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VOL.19【 不満にはキリがある 】 --- どうして「売れない」のだろう?---

「ユーザーの「お小言」「不平」「不満」をよく聞いて、自ら反省して改善すれば売れなかったモノが売れるようになります。」と言うと「そりゃぁ、ごもっともですが、どうも、しっくり来ません。」と言い出す人も多い。
 
そういう人に「どうして、そう思うのですか?」と質問すると「ユーザーの不満なんて聞いていたらキリがない」と返事をしてくる。さらに「それは、どういうことですか?」と聞くと、こういう返事がかえってくる。

「ユーザーの数は数限りない。どこで、どんな人が、どんな不満を持っているかわからない。そんな不満を良く聞けというのは理想論であって、現実味のある話じゃない。」こういう返事をする人は、ほぼ全員同じ意見。
 
しかし、この「妄想」が大間違い。ユーザー、もしくはユーザーの候補となる人は、数の上では莫大な人数にはなる。ところが、実際に「お小言」「不平」「不満」を集めてみると、そうではないことが見えてくる。
 
実際、数のうえでは莫大でも「みんな似たような普通の人たちばかり」で「そこに十人の人がいれば、意見もまた十種類あるに違いない」と考えるほうが「事実と大きく隔たりがある」ことになる。
 
「売れないもの・売れない売場を、売れるようにする」という仕事に40年以上もたずさわっていると「お小言や、不満をトコトン集める」といったことを実際に実践した経験ぐらい、何度となくあるわけだ。
 
たとえば、500人のユーザーから「この売場で買わないのはなぜか?」ということを、店頭に立って「自分がマーケティング部の人間だ」と名刺を渡し、聞き取り調査などをしてみると実際のことが見えてくる。
 
「500名」のユーザーに「なぜ?」と聞くと「280名ほどのユーザー」が「ここがキライ」と同じことを言ったりする。そして「200名ほどのユーザー」が「そこがキライ」と、まったく同じことを言ったりする。
 
さらに「170名ほどのユーザー」が「あれがキライ」と同じことを言う。つまり、この「売場」は「3つのこと」を「みんな」が「嫌っている」だけで「十人十色」ではなく「十人1色」といった話でしかない。
 
ユーザーは「千差万別」ではない。本当に、ユーザーの「お小言」「不平」「不満」の収集を実践したら「本当だ」とびっくりするに違いない。直すべきことを「みんな」が直して欲しいと思っていることに過ぎないのだから。
 
ところが、この話をすると「会議で10人の社員に「何か良いアイデアはないか?」と意見を求めたら、10人が10人とも違うアイデアを出す。たった10人しかいないのに、こんなに意見が違う。100人いたらどうなるだろう?」

といったことを言い出す人が必ずいる。私たちが【錯覚】してしまうのは「十人十色」「蓼食う虫も好き好き」という言葉があるからかもしれない。10人10色、100人100色、1000人1000色と思ってしまうらしい。
 
実際、コンサルタントという立場で、こういう「10人の社員の方々の会議」にオブザーバーとして参加してみると、いろいろなことが見えてくる。正直言うと「売れる見込みのある企画」は、たったのひとつも出てこない。
 
「こうしたら、自分たちがラクできる」「もし、こういうものが売れたら自分たちが自慢できて気分が良い(絶対に売れないものを提案する人に限って)」「もし、こういう風に売れたら儲かりまくる(誰も欲しがらない)」
 
こういう「売れない企画」=「ユーザーが満足しない企画」「ユーザーの不満を払拭できない企画」「ユーザーのことを全く見ていない企画」といった「小学生のたられば ゴッコのようなもの」ばかりが登場する。
 
「業界ナンバーワンを目指す」といった「業界ウケ」しそうではあるけれども「ユーザーのことを、まるで視野に入れていない自慢したい企画」を、よくもまぁ、これだけ考えつくものだと、ある意味、感心しつつ呆れることになる。
 
私は、この考え方で、ビジネスノウハウに関する商業出版の執筆を、これまで10冊ほどしてきているわけだが「私の考え方」に賛同してくださる方が、世の中には、こんなに大勢いるものなのかと思ってしまうこともよくある。
 
こうやって考えるとユーザーがもっている不満の数など、実は「キリがない」のではなく「キリがある」と言い切れる。多くても、せいぜい15やそこらだ。それも特別難しい苦情や不満ではなく、しごく常識的で、ごもっともといえる不満ばかりだ。
 
「売上」というものは「ユーザーが買う」から成立する話。こちらは、あくまでも「商品を売って儲けている立場」であって、ユーザーが買わないなら「売れる」といった成果を得ることはできないわけだ。
 
売る側は「儲けさせていただいている立場」なのだから、購入するユーザーに歓んでいただけるものを、歓んでいただける形で提供しなければ「詐欺」や「泥棒」と同じようなことをやっていることになってしまう。
 
購入するユーザーが歓んでくだされば、また買ってくださる。再購入こそ「自業売上の柱」となる。そう考えれば「不満を聞いていたらキリがない」と考えるのは「横柄な手抜きでしかない」ことがハッキリしてくる。
 
身体も同じだ。「病気」から「普通の状態」になり「元気」になる。「病気」から一気に「元気」になることはない。「病気」なら、まず「普通の状態」にしていくことを考えて動かなければ本当には治らない。
 
これは「心が病んでいる人」でも同じだ。「心が病んでいる人」は「カウンセリング」を受けて「普通の状態」になり、そこから「コーチング」を受けて「活躍する状態」を作っていくことになる。
 
「心が病んでいる人」が「コーチング」を受けると、さらに心が病んで、疲れてツブレてしまうような話になる。これはビジネスでも同じだ。まず「ユーザーに不満がある」状態から「普通の状態」に持っていく。
 
「普通の状態」とは「ユーザーに不満がない状態のこと」だ。「ジャンジャン売れるようにする」のは「ユーザーに不満がない状態を作った後」の話になる。売れない状態から、一気にジャンジャン売れるようにはならない
 
ユーザーに不満がある限り、徹底的に、それこそ「しらみつぶし」に、不満を改善しまくり「普通の状態」=「不満のない状態」にしなければ、その自業はジリ貧になってしまうことは明白だ。
 
以前の投稿で松下幸之助氏のところへ苦情の手紙がよく来るという話を引用したが、これは、21世紀の今の時代「当たり前」になってしまっている。ECサイトで購入して不満なら遠慮なく星が少ないモンクのレビューを書く
 
この時代、たとえばオークションサイトであっても「モンクを放置している人」「改善できない人」が、ビジネスで成功しているといった例は、加速度的に減ってきているこの動きは、さらに加速することが明確になっている。

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