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短編小説たち

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書いてきた、短編小説たちです。
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2020年4月の記事一覧

短編【灰色】

私は山を中心とした街にいて、案内をしてもらっていた。

「素晴らしいところでしょう。」

案内してくれたイクタサトシさんはいった。

市の職員だったか…

そんな感じだったと思う。

タクシーの運転手ではないことは確かだ。

「はい、なんだか甘い匂いもします。」

車に揺られ、一日の案内だった。

「そろそろ終わりの時間です。そういえば、どちらから来られたんでしたっけ?」

もう一人、後ろに乗って

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短編【どうでもよい。】

短編【どうでもよい。】

「このアイデアはボツだな。」

最終決定目前で、今回のアイデアもボツになった。

いったい自分たちが何を目指していたのかすらも、霞んでぼやけてきて、怪しくなった。

「アイデア」

アイデアとは今までに見たこともないことを思いつく、幻想的で選ばれた人だけの特殊な才能のような発想のことではない。

アイデアは、あくまでその人の頭で生まれたものが、つまり、内にある既存のものが外気と衝突しあって、新鮮で

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短編【ある日常】

短編【ある日常】

昨晩、テレビ番組を見ていた。
おいしい食事を紹介する番組だった。
いろんな食事の中で、私が特に記憶に残ったのはランチだった。
650円のミニバンランチ。
なぜだかは説明できない。しかし、そのランチに惹かれたという事実は確かだ。

翌日私は仕事だった。
午前のアルバイトが終わってお昼休憩の時、ふとよぎったのは、昨日記憶に残したランチだ。
当然、テレビ番組で作られた架空のランチだから、同じものがあるは

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短編《批判おじさん》

「でも行動してみないとわからないけどね。」

私はこの意見に、異議を申し立てる。

特に、聞き手がこの発言をするのは、相手のことを思いやっていると、自分が思いたいためだけの発言だ。

実に嘆かわしい。

そして良い人を演じるのが上手い話手は、許可されて聞き手に話しているはずなのに、いつのまにか「そうですよね」とか「貴方の言う通り」だとか、賛同してあげなくてはならなくなる。

どちらが聞き手でどちら

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