柏木

札幌のしがない人

柏木

札幌のしがない人

最近の記事

海石榴とも書く

 珍しいものを見たので備忘録。  椿が植わっている庭でのこと。親方に「一本、珍しい葉っぱのがあるんだよ」と言われ、のこのこついて行くと、これがあった。  どちらも一本の椿に生えているのだが、上は葉の先端がきゅっとしぼんでいて、下は葉の先端からさらに一枚葉が伸びている。  親方は当初病気か何かと思って調べたそうだが(虫がつくと葉が膨らんだり、一部分だけ千切られたりすることがある)、結局そういうわけではなかったようで、「ということはそういう品種なのかもなあ」と思ったまま長い期

    • お菓子のおともは大体コーヒー牛乳

       実家には、夕食後に必ず果物が出て、その後に大体みんなアイスを食べる、という習慣がある。アイスは、確か最初からではなかったと思うが、果物だけなら少なくとも30年は続いていると思う。  以前にも書いたが、母は料理が好きかつ栄養士の資格も持っているため、栄養学的な何かを考慮して果物を出しているのかな、と思っている。もしくは、コース?としてちゃんとデザートで締めたいのかもしれない。真意は聞いたことはない。  いずれにせよ、そんなわけで、一人暮らしの今でも果物を食べたいという欲求は出

      • 勢いって大事よ時には

         物事にはタイミングというものがあって、なんだか良くわからないけど、勢いと自問の絶妙なブレンドによって、普段の自分では思いもよらない行動を起こすことがたまにある。  十数年前、イギリスに行ってきた。一週間という超短期のホームステイ。仕事があったからそれくらいが休めるギリギリだったというのもあるが、三十代手前での初海外、しかも一人旅(というか勉強なのだが)、かつ資金的な問題もあって、一週間がとても丁度良かった。また上手い具合にそういうプランを見つけてしまったというのもある。

        • 廃都札幌探訪 ~大通公園~

           廃都札幌の中心部にあった場所。かつての市民の憩いの場、大通公園。今、その場所には巨大な樹木が立ち並び、森のようになっている。  長さ千五百メートル以上、幅百メートル程度、上空からみればほぼ長方形に縁どられたその森の両脇には、朽ち果てる、というよりは、新たな主である樹木草本にその身を明け渡した種々の建築物群が、崩れ、倒れ、傾きながらも蒼然と立ち並び、地盤沈下で崩落したのであろう数々の大穴(元々噴水が設置されていたそうだ)からは水の流れが見えている。豊平川から創成川へと大水が

        海石榴とも書く

          ホットパウンド!

           母は料理が得意だ。得意だし、好きなんだと思う。面倒くさがっているところを見たことがあまりない。  元々実家が商売をやっていて、親が忙しかったから良くご飯を作っていたそうだ。また大学では食品系のことを学んでいて、職場もそこらへんの知識を生かせるところ(研究所でもないのだけど、そんなような感じ)に就職した。醤油のこととか研究していたらしい。  だからと言ってイコール料理好きにはならないのだが、そういう素地があって、素養もあって、現在の母がいる。栄養士の免許も持っている。  私

          ホットパウンド!

          街路樹の花だって当たり前に香るのだ

           北海道は今、新緑の時期だ。  いや、ちょっと前からそうではあったが、夏?というくらい暑くなったかと思えば、ストーブが必要なくらい急に寒くなったりして、心情的にはそう言いづらかったもので。  ともかく、街中には緑があふれているし、札幌の背中を支える手稲山を望めば、にっこり微笑んでいる様子が見て取れる。  気温は上が二十度程度、下が十度程度。寒いのは朝方か夜なので、日中は寒くても十五度くらい。晴れていて、身体を動かしていればとても過ごしやすい。あと、運転をするのも気持ち良い。

          街路樹の花だって当たり前に香るのだ

          専門は樹木なので花はあまりわからない

           今、造園の仕事に就いている。  高校時代、あまり人と関わらず、頭で何かを考えるような仕事に就きたいなと考えていた。人前でしゃべったり何かをしたりすることは苦手だし、一人でコツコツと地味な作業をすることが好きだったからだ。それらを積み重ねていった上に成果が現れて、お金ももらえるなら、万々歳である。  念頭にあったのは研究者とか小説家とか。フィールドワーク等々外に出ることはあるにせよ、基本は頭を動かすことが第一。室内にこもって仕事することができる。  まあどんな仕事をするにし

          専門は樹木なので花はあまりわからない

          今もって変だったなと思う、女友達との出来事

           私には仲の良い女友達AとBがいる。高校時代からの付き合いで、何故だかウマがあって、良く三人で出かけたりしていた。男女女という、なんらか恋愛要素が生まれそうな構成ではあるが(まあ一度だけあったりなかったりしたが)、ずーっと本当にただの友達。大体なんでも話せる心強い異性の味方たちである。  今から十数年前、社会人になって数年目の頃。  Aは東京で働いていて同僚に彼氏がおり、Bには大学時代からの彼氏がいた。当時私には好きな人がいて二人に話を聞いてもらったりしていたが、彼女という

          今もって変だったなと思う、女友達との出来事

          『本買い』と『つんどく』の気持ち

           引越しを機に、持っていた本を半分くらい売ってしまった。  実家に残していると邪魔になる(と言われた)し、引越し先に持っていくには少々多すぎる。あと、確かにまあ、半分くらいの蔵書は、これから読み直す機会はあまりないかもしれない。  小学校時代からコツコツと集めていたマンガと小説ではあったが、思い切って、売ってしまったのだ。  そして一人暮らし先に持ってきたのは、残り半分の内の五分の一くらい。大体本棚一つ分。余白がないので、なるべく今の家では本を買わないようにしている。  電

          『本買い』と『つんどく』の気持ち

          アニラジを聴き始めて……何年だっけ?

           実家には昔からマンガと小説が大量にあった。父が好きだったからだ。どれも自分の世代よりは一つか二つ上の時代もので、学校の友達とは共有できない娯楽ではあったけど、少し大人なそれらの本を私は日々黙々と読んでいた。  小学校はもっぱらそれで、中学校からジャンプ等も読み出し、自分の趣味のマンガも買うようになって、高校では古本屋でマンガの立ち読みを五時間くらいするほどになった。  小説は少々お高かったこともあり、中学校までは家の蔵書と図書館を利用し、高校からは買うようになった。何を最

          アニラジを聴き始めて……何年だっけ?

          川のそばに住んでいること

          三十九まで実家に住んでいた。 色々理由はあるが、一番は経済的なもの。仕事はしていたが給料は安かった。仕事を変えた今も安い。 それはまあどうでも良くて、今は川のそばで一人暮らしをしている。 川のそばが良くてこの場所を選んだわけではないが、結果的に自分らしい選択になった。 昔から水辺に惹かれるものがあった。 実家も比較的海の近くだったが、多分、良く行っていた祖母の家が海の街にあったから、というのが一番の理由な気がしている。 小さかった頃、母と姉と、電車に揺られて祖母の家に遊び

          川のそばに住んでいること

          思い立ったときに思い出したこと

          昔、たまに見ていた悪夢があった。 正確に言えば全く悪夢ではなくむしろ幸せな夢と言えるのかもしれないけど、実際それは悪夢なのである。 高校の頃、仲の良い女の子がいた。私は彼女のことが好きで、いつか告白して付き合いたいと思っていた。嘘である。好いていたが告白できるほどの勇気は持ち合わせていなかった。仲が良かったのは本当だ。 でも、その子とは疎遠になってしまった。言葉を選ばずに言えば、嫌われたのだ。いや呆れられたというべきか。 なぜそうなったのか、事件について詳細は語らない。

          思い立ったときに思い出したこと