専門は樹木なので花はあまりわからない

 今、造園の仕事に就いている。



 高校時代、あまり人と関わらず、頭で何かを考えるような仕事に就きたいなと考えていた。人前でしゃべったり何かをしたりすることは苦手だし、一人でコツコツと地味な作業をすることが好きだったからだ。それらを積み重ねていった上に成果が現れて、お金ももらえるなら、万々歳である。
 念頭にあったのは研究者とか小説家とか。フィールドワーク等々外に出ることはあるにせよ、基本は頭を動かすことが第一。室内にこもって仕事することができる。
 まあどんな仕事をするにしろ、人と関わらない、ということはあり得ないのだが、昔の自分は、それが極力少ない仕事を望んでいた。

 ちなみに、子どもの頃からずっと、外に出たり運動したりすることは好きである。陽の光を浴びて汗をかくのは気持ち良い。
 ただ、こと仕事と考えると、日がな一日机の前でも構わないし、それを一人でできるならさらに良い。(これについては、今も半分くらいはそう思っている)

 閑話休題。

 大学に進学し、しかし大学院を休学後に中退したときは、少なくとも研究者は向いてないと悟った。私が学んでいたのは社会心理学の系統。進学後に同じ研究室の先輩や同期を見て、自分の頭は、新しい知見やそれを応用した何かを生み出すようにはできていないなと思い知ったのだ。内部進学だからそんなことわかっていろよ、と言われればそれまでだが、本当に、そのときになって急に理解した。気付くのが遅い。
 院を中退後、運良くすぐに仕事が決まり、サラリーマン、とは違うが机の上で仕事をする職業に就いた。音楽関係の仕事だ。演奏する方ではなく、企画する方。非常に楽しかった。
 楽しかったが、思うところがあり再び大学生となって、卒業後に就いたのはスポーツマネジメントのベンチャー。これもまあイベントを企画する方である。

 最初の仕事は三年弱。学生を三年。次の仕事は五年。
 そこに至ってようやく、自分は机の前ではなく、物の前に立って手を動かすのが向いているのだとわかった。企画者ではなく、職人のような生き方が好きなのだと。

 丁度コロナが流行り始めた頃、私は前の仕事を辞め、今の造園の仕事についた。もちろん、代理人とか営業ではなく、庭師として勤めている。
 最初に思っていた、いわゆるガーデナーのような仕事ばかりではないし、植物に向き合うのと同じくらい、人と関わってばかりの毎日だけれど、私は今の仕事にとても満足している。

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