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御伽怪談

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昔の実話怪談に基づいた、お伽話のようなオリジナル小説です。各々原稿用紙16枚です。第一集は、江戸に広がる猫のお話が中心です。
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#恐怖

御伽怪談について

 はじめまして。播磨陰陽師の尾畑雁多です。大阪文学学校で小説を学んでいます。  御伽怪談…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第三集・第七話「唐津の水妖怪」

  一  正徳(1711)の頃のことである。九州は唐津の城の裏壕に化け物が出ると噂されて…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第三集・第六話「闇を裂く産女」

  一  貞享四年(1687年)のことであった。京の西の岡あたりに、この二、三夜、不思議な声…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第三集・第五話「背中を流す女」

  一  江戸時代に最も有名な有馬温泉は今でもある。延宝五年(1677)のこと。その頃の…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第三集・第三話「肝試しの代償」

  一  寛永の頃(1624)のことである。京に住む町人たちが頭を寄せ合い、知恵を絞り、…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第三集・第二話「首之番が来た」

  一  天下分け目の関ヶ原の戦乱もすでに終わり、徳川様の時代となって、のんびりとした平…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第三集・第一話「戻り橋の魔物」

  一  室町時代、六代将軍・義教卿の頃のことである。戻り橋のあたりに怖ろしい化け物が出るとの噂が流れていた。もちろん、どのような化け物なのか見た者はなかった。ただ噂ばかりが先行して怖ろしげな尾ひれがついてゆくだけである。  そんな時、都に播磨守の配下と申す名のある武士がいた。彼のことは宣善とだけ呼んでおこう。宣善は世を虚しく思い退屈していた。洛中で無意味な日々を過ごしていたのである。  そんなある日、化け物の噂を耳にして、さっそく下男を呼びつけた。 「太郎冠者、戻り橋に化

御伽怪談第二集・第九話「落ちた涙の先」

  一  さぁ、いらはい、いらはい。皆さま方、可愛そうなのはこの子にござる。親の因果が子…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第二集・第八話「飯炊きの名人」

  一  女もしたる、ろくろ首と申すものを、男もしてみんとて……ではなけれども、その多く…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第二集・第七話「かぶりつく首」

  一  越前の国・敦賀に、原仁右衛門と言うサムライが住んでいた。彼は『北窓瑣談』の著者…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第二集・第六話「夜中に伸びる」

 世に、ろくろ首と言われるものは、ある種の奇病である。あるいは、これを〈飛頭蛮〉と称し、…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第ニ集・第五話「不名誉な噂〈後編〉」

  五  次郎兵衛の友人・秀吉が、いきなり叫んだ。 「それは、いってぇ、どう言う了簡だぁ…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第二集・第四話「ケラケラ笑う」

  一  歌舞伎なんぞで幽霊の出る時は、ドロンドロン・ドロドロドロと太鼓が鳴り響き、奈落…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第二集・第三話「抜け首の悪事」

  一  昔から、世に〈ろくろ首〉なるものが語り継がれているが、ハッキリ見たと言う者もない。『太平広記』、『酉陽雑俎』、『異物志』などにも書いてあり、また、『本草綱目』には飛頭蛮と呼ばれる抜け首だと書いてある。  ろくろ首の者は頭に傷跡があって、夜になると傷が疼くようになり、首が抜けると言う。体から離れた首は川岸などへ飛んで、蟹やミミズなどを喰い、やがて明け方には元の体に帰る。多くは女のなる病とされている。しかし、まさしくろくろ首を見たと言う者が聞き伝える話はそれとは少し違