マガジンのカバー画像

AIの夢見る夜は

10
短編小説です。 AI管理下の近未来都市で、芸術家として生きる蒔縞エレナ。孤独を抱えながらも、彼女は日々創作に励んでいた。 しかし、ある日を境に不可解な現象に見舞われる。歪む街の風…
運営しているクリエイター

2024年6月の記事一覧

【短編小説】AIの夢見る夜は 第3章:コードネーム:ニューロリンク

【短編小説】AIの夢見る夜は 第3章:コードネーム:ニューロリンク

第3章:コードネーム:ニューロリンク1:新たな出会い

芸術大学を卒業してから、私は都市の中心部にある小さなアパートに住んでいた。

この部屋は、私がひとつひとつこだわって選んだアンティークな家具やクラシカルな装飾品で満たされており、外のAIで管理された無機質な世界とは対照的だった。

窓の外には、ホログラフィ広告が絶え間なく点滅し、自動運転車が規則正しく行き交う。
そんな無機質な光景を背に、私は

もっとみる
【短編小説】AIの夢見る夜は 第2章:閉ざされた心

【短編小説】AIの夢見る夜は 第2章:閉ざされた心

第2章:閉ざされた心

1:歪んだ家族の肖像

私は最北東の小さな町で育った。
蒔縞家は代々事業を営み、父は四代目だった。古風な価値観を大切にする家で、幼い頃からクラシック音楽や文学に触れる環境が整っていた。

父は熱心な読書家で、書斎には古今東西の文学作品が所狭しと並んでいた。
夏目漱石の『こころ』や太宰治の『人間失格』といった日本文学の古典から、ドストエフスキーの『罪と罰』、カフカの『変身』と

もっとみる
【短編小説】AIの夢見る夜は 第1章:境界線上のエレナ

【短編小説】AIの夢見る夜は 第1章:境界線上のエレナ



第1章:境界線上のエレナ

1:AIの狭間で、私を生きる

私の名前は蒔縞エレナ(まきしま・えれな)。

純文学の小説家、そしてフランシス・ベーコンのような抽象画を描く芸術家だ。
このAIが完璧に管理する無機質な世界で、私はあえて時を止めたかのようにクラシカルなものを愛する。
古い映画、クラシック音楽、そして使い込まれたアンティーク家具たち。それらが、この息苦しい世界で私を癒してくれるのだ。

もっとみる