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Amazonオリジナル作品 "アップロード"から学ぶべきこと

2020年5月1日よりAmazon Primeビデオにて公開されて以来、高評価を得ているシリーズ、"アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~"。

今回は、この大人気最新シリーズが現代社会と我々人類に何を教えようとしているのかについて考察していきたいと思う。

*ストーリー自体よりも、劇中の世界観を中心に触れていくつもりではあるが、まだ作品を観ていない方はこれを読む前に観ることをお勧めします。

あらすじ
2033年の世界では、 死が目前に迫った人々は6つのテクノロジー企業が経営する仮想現実のホテルに"アップロード”されることが可能となった。金銭的に余裕のないノラはブルックリンで暮らしながら、賛沢な死後の世界、"レイクビュー”の顧客サービススタッフとして働いている。 ネイサンはロサンゼルスに住むパーティー好きのプログラマーで、彼の自動運転の車が事故を起こした際、 彼は自己主張の強いガールフレンドにアップロードされて仮想現実の世界で永久に過ごすこととなり、ノラと出会う。「アップロード」の制作指揮は「ザ·オフィス」のグレッグ·ダニエルズ。
Amazon公式より

仮想現実世界と現実世界

 劇中では、仮想現実世界で生活するアップロードと現実世界の恋人や家族などとの生き様がメインで描かれている。まるで、本当に生きている人間と肌を触れながら生活できるような空間が用意されている。さらに空間を超えて、愛する恋人との会話することはもちろん、特殊なスーツを着用すればセックスもリアルに擬似体験できるのだ。そんな世界があれば、愛する人を一生失うことはないし、失う恐怖や不安も全くなくなるだろう。

 しかし、劇中では全てがパーフェクトな世界としては描かれていない。仮想現実の中には、未だに人間を超えていない不完全AIの存在や、管理空間以外はメンテナンスが行き届いていないなどリアルな"不完全さ"が目立つ。(*AIに関しては、2045年に人間を超える時代が来ると言われている=シンギュラリティ。劇中の設定は2033年なので、不自然でない。)
どれだけ、現実世界をリアルに近づけても超えられない壁があると言うことをあえて教えているような世界観である。

スコアリング

 評価やレビューでそのモノの良し悪しが決まる。劇中では出会いを求めるマッチングアプリ、会社での評価、お客様からの評価など全てにおいて自分がスコアを付けられる世界になっている。評価がいいと自分に利益が得られ、それが当たり前の世界になり、そのことに夢中になりすぎて本当に大切な事や人間的感情面を忘れてしまうこともあるようだ。少し残念で恐ろしくもある世界と言えよう。

 では現代社会ではどうだろうか。我々が日頃から使っている便利なネットショッピング、ウーバー、ウーバーイーツなどのサービスはこれにあてはまるのではないだろうか。また、国家主導でIT化を推し進めている中国では人の信用度を図る指標として信用スコアと呼ばれるものがすでに存在している。これも、スコアが高ければ高いほど、社会的信用度が高いとみなされ様々なサービスや高待遇を得られるそうだ。我々が日頃から活用しているSNSも無意識に"いいね数"でその人や投稿への評価を可視化しているのである。より多くの"いいね"や高評価をもらうために、本当に大切な事を忘れてしまってはいないだろうか。


人間の良し悪しは数字だけでは決める事ができないと信じたい。

*Instagramで他のユーザーの"いいね数"が非公開になったのはそのような格差やバイアスを取り除きより公平なプラットフォームにする試みのひとつかもしれない。

健在する格差社会

 エピソードを観進めていくと、資本主義経済経済的な格差を表現するシーンが多く描かれている。

 現在でも実在する巨大IT企業の数々が実名で登場している。統合・合併した会社等が今よりもさらに力を強めており、そのカバー領域を武器に現実世界と仮想世界の両方を牛耳っている。現在においても、アメリカのGAFAMや中国のBATHを始めとするITプラットフォーム企業等は、ビッグデータを活用しながら日々新たな分野へ参入している。さらに米VS中の世界での覇権争いは、グローバルに注目を浴びいているのは、普段の報道でもよく目にする光景だ。弱肉強食。強いものがさらに強くなる構図は、現代社会でも劇中でも同じと言えるだろう。

 仮想現実空間で様々なサービスを提供するホライズン社はあくまでも資本主義経済圏の会社である。アップロードにより良いサービスを提供することで利益を生み出しているのだ。さらに、仮想空間内では課金システムが用意され、利用するにはお金(もしくはそれに代わる仮想通貨)が必要になる。アップロードが生活する空間も予算レベルに応じて用意されており、上質な空間はかなりの高額である反面、下層階には1ヶ月で 2GBまでしか使えない低所得者向けの世界が存在している。言い換えれば、仮想空間にいても、お金が無いと良い暮らしができずその経済力は現実世界での支払い者の経済力と比例していると言うことである。ITの発達で、利便性は向上し夢は広がるが経済的格差は解消されてないと言えよう。

生と死

 最も倫理的で人間的なテーマである。設定では、自然死アップロード死の2つの選択肢が人間に与えられている。天国を信じるかアップロードの世界、つまりデジタル化された永遠の生か、究極の2択である。
"レイクビュー”の顧客サービススタッフであるノラの父親は病に侵されており、死後に妻の待つ天国かアップデート世界に逝くか悩むシーンが何度も描写されている。

 しかし、私は人間が人間である所以は生と死を常に受け入れながら生きていくことにあると考えている。大切な人を失う。これは二度と経験をしたくは無いものだ。しかし、生あるものいずれかその時がやってくる。そんな様々な思いを考え巡らせながら今を大切にして現実を受け入れ、学び生きていく。それが人間生活の本来のあるべき姿では無いかと強く感じている。実社会においても、科学技術の開発は常に倫理的観点とのバランスを取りながら進めていく必要があると改めて考えさせられた。

まとめ

 今回"アップロード"の世界観をテーマに実社会と比較しながら考察してきた。どれも信じがたい話ではあるが、同等の世界が間近に来てる事はお分かり頂けたのではないか。我々は、この変化や発展をただ傍観していくだけで良いのだろうか。今や生活必需品で便利な機能・サービスを提供してくれてるGoogle、Facebook、LINEなどを利用する際は、ただのユーザーではなくて意見あるユーザーとなって欲しいと強く願う。わからなくても、考えたり、アンテナを張り巡らして情報を得る事でも変わる事はあると信じている。リテラシーを向上させたユーザーと利便性を追求するIT社会が揃って初めて、公平な世界へ近づくのだから。この記事が、読者の皆様の考えるきっかけになれば幸いである。

P.S.

上記の様な難しい話を置いておいても、"アップロード"は海外ドラマとしてとても面白い作品になっていますので、ぜひ一度ご覧ください!

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