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Leon akasakaオープンに寄せて

こんにちは。代官山「割烹TAJIMA」の田島和彦です。
以前、記事ではコロナ禍で豊洲を救いたいという意図でたくさんの鮮魚や青果を買ったことについてnoteをいくつか書いていましたが、実はこのコロナ禍で新店を赤坂にオープンしました。

赤坂にオープンしたのは日本料理の割烹ではなくLeon akasakaというイタリアンです。この時期にお店を準備するのはかなり勇気がいることだったし、不安も沢山ありましたが思い切ってやりました。その背景や思いなどを書いてみようと思います。

Leonの名前の由来は僕とシェフの溝尾が同じ獅子座というところから。お店のロゴデザインもそれをモチーフに作りました。

TAJIMAの経験


以前にこのnoteでも触れましたが、僕は31歳で初めてお店を持ちました。日本料理の料理人は、僕の肌感だと30代後半以降になってから自分のお店を持つように思います。30代前半という若さで居酒屋ではなく高級和食のお店をフルスケルトン(めっちゃお金かかる)で開くのはけっこうイカれてると周りからは言われました。

実際年齢がいってからお店を開く人が多いのは、日本料理のようなオーソドックスなカテゴリに対してお金を払えるお客さんが30歳そこそこのシェフにはなかなかついてくれないという側面があるかもしれません。僕も最初はお客さんが全然つかず、超かっこいいお店になったのに全然人が来ないというかなり苦しい時期がありました。でもそのタイミングで僕のことを気に入って助けてくれたお客さんは今でも超がつく程の常連になってくれていたり、ビジネスでもつながっていたりして本当に代官山の「割烹TAJIMA」を開いてよかったと思っています。若いお客さんも多く、TAJIMAは他の高級和食店とはかなり違った雰囲気になっていると思います。

2店舗めをやりたい気持ちとできない現実

この割烹TAJIMAを苦労しながらも作った経験が、1店目をオープンしてたった3年、僕もまだ34歳、1店舗目の借金もまだあるのに新しいチャレンジをしようという気持ちにさせたのかもしれません。

コロナ禍で人出が減り、閉塞感のあった豊洲市場を盛り上げる為に爆買いしてEC販売したことも皆さんに「おもしろい事をするやつ」という認識を持ってもらえたように感じます。そんな中で沸々となにかおもしろい挑戦をしたくなったというのも本音です。

ウニを100箱一度に爆買い。3か月で累計1,000箱を超えました

元々、コロナが本格化する前の時期(2020年1月~3月の間)から2店舗目の計画はありました。物件を探しはじめたタイミングでコロナが本格化し、オープンは叶わず1年以上持ち越しになっていたというのもあります。当たり前ですが、その後お客さんが来られなくなり、とても2店目を考えられるような経営状況でもなくなっていってしまいました。

2点目は僕の専門学校のときの同級生の溝尾にまかせようと彼を口説き、務めていたレストランを辞めさせ、準備に入っていた中でのことです。もともとは彼が店を辞めて数カ月後に新店をオープンさせる計画だったので彼への申し訳無さもあり本当に辛かったです。

コロナはまだ全く落ち着いていませんが、補助金が見えてきたり、徐々に営業を再開したり、コロナ禍で始めたECや固定のお客さんのおかげで多少キャッシュも回るようになったりという中で攻めることに決めました。幸い物件は最高のものが見つかり、内装も友人の紹介で出会った最高のデザイナーさんのおかげでかなりかっこいいお店が出来ました。

外観
(photo by NORIHITO YAMAUCHI)

天高があり、開放感のある空間。キッチンが見えやすいようにというのもこだわりました。
(photo by NORIHITO YAMAUCHI)

Leon akasakaのシェフ溝尾について

専門学校からの友人でもある溝尾はイタリアンの料理人です。19歳の頃からですが、こんなに長く付き合っている友達はほぼ彼だけです。昔から「いつか一緒にお店をやろう」という話をしていたので今回やっと一緒にやることができて本当に嬉しいです。

左:田島 右:溝尾

溝尾はイタリアンのシェフですが、せっかく僕の会社にJOINしてもらってTAJIMAに続く2店舗目を出すなら日本料理とのつながりの見えるイタリアンにしたいというのが当初から話していたことです。昔から「和食とイタリアンの両方が食べられるお店なんて面白いよね」とも話していました。

メインが肉になりがちなイタリアンでは高級和食店で使うような魚はなかなか使いませんし、普段使わなければ市場の仕入れにも影響します。割烹TAJIMAでは普段から質の良い鮮魚を信頼出来る仲買さんから仕入れているため、僕なら日本料理屋で出すレベルの魚をイタリアンに持っていくことが出来ます。高級魚の骨を使ってブロード(和食でいうところの出汁)をとることも出来るので僕ら和食では捨ててしまうような魚の骨から最高においしい旨味を引き出したパスタが作れたりします。

割烹TAJIMAで作ったカラスミをたっぷり使った
「究極のカラスミペペロンチーノ」
めちゃくちゃ好評です。是非頼んでみてください。

そのため、多少腰掛けになってしまうかもしれないけれども、日本料理の経験を積んでもらうため、代官山の割烹TAJIMAにも立ってもらっていました。彼とは「数ヶ月」の約束で割烹TAJIMAで働いてもらっていましたが、それが1年を超え、いまではすっかり和食も扱えるハイブリッドシェフになっています。

溝尾に次いでJOINした溝尾の後輩であるたくやも鱧の骨切りができるイタリアンのシェフになりました。なかなかそんなやついないと思います。先日赤坂のお店で鱧のフリットを提供し、とても喜んでいただけました。

2店舗目を開いてみて

2店舗目をやってみて感じるのは、僕の見られ方が大きく変わったということです。1店舗だけだと普通のオーナーシェフというみられ方でしたが、2店舗目をやる事で急に「経営者」という見られ方になりました。

お客さんに紹介してもらう時、「オーナーの田島さんです」と言われる事が多くなり、ある種商売しやすくなった側面も感じます。一方で贔屓にしてくれているお客さんたちと比べると自分にはまだ経営者と言えるほどの実績もないので気恥ずかしくもありますが…。

Leonの場所(赤坂)について

代官山の割烹TAJIMAのときもそうでしたが、僕は物件をみてイメージで惚れてしまうところがあるようです。赤坂という場所は最初は全く考えていなかったのですが、たまたま不動産屋さんに勧められて見に行ってみたらその瞬間に完成したお店のイメージが見えてしまったというのが赤坂に決めた理由です。

いざオープンしてみたら年齢層、周りのお店、立地等かなり気に入っています。物件は中々選べないのでフィーリングが大事だというのが代官山のときの学びなので即決めてしまいました。

居ぬき物件でしたが、こだわりを入れていったら結局全改装に近い工事になって、がらりと雰囲気が変わりました。中途半端な改装だと僕の勢いを感じでもらえないと思って予算ギリギリまで突っ込んでこだわり抜きました。

高い天井とライブ感のあるキッチンのイメージが僕の中にはあったのでキッチンの囲いをぶち抜いて、見通しの良い空間になっていると思います。

Before

ぼくはこの時点でけっこう完成のイメージはつかめていました。

After
(photo by NORIHITO YAMAUCHI)

完成イメージよりもいい空間が作れてしまった

とにかくかっこよくて、紹介したくなる店にしたかったです。友人の紹介からイメージをしっかり具現化してくれる同年代のデザイナーさん、施工会社さんとの運命的な出会いがありとても良い空間を作ることが出来たと思います。内装をデザインしてくれたのはULTRA STUDIOさん。
仕事もめちゃくちゃ早いし、色々と僕の意図を汲み取ってくれて最高でした。

オープン時には昔からの仲間や懇意にしてくれている会社関係者の方々からお花やお祝いが沢山届いたり、沢山のお客さんをこの状況でも呼んでもらえてとても感謝しています。同時に大変だったけどなんとかオープンしてよかったなと心から思っています。

お金は全然足りなかったし、銀行もなかなか動きが遅いし、結局お金は貸してくれないし、という逆境のなかサポートしてくれた人もいたりしてなんとかオープンできました。

将来的な展開

今回イタリアンをやるにあたってこれまで僕の個人事業として飲食店をやっていましたが、株式会社BAMFという会社を立ち上げました。

経営者として見られることが多くなったこともあり、「この先どうするの?」というのもよく聞かれるようになってきましたし、会社も立ち上げたことで視野が広がり、自分でも色々考えてみる機会が増えました。

その中でいまは2つやっていきたいことがあります。

①飲食での多業種展開

和食、イタリアンとやってみて感じたのは横展開することでの効率化が確実にあるということです。市場で食材を買う量が増え、僕が買うのは高級食材が多いこともあり、市場の人からの僕に対する目線も変わっています。

また、お客さんが僕のことを気に入ってくれていても毎回同じ店だと飽きてしまいます。今だと「今日は代官山で!」「次回は赤坂で!」というように一人のお客様の来店頻度が上がってきているのを感じます。

フレンチ、鮨、焼肉なんかは是非トライしてみたいです。実際、焼肉屋をやりたいというオファーももらってるのですぐではないですが、検討していきたいと思っています。

②社内独立など料理人が自立できる仕組みを作りたい

まだ自分の店もうまくいききってないのに生意気ですが、料理人がちゃんと食っていけるような環境をしっかり作る必要があるというのを感じています。正直、料理人は独立しないとなかなか稼げる仕事ではありません。お店の経営をしてみて感じるのは経営センスと料理センスは全くの別物です。そして料理人だけをやりながら経営ができるようになるのはかなり難しいと感じます。僕の会社では、できればそこの感覚をつかめるようになるプログラムや独立したくなったときの支援体制などは今後用意していきたいと思っています。

背景には僕も無茶苦茶苦労したけど、苦労する必要のないところでも苦労しました。そのあたりは無駄だし、少しでも減らしたい。また、日本の料理人のリアルを知ってしまうと目指す人が減るかもしれません。僕はアメリカで色々なシェフの形があることを知れたし、少しだけ視野を広く持てている気がするので日本でも多様な料理人の形を浸透させる一助となれたらうれしいです。

Leonに来るには

知り合いなら当然僕に連絡してくれてもいいし、気になったら是非お店に電話してみてください。

基本はコースで、アミューズからパスタまでの計7品で6,000円です。たとえば今のメニューだと。

・ゴールドラッシュの冷製ポタージュ

・水ダコと青唐辛子、厚岸の岩牡蠣、鮮魚のカルパッチョ

・スルメイカとインカのめざめのソテー

・余市のさくらんぼとフルーツトマトの冷製カッペリーニ

・真鯛のポワレ、万願寺唐辛子のグリル

・鴨肉のロースト、2色のアグロドルチェソース

・ゴルゴンゾーラとンドゥカイヤのクリームソース パスタ

めっちゃお得感あると思います。

コース以外で2軒目としてつまみ出しつつ美味しいワインを飲んでもらうみたいな使い方も是非してほしいです。「今からいけますか?」みたいな連絡も是非!デートや会食などかなり使いやすいお店にできたと思いますし、何より味には自信あります。

実はパティシエもいるのでデザートやケーキなんかもできちゃいます。このあたりはまた今度!

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