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100年前のラーメンの味とは?? ラーメンを切り口に進化する食の世界を訪ね歩く。

いまや国民食となっている、みんな大好き「ラーメン」。

ヴィーガンラーメン、コオロギラーメン、電気チャーシュー、疲労回復ラーメンなどなど、実は今のラーメンはここまで進化していた! 最先端のラーメンや食にまつわる、あらゆる現場を徹底取材! ラーメンから食の未来も見えてくる。

新刊のラーメン・グルメエッセイ『「至極」のラーメン科学』より、
冒頭の「はじめに」後編を公開します。


【はじめに】後編

再現した浅草來々軒のラーメンは新横浜ラーメン博物館で食べることができる。
私はドラえもんの『自動販売タイムマシン』のエピソードが好きだ。お金を入れると設定した時代の商品が出てくる自動販売機の話である。
のび太がお父さんにタバコのおつかいを頼まれ、自動販売タイムマシンでタバコを買うと山ほど出てくる。昭和の初めの1箱10銭のタバコを買ったのだ。
のび太は悪知恵を働かせ、昔の安い鉛筆やキャラメル、チョコレートを買って友だちに売りさばく。小銭が入って気が大きくなったのび太は、自動販売タイムマシンで100年後のお菓子を買うのだ。そのお菓子は「うまい!!」「こんな味は初めてだ」「一つぶごとにじーんとしみる味」(同作)で、のび太はあまりのおいしさに泣きながら食べるのだが……というものだ。

未来は常に進んでいる。味もまたそうだろう。
今のラーメンを食べたら、明治の人たちは「うまい!!」「こんな味は初めてだ」「じーんとしみる味」と感涙極まり、今の味に慣れている私のような現代人が明治のラーメンを食べたら、パンチのない抜けた味に、まあ昔だから仕方ないねと思う、そういうものだろう。
だから100年前のラーメンと聞き、想像していたのは、病院の食堂で食べるダシが効いていない、薄味というより味のないマズいラーメンだった。
ご存じの方も多いだろうが、新横浜ラーメン博物館の地下には昭和の街並みが再現され、そこに招致された全国の有名ラーメン店が入れ替わりながら店を開けている。そのひとつに浅草來々軒が入っている。明治大正のインテリアをイメージしたレトロな内装に期待が高まる。
注文したのは『らうめん』。当時はそのような表記だったのだそうだ。
出てきたラーメンを食べて驚いた。これが100年前のラーメンだって?
無化調のシンプルなしょう油のスープはクセがなく、すんなりと喉を通る。麺は国産小麦のせいか柔らかく、吊しのあぶりチャーシューは素直においしい。
大変においしいのだが、このラーメン、本当に昔のラーメンか?
この数年、無化調、自家製麺、ダシは鶏と豚ガラと煮干しのミックスという淡麗しょう油味のラーメンが雑誌やネットのランキングで上位を占めている。胃に染み入るやさしいおいしさで、食べると体がホッとする。無駄のない洗練された味は、ラーメンという料理の頂点のひとつだろう。
驚いたことに100年前のラーメンの味は、そんなビフグルマンに選ばれる無化調しょう油ラーメンの味と同じだったのだ。ドラえもんもビックリである。
100年経って、ラーメンは原点に戻ったらしい。

今、環境問題やテクノロジーが食を変えようとしている。ラーメンも無縁ではいられないだろう。これから食の世界はどう変わっていくのか。
ラーメンを切り口に進化する食の世界を訪ね歩いてみた。
100年後、私たちの子どもたちは今の私たちと同じように浅草來々軒の『らうめん』を食べているだろうか?
それとも「こんな味は初めてだ」と私たちが食べたら、泣き出す、「至極」のラーメンを食べるのか。
SDGsからバーチャルリアリティまで、未来のラーメンの姿から、これからの食を探索したい。

参考:『お好み焼きの戦前史』(近代食文化研究会)

これが浅草來々軒の『らうめん』。浅草來々軒の営業日時はHPで確認を。
新横浜ラーメン博物館

https://www.raumen.co.jp

【サンプルページ】


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『「至極」のラーメンを科学する』
ページ数 200
判型 四六
定価 1,540円(税込)
ISBN:9784862556226
出版社 カンゼン
発売日 2021年12月10日


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