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名無しの島

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フリーのルポライター、水落圭介はある出版社から、 ある島に取材に行ったきり、 行方不明になった記者を見つけてほしいという依頼を受ける。その記者は古い友人でもあった圭介は、 その依…
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#感染症

名無しの島 第15章 地下研究所

名無しの島 第15章 地下研究所

「774部隊は『人体の強化』・・・

 いわば強化人間を製造することを目的にしていたみたいです・・・」

 小手川浩はそう言いながら、なおも書類やファイルを漁っていく。

彼の口からは、『人体の分離・合体』

『食料の摂取による対価の最小限化』など、

意味不明な言葉がつぶやかれていた。

 人体の強化?強化人間?そんなことを言われても、

にわかには信じられない。

まるでSF映画かアニメの世界

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名無しの島 第16章 襲い来る狂気

名無しの島 第16章 襲い来る狂気

 確かに、このままこの場に留まっているのは危険だ。

出入り口は、この部屋まで歩いてきた通路ひとつだけだ。

もし、あの化け物たちが入ってきたら、

逃げ場は無い。水落圭介たちは、室内の奥にある扉に向かった。

その扉は鉄製だった。しかも、鍵がかかってない・・・

というか半開きになっていた。

圭介は鉄扉の下を見た。床には扇状に擦れた跡がある。

それも新しいものだ。扉が動いた痕跡に間違いない。

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名無しの島 第17章 這うもの

名無しの島 第17章 這うもの

 水落圭介はゆっくりと立ち上がった。

避難した狭い部屋を、彼はマグライトの明かりを当てて、再確認していた。

すると、最初は気づかなかったが、2メートルほどの高さに、

縦横40センチほどの通気ダクトがある。

あの狭さでは化け物も通れないだろう。それ以外には窓も無い。

地下だから、当たり前なのだが。

 しばらくして、小手川浩がさきほどの部屋から持ち出した、

建築構造図の描かれた紙を広げて

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名無しの島 第18章 手に入れた武器

名無しの島 第18章 手に入れた武器

 地下2階へと続く廊下に出るための鉄扉はにも、錆付いた、

差し込み式の鉄板は取り付けられてはいたが、

それをスライドし、鍵を掛けられた形跡は無かった。

 水落圭介は、所々錆に侵食された、L字型のノブを掴む。

ゆっくりと慎重に、できるだけ音を立てないよう心掛けながら、

慎重にその扉を押し開いた。

そして右手に持ったマグライトで廊下を照らす。

左手にはスエーデン製のモーラーナイフを握り締

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名無しの島 第19章 強襲

名無しの島 第19章 強襲

 地下宿舎のベッドは左側の頭を向けて、整然と並べられている。

通路にあたる部分はその空いた部分、幅2メートルほどしかない。

二人並べば、いっぱいになるくらいだ。

三八式小銃を構えた水落圭介と小手川浩は横に並んだ。

有田真由美と斐伊川紗枝はその後ろに付く。

 小銃のフォアグリップを持つ手に、マグライトを挟み、

前方を照らす水落圭介。

その頼りない証明に照らし出されたものは、

怪物・・

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名無しの島 第20章 黒い血

名無しの島 第20章 黒い血

 水落圭介をはじめ、有田真由美。小手川浩は前に進もうと歩き始めた。

その誰もが、、衣服やリュック、

腕や顔に化け物のどす黒い返り血を浴びている。

そしてどの顔にも、極度の緊張と疲労、恐怖の色が浮かんでいいた。

あれだけの銃弾を浴びせながらも、一向に怯まず、

獰猛に襲い掛かってきたあんな化け物が、

少なくともまだ数十体もいるのか・・・。

たった4人でとても太刀打ちできるものではない。

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名無しの島 第21章 感染

名無しの島 第21章 感染

 扉を開くと、そこは居住区に入る前と同じような、

狭い部屋だった。

対角線上に鉄扉があるのも同じだ。床もクリーム色のリノリウム。

後戻りしたのかと錯覚するほど、同じだった。

ただ少し違うのは、部屋の隅に長さ1メートル強、

直径3センチほどの鉄パイプが、数本立てかけられていることだった。

厚みは2ミリくらいある。丈夫そうだ。

水落圭介はその中の、比較的錆のすくないものを選んで、

杖代

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名無しの島 第22章 脱出まで38時間

名無しの島 第22章 脱出まで38時間

「彼女たちには、黙っておきましょう。

動揺させるだけですから・・・」

 小手川浩は部屋の隅で寝ている、

有田真由美と斐伊川紗枝の二人を見やった。

 そしてまた咳き込むが、音を立てまいと、

自らの両手で自分の口を塞いだ。

「あの二人も感染してるってこともあるのか?」

 水落圭介は訊いた。

「わかりません。経口摂取による感染なのか、

 接触による感染なのか、

 それとも空気感染なの

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名無しの島 第23章 揺らめくもの

名無しの島 第23章 揺らめくもの

 それからの30分の間、小手川浩も水落圭介も無言だった。

だが、互いの気持ちは似たようなものだった。

次第に化け物になりつつあるかもしれない、二人とも・・・。

 彼女たちは大丈夫だろうか。

圭介はまだ寝ている彼女たちを見やった。

特に有田真由美は化け物の爪に足を掴まれている。

それも食い込み鮮血を流すほどに。

有田真由美も感染しているかもしれない。

斐伊川紗枝は感染してはいないのだ

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名無しの島 第24章 桜井章一郎

名無しの島 第24章 桜井章一郎

「桜井・・・桜井章一郎なのか?」

水落圭介は、その何者かに訊いた。声は震えている。

それは桜井章一郎が生き残っていた・・・驚きのせいなのか、

それとも、言い知れぬ悪い予感が生ずる恐怖からなのか。

10メートルぐらい距離があっても、

桜井章一郎の姿が変貌していることは、見て取れた。

だが、その顔形には、以前の見知った桜井章一郎の面影が残っている。

 肌は灰色がかっており、顔はかつての面

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名無しの島 第25章 歪むリノリウムの床

名無しの島 第25章 歪むリノリウムの床

 研究室に続く下り階段は、これまでと違い、

コンクリート製の頑丈なものだった。

ところどころ、シミ見たいなものが浮き上がっていたが、

崩れる様子はまったくなかった。

研究室はどれだけの広さがあるのか、検討もつかなかった。

すべてが闇に閉ざされていて、何も見えない。

ただ、巨大な空間が広がっているのは、感覚でわかる。

 4人は慎重に階段を降りていった。一歩一歩確実に。

そこで、ふいに

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名無しの島 第26章 灰色の手

名無しの島 第26章 灰色の手

「あのドアかしら?」

 有田真由美は、部屋の右端にある扉を指差した。

ノブは通常のものだ。少し錆付いている所を除けば。

有田真由美が、ノブに手をかけてひねるが、びくともしない。

よく見ると、ノブの下に鍵穴がある。

その様子に気づいた小手川浩が、部屋中を探し出した。

すると、配電盤の横の壁にある、小さなフックにキーを見つけた。

小手川浩は、その鍵束を手に取った。その鍵束に視線を落とす。

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名無しの島 第27章 ワクチン

名無しの島 第27章 ワクチン

「感染?何の話なの?」

 小手川浩の言葉を聞いた斐伊川紗枝の声には、

驚きと怯えの入り混じっていた。

「紗枝ちゃん、これにはわけが・・・」

 有田真由美が斐伊川紗枝をなだめようとするが、

彼女のパニックは収まりをみせなかった。

「前から変だと思ってた。水落さんは顔色悪くなってるし、

 小手川さんは左目、銀色に・・・

 あの化け物みたいになってるし・・・」

 斐伊川紗枝の両目から、

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名無しの島 第28章 巨大水槽

名無しの島 第28章 巨大水槽

 その水槽は長さ10メートル、

幅4メートル、高さ3メートルあった。

中には緑色の液体で満たされていたが、4人が目を見張ったのは、

その液体の中に入っている異形のものだった。

それは今までの化け物とは、形態がまるで違っていた。

水落圭介たち4人は、その巨大な水槽の周囲を回りながら、

その異形のものを見ていった。誰もが無言だった。

 元は人間だったものを、両腕を残し、

首と下半身が切

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