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山伏のいる神社に行く旅 #3|神様に呼ばれた人しか行けない場所

6月のある日。適応障害になって4年のフォロワーさんと、山伏の方がいる神社に行く旅をした私。

気分の落ち込みよりは、「今の状況に納得がいかない」という、強い不満や憤りの感情が原因だと感じたのが、この旅を勧めた理由だった。

行き先は、新潟の八海山尊神社。7年ほど前、この神社に所属する山伏の方と出会って以来、私がお世話になっているお宮だ。

目的は、特に浄化力が強いと言われる、お護摩(護摩祈祷)を受けること。だが、旅を前にして、波乱の予感がする出来事があった。


突然歯が欠ける

旅の前々日。出かけていた私は、お店で夕食をとっていた。ごはんと野菜のおかずにスープ。柔らかいものが中心の食事である。

ところが、食べ始めてすぐに「ガリッ」という音がした。

嫌な予感がして見てみると、歯らしき欠片がある。手鏡で口の中を恐る恐る確認すると、ある歯が4分の1ほど欠けている。

「歯の中はこうなっていたのか」と分かるほどの状態。元来、歯が丈夫で、物心がついてから虫歯になった記憶すらない私としては、初めてのことだ。

何もしていなくても歯がしみる。翌日の昼、在宅勤務の合間を縫って歯医者に駆け込むと「神経を取らないといけないかもしれません」と言われた。

ひとまず仮詰めをして様子を見るという。「痛くなったら、すぐに飲んでください」と強めの鎮痛剤を処方され、心許ない気持ちのまま帰宅した。

災害レベルの大雨予報

数時間後。明日に迫った旅に備えて、改めて天気予報を見る。朝に見た時は大雨の予想だったが、念のため確認しておこうと思ったのだ。

すると「災害レベルの大雨」という文字が踊っていた。あらゆるニュースに「不要不急の外出は避けるように」と書いてある。

予報が朝よりも一段と悪くなったようだ。電車が運休する可能性もあるという。

フォロワーさんは秋田から、私は東京から新潟に向かう旅。特にフォロワーさんは、特急と新幹線を乗り継ぎ、1泊する予定である。

「行くのをやめるなら、早めに決めた方がいい」

そう思った私は、早速メールを送った。

どうしたものか迷っていること。延期も可能なこと。お気持ちを聞かせて欲しいこと。

正直に言えば、「明日はやめた方が良いかもしれない」という気持ちが少し勝っていた。それには、ある理由があったのである。

神様に呼ばれた人しか行けない場所

世の中には「神様に呼ばれた人しか行けない」と言われる聖地がある。私が以前に訪ねた、久高島天河大辨財天社もその一つだ。

だが、本当は、そうした有名な場所に限った話ではない。

例えば、お世話になっている山伏の方のご自宅。普段はこの家で整体院を営みながら、月に一度、お護摩をされている。

一見何の変哲もない、東京の街中にある家だが、なぜか辿り着けない人が時折いるのだという。

神事が行われるような清浄な場所というのは、万事、許された人しか立ち入れないものなのだ。

2ヶ月余り前の、フォロワーさんが八海山尊神社へ行くと決めた直後。

この山伏の方に旅の報告をしたら、「邪魔が入って行けなくなる可能性があることも、念頭に置くように」と言われた。

歯が欠けたのも、災害レベルの大雨の日に当たったことも、偶然と思う人は多いのだろう。だが、私にはそう思えなかった。

数日前、フォロワーさんのメールがすべて消えるという事件もあり、神に歓迎されていないような、どこか弱気な気持ちになっていたのである。

波乱の予感と覚悟

夕方、フォロワーさんから返事が来た。

すでに気持ちは八海山尊神社に飛んでいるが、考えさせて欲しいという内容。だが、数時間後には、

「めちゃくちゃ考えましたが、やはり、明日、八海山尊神社に行きます!」

という、勢いのあるメールが届いた。

私は「この旅は一筋縄ではいかないかもしれない」という波乱の予感を抱きながらも、参拝を勧めておきながら弱気になっていた自分を恥じた。

幸い行きの時間帯は、電車が何とか動きそうである。

歯が痛もうが、電車が止まって帰れなくなろうが、何とか山伏の方がいる神社にお連れしよう。

私はそう覚悟を決め、「かしこまりました」と返信した。

自分自身は何度も参拝してきた神社だが、人をお連れするのは初めてのこと。

私自身も試される旅。だが、嵐の中、強い覚悟で向かった先には、思いがけない時間が待っていた。

つづく

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★お護摩の様子など、八海山尊神社については、こちらの記事をぜひご覧ください

★私のお護摩の体験談は、こちらをご覧ください

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