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無職になるのが怖かった私が「駐妻」になるまで 【前編】

こんにちは!ベトナム・ホーチミンで駐妻として暮らしている、かにたまです。

このnoteでは、フルタイム共働き妻だった私が「駐妻」になるまでの葛藤と心の変化、どんな方法で気持ちを整理していったのか、というような話を書いていきたいと思います。

きっとどんな駐妻・駐夫さんも、配偶者の都合で生活の変化を余儀なくされる以上、大なり小なり、とまどいを感じるものだと思います。私もたくさん苦しみ、たくさんもがきました……涙

人によっては「大げさな!」と思われそうですが、不器用な私は自分の心のモヤモヤをあれこれ試行錯誤しながら、やっと駐妻になる自分を受け入れることができました。

特別は手法などは一切なく、非常に手探りですが、「こんな人もいるんだな〜」という軽い気持ちで読んでもらえると嬉しいです!(そして同じように悩む駐妻・駐夫さんの参考に少しでもなればもっと嬉しい…!)

辞令告知は突然に。モヤモヤのはじまり。

バンコク行きが決まったのは、娘の育休中のこと。その1週間前には娘の保育園も内定し、私も復職に向けて準備しようと意気込んでいたときでした。在宅勤務中だった夫が、いつもと違う緊張した様子で、上司からの電話を受けているのを隣で聞いていました。(そして意味ありげに目配せしてくる夫)

げ…駐在決まったか…なんで今なの…

正直な感想でした。海外赴任の可能性があることは前から聞いていたし、夫に挑戦したい気持ちがあるというのも知っていました。が、お互いにもう少し先の話だろうとどこかで思っていました。

電話を終えた夫に「おめでとう」と振り絞るように伝えたものの、内心は複雑で、『仕事どうしよう』『保育園も辞退か…』『いったい何年行くんだろう』とか、そんなことばかりが頭をよぎる。

100%の気持ちでおめでとうと言えなかった自分が情けなくて、自分の心配ばかりしてる私はなんて自己中なんだろう、と嫌悪感でいっぱいでした。

夫にとっては進展。自分にとっては後退。

当時の私はバリキャリと名乗るのは恥ずかしいレベルの、ごく一般的な会社員。ですが、新卒入社した会社に10年近く勤め、それなりに責任のある業務も任せてもらえる立場になり、やりがいを感じて働いていました。30歳を超え、今後に向けて自分の強みや専門性をどこに置こうかと意欲的な時期でもありました。

夫の海外赴任の可能性は結婚当初から知っていたので、覚悟がなかったと言えば嘘になります。ですが、それはあくまでも想像上のもの。そんな状況に備える暇もなく、唐突に“その時”が来てしまったのでした。

単身赴任の選択肢もあるなか、夫に辞令が出たら一緒に行こうと思っていたのにはいくつか理由があります。一番は娘のこと。幼い娘を夫と離ればなれにするのは本意ではありませんでした。

もう1つは、海外経験が将来プラスになることを身をもって経験していたから。私も父の仕事の都合で数年間、海外で暮らしたことがあり、その経験が自分のアイデンティティ形成に影響したり、そこで得た語学力に救われる場面を何度も経験してきました。

”家族みんなにとって、海外で暮らすのはプラスなこと”

私も、理屈で考えたらそうだなと思いました。
でも、夫や海外駐在経験のある私の両親が、前向きに、そして当たり前のように引越しや赴任後の話をする横で、私はもはや誰にも言えなくなった葛藤を抱えていました。

こだわるほどのキャリアでは無いけれど、それなりに努力してここまで経験を積んできた。それを私はあっさり手放していいのだろうか?

夫は次に進めるのに、私は後退している。
夫はキャリアも家庭も手にできるのに、私はどちらかしか選べない。

いま、過去の自分に声をかけるなら「ちょっとアンタ考えすぎ〜!」ってツッコミを入れたいくらいですが、この当時はすべての思考がネガティブ路線に振り切りっていました。

と同時に、夫のキャリアも応援したい、支えてあげたいという想いもあり、ますます混乱していきました。帯同すると決めるなら「自分ごと」にしないと、このまま夫を責め続けてしまう。そんな危機感を覚えました。

モヤモヤを隠すのは、もうおしまい

娘はしばらく通院の予定があったため、まずは夫だけ単身赴任することに。いま本心を伝えなければすれ違ったままだ……と思い、意を決して夫に打ち明けました。

  • 大前提として、夫の夢を応援したいと思っていること

  • そのため帯同については前向きに考えているが、その動機や目的が自分の中で腹落ちできていないこと

  • 色んな焦りや不安を抱えていること

  • 行くからには納得して行きたいので、気持ちが整理できるまで時間が欲しいこと

だいぶとっ散らかっていましたが、こんな感じのことを伝えた気がします。夫は私を受け止め、納得できるまで待つよと言ってくれました。
(夫も赴任前でプレッシャーもあっただろうに、もっとドーンと構えていられる妻でありたかったな、と今では思います……)

そして、私も夫に自分のモヤモヤをぶつけるうちに、だんだん疑問に思ってきました。

たしかに、私はなぜそこまでして「働きたい」のだろう?

「家族がもっと豊かに暮らせるように」とか「経済的に自立するため」とか、表向きの理由は言えても、働きたいと思う本質的な欲求がなんなのか即答できませんでした。

もっと自分の欲求としっかり向き合う必要があるな、と感じ始めました。

働きたい。その心は?

自分のキャリアだけでなく、夫との関係性や子育ての不安など、この頃の悩みは様々でした。暇さえあれば先輩駐妻さんのブログを読み漁り、自分を安心させる材料を探して一喜一憂する毎日。

このままでは悩みの沼から抜けられなくなる……!と思い、とりあえずいま抱えている気持ちを正直に書き出してみることにしました。

mindmeisterでとりあえず一気に書き出しました

ちょうど育休中だったので、産後の体型の変化とか、駐在に関係ないモヤモヤもありますが(笑)傾向としては、共働き→専業主婦に生活がシフトすることに伴うものがほとんど。

  • 数年単位でブランクのある人間が再就職できるかのだろうか。

  • 同僚や同期が活躍していく中で、自分は同じ土壌に再び戻れるのだろうか。

  • 共働き夫婦として夫とも対等な関係でいれたのが、専業主婦になることで変わってしまうのではないか。

  • 一度ライフスタイルを変えてしまうと、再び共働きに戻るときに苦労するのではないか。

とにかく「変化」することを恐れていました。そして今の環境にどうしたら再び戻れるのだろう、という思考でいっぱいでした。

以前から仕事や人間関係に悩んだ時に『反応しない練習/著:草薙龍瞬』を読んでよく参考にしていたのですが、この本ではブッダの教えに沿って ”心の状態をよく理解する”メソッドとして、以下のことが書かれています。

心に「貪欲」「怒り」「妄想」の、どれが存在するのか、観察してみます。「欲が働いている」「怒りを感じている」「これは妄想である」という具合です(たいてい三つともあったりします)。 それだけでも「モヤモヤ」は晴れていったりします。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」/草薙龍瞬

要は、心の状態を冷静に観察すると「貪欲」「怒り」「妄想」のどれかに分類できる(or複数の場合もある)らしいのですが、そうやってモヤモヤを客観的に捉え直すと、自分が必要以上に”反応”してしまっていることに気づけるそうなのです。

私も、自分の悩みにこのメソッドを活用してみました。

結果、悩みの半分が妄想でした。まだ経験していないことへの不安は自分の想像からくるもの、という当たり前のことに気づきます。分類すると、確かに自分の悩みを冷静にとらえることができました。

そこから、他人が自分にアドバイスをする感覚で悩みをブレイクダウンしていき、最終的に「次にとるべき行動」を明確にしていきました。

  • 「ブランクがあって再就職できない」と思っていたのは自分の思い込み(=妄想)では?

  • そう思い込んでしまっているのはなぜ?

  • そもそも今と同じ条件・環境の仕事に戻ることがゴールなのか?

こんな感じで自問自答を繰り返していくと、自然と「モヤモヤを感じないようにするために○○をしよう」という前向きなアイディアが出てきました。

例えば、無職になって今までコツコツ貯めてきた貯金を切り崩すことに抵抗があったのですが、

  1. 不必要な支払いを整理する

  2. 駐在期間中に切り崩す上限額を決める

  3. このために貯金してきたと割り切ってやりたいことにお金を使う!

みたいな感じで具体的にタスクに落とすと、次のアクションに集中できるので、答えを探して悩み続ける状態から脱却することができました。

自問自答を繰り返して完成させていったマインドマップ

こんな風に一つ一つのモヤモヤに向き合ってみると、行動指針のようなものが固まっていきました。

”駐在期間もキャリアの一部と考えて、計画的に過ごそう”

なんだか今思うと当たり前のことですが、色んな悩みがごっちゃになっていた当時の私には、一個ずつ紐解かないと腹落ちできない考えでした。

正直なところ、今でも、ふとした瞬間にこの時のモヤモヤが顔を覗かせることがあります。となりの芝生は青く見えるし、人間というのは自分と他人の人生を比較しがちですしね。(デジタルデトックス、SNSデトックスも何度か試しました)

でも、その度にこのマインドマップに立ち返ることで、自分の思考のクセを修正できるようになりました。そういう意味でも、この時しんどいながらも悩み抜いて、モヤモヤを言語化しておいて良かったと思っています。

その後の現在の取り組み、参考にした書籍などは後編に書いています。


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