活の中で、そのギャップを目の当たりにすると、大きな苦痛を感じる。そして、そのギャップを埋めようとして努力するが、そもそもスタートする場所が違うのでうまくいかず、さらに苦しむことになる。
また、社会でいきていれば、いやおうなしに、自分以外のものから今の自分を突き付けられることがある。しかも、それもまた正確なものではないことが多い。そして、等身大の自分を把握していなければ、自分以外から突き付けられる自分を受け止めることで、より自分がわからなくなり、苦しくなる。

なぜ、等身大の自分に目を向けられないのか

等身大の自分を把握していないことが、大きな苦痛につながることを述べたが、なぜ、等身大の自分を把握していないのか。
等身大の自分を把握していない人の中には、等身大の自分を把握していないこと自体を認識していない場合がある。自分のことは自分が一番把握していると思い、それを疑おうとしない。また、等身大ではない自分を、本当の自分だと思い込みたい人もいる。そして、等身大の自分を把握できていないことは自覚していても、等身大の自分を知ることを避ける人もいる。
等身大の自分を把握し、認めることに対して、人はついつい避けてしまう。等身大の自分を知ることは、「それ以外の可能性」を否定することになり、可能性という虚像によって自分を作ってきた人にとっては、それを受け入れることに勇気が必要なのだ。

等身大の自分は、そんなに悪くない

しかし、メンタルヘルス不調で苦しむ人の話を聴く中で、その方の等身大の自分を探求していくと、本人が心配するほど悪いものではない。そもそも、その人が、それまで生きてきて、今ここにいること自体に大きな価値がある。何もせず、成長もなく、生きることはあり得ない。それぞれの人には、それぞれ独自の生まれてきた価値があり、生まれ持った力がある。しかし、多くの場合、自分にとっての強みやその人のすばらしさを過小評価している。そして、他人や社会の軸で自分を評価し、等身大の自分を見逃している。もちろん、これから身に着けていく課題や、発展途上の能力もあるだろう。しかし、それも伸びしろだし、それが達成したらどんな人になるだろう
か。

等身大の自分を受け入れることが活躍につながる

多くの場合、等身大の自分に気づき、受け入れることができた人は、明らかに表情が変わる。未来の自分を描くこともできるし、何より他人がどうであろうと、職場や周囲の環境がどうであろうと、ぶれない姿がある。このよう状態になれば、きっとこれからも活躍できるだろう。



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合同会社活躍研究所では、企業向けに活躍型メンタルヘルス対策の導入支援を行っております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 
日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」


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