マガジンのカバー画像

美術展観賞記録

44
展覧会に行ったときの感想文。Instagramに投稿しているものと基本的には同内容です。
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

【画像11枚】「法然と極楽浄土」(東京国立博物館)

【画像11枚】「法然と極楽浄土」(東京国立博物館)

 法然は平安末期から鎌倉初期にかけて活動した浄土宗の開祖。ざっくり言えば「南無阿弥陀仏」と念仏を唱え続けることで、極楽浄土に往生できると法然は説きました。密教などと比べると簡略化された印象もありますが(弟子の中にも、都合良く拡大解釈する向きもあったようです)、その背景には末法の世の中、そしてより多くの人々を救いたいと考えた法然の考え方があります。
 ちなみに法然は地方武家の子で、夜襲により父を亡く

もっとみる
【画像15枚】李晶玉個展「アナロジー:三つのくにづくりについて」(N&A Art SITE)

【画像15枚】李晶玉個展「アナロジー:三つのくにづくりについて」(N&A Art SITE)

 昨年川越で開催していた「神話#2」(NANAWATA)の延長とのこと。私がコロナ感染したりして、「神話#2」の展示を観ていなくて色々アレですが、日本・韓国・北朝鮮にまつわる建国神話を取り扱った内容だったかと伺っております。今回もその時の作品が展示されている様子。

 一つの国につき、併置されるのは三つの作品。日本を例にとると、最初に展示されるのは鉛筆画による天岩戸。次に、少し大きめのカンバスに国

もっとみる
【画像6枚+α】「ライトアップ木島櫻谷」(泉屋博古館東京)

【画像6枚+α】「ライトアップ木島櫻谷」(泉屋博古館東京)

 三つあるうちの、最初の展示室1がとにかく美しい。

 そこには5点ほどの屏風と水墨画掛軸(今尾景年《深山懸瀑図》)、写真撮影に関するパネル、あとはベンチが2つあるのみですが、そのベンチに座って、この後の作品や予定も一旦かなぐり捨て、腰を据えて長居したくなるような雰囲気があります。強いて言うならベンチをもう少し入口近くに置き、5点の屏風を眼中に収められる位置にしてほしかったぐらい、完成度の高い展示

もっとみる
「浮世絵の別嬪さん - 歌麿、北斎が描いた春画とともに」(大倉集古館)

「浮世絵の別嬪さん - 歌麿、北斎が描いた春画とともに」(大倉集古館)

 タイトルにはありませんが、今回は肉筆オンリーの展覧会。個人的に版画のほうはたくさん観る機会があるのですが、肉筆のみの展覧会というのは地味に初めてかもしれません。春画の展示は3フロアあるうちの、地下1階のみ。中学生以下(入場無料)は地下1階はご遠慮を、ということでしたが、春画無しでも十二分に楽しめる展覧会です。

 通常の浮世絵(多色多摺の錦絵)は版元が企画を立案し、それをもとに絵師が絵を書き、彫

もっとみる
【画像24枚】「平野杏子展 -生きるために描きつづけて」(平塚市美術館)

【画像24枚】「平野杏子展 -生きるために描きつづけて」(平塚市美術館)

 子育て等の悪夢から見たきっかけに具象絵画から抽象絵画へと進み、そこから更に仏教芸術の要素をミックスするなど、複数回にわたる作風の変遷を繰り返した平野杏子。抽象画と仏教芸術のミックスはポップアートのようなコラージュ調でもあり、一方で構図に対する関心も伺えます。

 卵や目玉などのモチーフを描きつつも、後期に入るとブランクーシ?な抽象彫刻もあり点描もあり民藝調もあり…自分の感情に正直に、描きたいもの

もっとみる
【写真35枚】「ここは未来のアーティストが眠る場所となりえてきたか?」(国立西洋美術館)

【写真35枚】「ここは未来のアーティストが眠る場所となりえてきたか?」(国立西洋美術館)

 西洋美術館にとって初めてとなる現代芸術展。しかし、西美の礎となる「松方コレクション」を収集した松方幸次郎はそもそも、若い芸術家達に"本物"の芸術を見せてあげようと意図したと言われております。その"本物"の芸術に触れた芸術家たちは果たして西洋の名作と比肩する作品をものにできているのか、今回の開催はむしろ自然な流れと言えるのかも知れません。

 今回の展覧会はアーティゾンの行う「ジャム・セッション」

もっとみる
「ブランクーシ 本質を象る」(アーティゾン美術館)

「ブランクーシ 本質を象る」(アーティゾン美術館)

 思えば私が美術のことを勉強し始めた時、そのときに初めて知った名前の一つが今回のブランクーシ。いわゆる抽象彫刻ということもあり、手がかりの乏しさを感じる人もいるかもしれません。
 写実彫刻をやっていた頃はロダンに傾倒し、そのロダンに激賞されるほどの腕前だったそうですが、「大木の下ではなにも育たない」と言い、ロダンの影響下を離れ、独自の道を歩むことになります。それは単純なフォルムかつ、石や金属といっ

もっとみる