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大臺 序乃壱

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此のお話は日本が嫌いな日本人へ…。  日本を愚かと思う日本人へ…。  日本が貧しい国であったと思う日本人へ…。  日本人として誇りを持てぬ日本人へ届ける物語。  此れは我等が…
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2022年1月の記事一覧

     大壹正史年表

     大壹正史年表

          神楽記

紀元前二百三十六年三月二十七日
 神楽が一国(ひこく)の宗女として生を受ける。神楽の正式な発音はカグラでは無くカムラである。
 神楽の父の系譜は天津神である。神楽はあまり武術や語学が好きではなく隙を見てはおもちゃで遊ぶ様な子であった。
 乳母である安高(アタカ)の茶屋を手伝い幼少期を過ごすが、ある日安高の舞の素晴らしさに衝撃を受けた神楽は以降岐頭術(きとうじゅつ)にハ

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦4

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦4

 崖を登った倭軍は身を潜め砦を見やる。城壁に立つ八重兵に娘…。中には兵士がウジャウジャとたまっているのが確認出来た。だが、其れよりも多くの兵が砦の逆にあたる門外に陣を張っている。其の数は非常に多く…。数万はいると思えた。
 対する倭軍は両サイドを合わせても四千程である。浜にいる兵を合わせても既に一万弱であろう…。否、無駄にファイトして来る八重兵は厄介である。下手をすれば一万を切っている可能性もあっ

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦3

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦3

 戦場には多くの死体が転がっていた。其の多くは八重兵と娘達である。本来なら其れ以外の死体があってはならなかった。だが、戦場には倭兵の死体も数多く転がっている。高天原(たかまのはら)での戦は言わばゲリラ戦であった。不意をつかれ、罠に掛かり少なからずの倭兵を失った。此の損失は策によるものである。だが、此の戦は違う。ガチンコの殺し合いである。
 なら…。
 倭人が殺される可能性はゼロであっても不思議では

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦2

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦2

「向かえ打て !」
 水豆菜(みずな)が鐘を鳴らし叫ぶ。娘達は城壁の上から矢を放ち、八重兵は城壁の上で五枚重ねにした盾を構え飛来する矢を防ぐ。
「狙うは弓兵だ !」
 水豆菜(みずな)が指示をだす。伊都瀬(いとせ)は黙ったまま敵を見やっている。
 此方の弓兵は城壁の上からであれば隙間を狙い射抜く事が出来る。と、言っても流石に砦から敵船迄は遠い。確実に射抜くにはかなりの技術がいる。だが、届かぬ訳では

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦1

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦1

 迂駕耶(うがや)から赤粉が上がる。真っ赤な狼煙はモクモクと…。蘭泓穎(らんおうえい)は其れを見やり少し残念であった。油芽果(ゆめか)との事が大きく残っているのかも知れない。だが、油芽果(ゆめか)は裏切った。否、元々其の様な気は無かったのかも知れない。間者として潜り混んでいたのだから間違いはない。だが、泓穎(おうえい)にとって楽しい時間であったのは確かである。
 だからこその強い怨み。
 憎しみ。

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大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日5

大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日5

 油芽果(ゆめか)と薙刀(なぎな)が無事潜入を果たしてからの話は良く分からない。ただ二人が潜入初日から七日間は身体中が腫れて寝込んでいた事、八重国の間者である事がバレてしまったと言う事は間違い無いようだった。
 間者である事がバレても処罰される事なく、逆に蘭泓穎(らんおうえい)は油芽果(ゆめか)を優遇していたらしい。後は今日は何を食べたとか、何が美味しかったとか詰まらぬ連絡が来る程度であった。
 

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大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日4

大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日4

 咸陽を出発して三日…。五人は西南に到着していた。咸陽と違い西南は華やかである。民衆は生き生きとし乞食なんて者はいない。しっかりと税や朝貢をさせているだけあって町は非常に豊かで綺麗である。五人は取り敢えず指定された宿屋に向かった。
「此処が西南じゃか…。」
 甘辛く焼いた串焼き肉を食べながら油芽果(ゆめか)が言った。
「咸陽とは大違いじゃか。」
 鶏の腹に米を入れて蒸した料理を食べながら薙刀(なぎ

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大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日3

大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日3

さて、此の秦王政が持ち込んだ話は多いに五人を苦しめた。何せ自分達の判断で国の運命が大きく左右されるのだから当然である。だが、答えは一つしかない事は明らかであるのも事実。問題は秦王政の約束が真であるかどうかなのである。
 此の話の一番のネックは自分達が帥升を襲う事にある。つまり、此の時点で世界を敵に回す事になる。神を襲った八重国は大罪であり、其れを倭族と秦国が討伐に来ると言う筋書きなのだ。
 八重国

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大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日2

大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日2

「しかし…。良く食うのぅ。」
 ガツガツとむさぼり食べる二人を見やり李禹は懐具合が気になっていた。二人を引き止め先ずは友好の印と食事をご馳走しているのだが、驚く程良く食べる。李禹は秦王政から貰ったお金の半分を着服してやろうと考えていたのだが、油芽果と薙刀が馬鹿みたいに食べるのでその作戦が危うくなって来たのだ。
 ガツガツと二人は無心で食べている。鯉に鶏に団子、麺にあれにこれと…。何と言うか遠慮と言

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大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日1

大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日1

 全てを話し終わり三佳貞は花水を一口飲んだ。フゥっと一息饅頭をパクリ。夜麻芽は黙っていたが目からは涙が溢れていた。樹寐恵はただ俯いていた。
「つまり、倭人に斬られた腕を倭人が治療してくれたと…。」
 樹寐恵が問うた。
「じゃよ…。」
「で、其方は其処に七日も滞在しておったと。」
 夜麻芽が問う。
「ご飯が美味しかったからの…。」
「舞まで披露したじゃか…。」
 樹寐恵が言う。
「披露ではない。練習

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大臺神楽闇夜 序章 奴隷の王 加筆修正版

大臺神楽闇夜 序章 奴隷の王 加筆修正版

          大臺序乃一

         大臺神楽闇夜
           序章

          奴隷の王

 数百年続いた戦乱の世が終わりを告げる。長きに渡り繰り広げられた此の戦を後の人は春秋戦国時代と呼んだ。此の戦での勝者は秦王政である。
 彼の勝利により久方振りの平和な世が訪れ皆は喜んだ。長きに渡る戦は国力を疲弊させ多くの民を苦しめていたからだ。
 秦王政は自らを王を超越し

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大臺神楽闇夜 1章 倭 3高天原の惨劇10

大臺神楽闇夜 1章 倭 3高天原の惨劇10

 お日様が天高く。普段ならお昼ご飯を食べる刻。李禹は今日のご飯はナンジャラホイとウキウキしている刻。真逆今日この日、自分が其のご飯になるとは考えてもいなかった。
「何故じゃ…。何故我が死なねばならぬ…。」
 と、涙は枯れる事なく溢れ出てくる。項雲も麃公も楊も王嘉も司も誰も嘆願すらしてくれなかった。
「諦めるな…。必ず三佳貞が助けに来る。」
 と、王嘉は希望を持たせてくれたが、三佳貞が助けに来る保証

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大臺神楽闇夜 1章 倭 3高天原の惨劇9

大臺神楽闇夜 1章 倭 3高天原の惨劇9

「しかし…。倭人は何をしておるんじゃ。」
 コッソリと第二砦の様子を伺っている日美嘉が言った。三佳貞と日美嘉は倭人の動向を探るべく毎日の様に第二砦に赴いていた。其の中で泓穎を殺す算段をたてる為である。
「分かりよらん。迂駕耶に行きよらんのじゃかのぅ…。」
「今日で十五日じゃ。」
「じゃよ…。既に迂駕耶に立った後じゃぁ思うておったじゃかよ。」
「まったくじゃ…。しかし、こうも警備が厳重じゃと忍び込め

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大臺神楽闇夜 1章 倭 3高天原の惨劇8

大臺神楽闇夜 1章 倭 3高天原の惨劇8

 泓穎の策により部隊は五人一組の小さな組に小分けされた。その小さな組が山を散策する。と、言っても一万と数千の兵が同時に動いているのだから八重兵から見やれば大部隊が攻めて来ている様にしか見えないのは確かである。だが確実に違うのはその行動である。
 五人一組…。つまりリーダーとなる者がその中に存在し、小さな組は其のリーダーを中心に動く。
 大平原での戦と違い山の中は非常に視界が悪い。加えて障害物が多く

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