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【小説】 白(シロ) もうひとつの世界  第22話

第22話

翌日、僕はアンナから聞いた通りにまたお店に来た。
リリーには止められたけれど、どうしても行きたいと言うと、リリーは「もう知らないっ」と言って飛んで行ってしまった。
きっとまた当分僕の前には現れてくれないだろう。
けれど、今の僕はもっと真実を追い求めたくて、リリーの事は追いかけなかった。
 
アンナの言っていた、地図を持っていた彼。という人には心当たりがあった。
きっと、オリバーだ。僕と一緒に森へと冒険に出掛けたメンバーの一人。
あの時も、彼が地図とその場所への情報を持っていた。
 
僕は、店に入ると辺りを見回した。アンナがすぐに駆け寄って来てくれたけれど、一目で僕は彼に気が付いた。アンナは予想通り、彼を指差して言った。
「あの人よ」
「ありがとう。ちょっと、声掛けてくる」
 
僕は彼に近寄り、一呼吸置いて話し掛けた。
「どうも。今、忙しいかな?」
彼は、冷たい目で僕を見た。
「……どうも。何か用ですか?」
「久しぶりだね。オリバー」
彼は益々、冷たい態度で僕に返した。
「初対面だと思いますけど」
彼の態度は冷たかったが、僕は揺らがなかった。
彼が僕に興味を示すのが分かっていたから。
「僕は、君の事を知っているよ。あの扉の事も。君のお父さんの事も」
その言葉を聞いて、オリバーの顔つきが変わった。

「父さんの事を……?」
「異世界へ繋がる扉。君の知らない情報を、僕は持っている。情報を交換しないか?」
「……名前は?」
「ジャンだ。君は、オリバーだろう? 僕は異世界から来た者で、異世界で君に会っている」
そう言うと、オリバーが僕に興味を示してくれたのが、彼の表情を見て分かった。
「……そこに掛けて。もう少し詳しく話してくれ」
僕は、ホッとしてアンナの方へと振り返り、アイコンタクトをした。アンナは笑顔で僕に応えた。

それからすぐにコーヒーが運ばれてきた。
「どうぞごゆっくり」そう言うアンナの目は、良かったね。と僕に言っている様だった。

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