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VOL.11 【 売れない病の大流行 】 --- どうして「売れない」のだろう?---

売れ行きというのは「人気」というか「購買心理」というか、つかみどころのない心理によって左右されているもの。だから「人気」をつかまなければ販売に成功することは難しい。
 
私は、40年以上の「売れるのか?」「売れないのか?」という問題を自分のライフワークとして研究テーマにしてきた。この研究がスタートしたのは1980年ごろ。私が20歳を越えたころから。
 
40年以上「それで売れるのだろうか?」という問題に対して、人々がどのように反応するかを、ことこまかに観察し続けてきた。私の研究に興味を持つ人は、どちらかというとマニア的だ。
 
「研究すれば売れるかどうかはわかる」という、私の意見に共感する少数の人は、トコトン私のレポートを読み込む。しかし、多くの人はそうではない。どうやら「そんなもん わかるわけがない」と思っている人が大勢いるらしい。
 
多くの人は「それで売れるのか?」という問題に対して「興味」はあるものの、トコトン追求してやろうという人は少なく「それで売れるのか?」という問題に対して、実に未熟な考えの人が多いということになる。
 
「どうして売れないのだろう?」ということを人は疑問に思う。しかし、多くの人がは「なぜ売れないのか?」「どうすれば売れるのか?」という問題に対しては、実に「無防備である」といえるのかもしれない。
 
どれくらい「無防備」なのか? を確かめてみたいと思うのならば、そこらへんにいる人に、こう質問してみると良い。「それで売れると思いますか?」。この質問に答えられる人がいたら、尊敬に値すると思う。
 
実際に聞いて回ってみると、400人に1人ぐらいの人が「ここまで やっているから売れないワケがない」と答えられる。が、400人中「399人」が「そんなことは、わからない」と応える。
 
「売れるか売れないか?なんて わかるわけがない」というのが一般常識。この言葉こそ「売れない状態の実態」を象徴的に示している。こんな風に考えている人ばかりなのだから「売れないのは当たり前」という話になる。
 
「売れない」「売れない」と言う人は非常に多い。しかし「売れなくてもしかたがない商品」「売れなくてもしかたがない店」が多いのも事実だ。売れないと嘆く前に「売れている競合より売れる様にするために何をしたのか?」を反省しないと話は前に進まない。
 
「あそこばかりが売れている」「うちは売れていない」と「モンク」は言う。しかし「売れているところ」のリスペクトはしない。「自分のところ」は「売れない自分流でやる」その結果「売れない」・・・ 本当に、世の中、こういう人が増えていっている。
 
「売れない」ということは「買うだけの魅力がない」ということ。しかし「魅力がないのは、なぜだろう?」と考える人は、本当に少ない。だから、多くの商品、多くの店が、いつまで経っても売れないままの状態が続く。悪循環のポイントは3つ存在する。
 
1)売れない原因を「知らない」から。
 
2)魅力なんて「わからない」と「あきらめる」から。
 
3)買いたくなるか?買う人に「聞かない」から。

 
「なぜ売れないか?」という問題には、いつもこの「3つの原因」が存在する。どんな病気であっても「原因」がわからないと治療のしようがない。誤診をしてしまうと、危険な事態に陥ってしまう。
 
私は、小学校4年生の時に骨折してしまい1年ほど骨折を直す時間を費やした。たかが骨折で、なぜ1年もの時間がかかったのか? それは、運び込まれた救急病院に「まともな整形外科医」がいなかったからだ。
 
常勤の整形外科医が不在の、その救急病院で、当番でやってくる当番医が代わる代わる無責任に対応した結果、骨が曲がってつき、腕が真っ直ぐに伸びたり、きちんと曲がったりしなくなるという話になってしまった。
 
親が怒り心頭して、強引にその「やぶ病院」を退院し、別の整形外科医のところに連れて行ってくれた結果「もう一回 折ってつなぎ直せば元に戻る」という話になり、直りかけた骨を折ってつけ直すという治療を受けることになった。
 
その解き私は、虚しく過ぎ去った半年のことを思うと腹立たしくもあったが、元通りになれるという手がかりをつかんだ喜びは、大きなモノだった。しかし「売れない商品」「売れない店舗」の診断は、人間の病気やケガの診断より難しい。
 
人間には「治癒力」というものがある。病気を直すのは自分自身の治癒力に頼ることが大きい。だから、お医者さんは風邪などのときにはクスリを数日分出しておく。少しだけクスリのチカラを与えれば人間の治癒力で治ってしまうからだ。
 
ところが「売れない商品」「売れない店舗」「売れないセールスマン」が、自然に売れるようになるということは、まずない。売れない商品、売れない店舗は、放っておくと消えてなくなる。売れないセールスマンは、放っておくとリストラされてしまう。
 
本当の病気の原因をわからないまま病気を治そうとしても、治らないのは当然だ。だから原因をつかむこと=正しい診断が大切なのだが、もっともらしいことを言われると「そうかも」と思って、病気を悪化させてしまうようなことをしてしまうことにもなる。
 
そして、売れない商品を作り続けている人、売れない店舗を運営し続けている人、売れないセールスをし続けている人ほど「自己愛性パーソナリティ障害」の傾向が高い。自分は何も反省も改善も努力もしないまま、人のせいにしてしまうといった障害。
 
こういう人ほど、反省もできず、病気の原因を探そうともせず、売れているところをリスペクトしたりもできず、特に何をしているわけでもない状態であるにも関わらず、大きな声で「私はガンバっている」と言い張る傾向が高い。
 
そういう意味でも「なぜ売れないのか?」という問題は、個別に、ひとつずつ、丁寧に、じっくりと個々が掘り下げるべき重大な課題なのだ。しかしながら、相対的に、日本企業の場合「ムラ社会的」な文化が根付いているケースが多い。
 
「ムラ社会」的に「社内の団結」を重要視したがる。それは「社外との対話がヘタクソ」ということを意味している。つまり「なぜ売れないのか?」の原因を「ユーザーから聞く」ということがヘタという話。
 
いや、むしろ社外で批判や非難の言葉が出ることを嫌って、非難が出ていると、それを社内で揉み消してしまおうとするのが「企業人の美徳」とされていた文化さえ根付いてしまっている。これでは「病気」は絶対に治らない
 
病気を隠そうとすればするほど、その病状は深く重くなる一方だ。不幸にして、日本人は「なぜ売れないのか?」と問う習慣を、1世紀近く持たずにいた。大戦後の復興から長らく好景気が続いたし、縦社会の組織の中で議論することは好まれなかった
 
しかし、バブル崩壊後、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災、そして、今回のコロナ禍を経て「売れなければ生き残れない」という実感がドンドン迫ってくる時代になってしまっている。

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