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東京都知事選総評:小池百合子の底力、蓮舫と共産党の無残。野党は目を覚まして「シン野党連合」しかないが、今更遅いか。

東京都知事選挙は、現職の小池百合子・都知事がが、3回目の当選を果たした。小池氏は、全体の4割にあたる291万8015票を獲得した。石丸伸二・前安芸高田市長が165万8363票を取って2位に躍進した。蓮舫・元参院議員は、128万3262票の3位にとどまった。
 
小池氏は、今年4月の衆院東京15区補選で乙武洋匡氏を担いで惨敗し、国政復帰、日本初の女性首相の悲願達成の道を事実上絶たれた。「学歴詐称疑惑」の問題を蒸し返され、刑事告訴されるなど、強い逆風に晒されていた。
 
それでも、前回都知事選の約366万票から約70万票得票を減らしたものの、圧勝という結果となった。小池氏は、政治家としての圧倒的な力量を示したといえる。
 
小池氏は、選挙戦で現職の強みを生かして、徹底的に組織票を固めた。選挙前から、新宿区の吉住健一区長、調布市の長友貴樹市長、瑞穂町の杉浦裕之町長ら都内の52の区市町村の首長が小池氏に出馬要請した。
 
続いて、公明党が支援を表明した。「政治とカネ」の問題に揺れる自民党は表立っては動かなかったが、小池支援で固まった。
 
小池氏は、街頭演説は週末を中心とした。公明党、自民党も党派性を出さない方針で、応援弁士に立つことはなかった。その代わり、都の施設や民間事例を見て回る「行政視察」を行った。奥多摩湖のダムや八王子市学校給食センター、民間の介護研修施設などなど、選挙期間中に20カ所近くを相次いで訪問し、1日に4カ所巡ることもあった。視察先は、防災や子育て施策など、2期8年の任期中に力を入れた政策に関連する場所が多かった。現職としての仕事ぶりをアピールする「舞台」だった。
 

 
そして、本来は立憲民主党支持のはずの連合が、小池氏への支持を表明した。蓮舫氏が、共産党の支援を受けていることが理由であったが、小池氏の都知事としての業績を高く評価していることも強調した。
 
一方、小池氏は無党派層の約30%を獲得した。石丸氏の台頭で無党派票を大きく減らしたとみられるが、それでも底力をみせたといえる。
 
小池氏は、元々現実主義的、中道主義的な政治スタンスをとってきた。かつて、「希望の党」を結成し、安倍晋三政権を打倒し、政権交代を目指した頃には、ゴルフに例えて、「皆が左と右のラフを狙うので、私は空いている中央のフェアウェイを狙います」と発言したことがある。つまり、中道の無党派層の獲得を常に狙ってきた。それは、今日でも変わっていない。
 
私は、現在の政治で勝利するには、世論調査で5-6割を占めることがある「サイレントマジョリティ(声なき多数派)」である無党派層を狙うべきだと主張してきた。
 

 
再度、サイレントマジョリティについて、簡単に説明しておく。中道的な考え方を持つ現役世代、子育て世代、若者らに加え、都市部で暮らすサラリーマンを引退した高齢者などがこれに含まれる。
 
ただし、イデオロギーに強いこだわりがなく、表立って声を上げないとはいえ、サイレントマジョリティが投票行動を一切しないわけでもない。常日頃から支持している政党はないものの、時流や政局に応じて一票を投じ、選挙の結果を事実上左右する力を持ってきた。
 
例えば、かつて民主党への政権交代を支持したのはこの人たちだ。また、第2次安倍晋三政権は、経済政策「アベノミクス」や、弱者を救済する社会民主主義的な政策でサイレントマジョリティの支持を獲得し、憲政史上最長の政権を実現した。
 
このサイレンマジョリティの支持獲得を重視する中道的な姿勢が、逆風が吹き荒れる中でも小池氏が強さを発揮した理由の1つである。
 
サイレントマジョリティを軽視し、共産党との「共闘」に軸足を置いたために、無残な敗北を喫したのが蓮舫氏だ。
 
共産党は、選挙戦が始まる前から党の広報に蓮舫支持を大々的に打ち出した。そして、蓮舫氏、立憲民主党となにも合意がないのに、「蓮舫氏が都知事になれば、このような政策が実現する」として、共産党の主張をずらりと並べた。それに対して、蓮舫氏も立憲民主党も、共産党に抗議することなく、静観した。
 
私は、東京15区補選で共産党の支援で立憲民主党の候補が当選した際、次のように指摘した。
 
『今後共産が立民に対してさらなる共闘と政策の合意を求めるだろう。だが、泉代表は安全保障や原発などエネルギー政策、消費税減税の凍結など「現実主義的」な政策志向を持つ。共産のプレッシャーを受けて、立民党内で政権獲得戦略を巡る迷走が始まる。』
 

 
その通りになったということだ。共産党主導の「共闘」姿勢に、連合は抗議して小池氏支援に回った。なにより重要なのは、共産党支持者は盛り上がったが、50%以上の多数派を占めるサイレントマジョリティの支持を完全に失った。
 
もちろん、蓮舫氏の街頭演説は、常に多くの人が集まり盛況だった。陣営は手ごたえと充実感があっただろう。だが、それは「コアな支持者」の反応に過ぎなかった。「大きな声」ではあったが、全有権者の中では少数派に過ぎなかった。それでは勝てないのだ。蓮舫氏は、石丸氏にまで敗れる、無残な姿を晒すことになってしまった。
 
立憲民主党は、たとえ蓮舫氏が2位となっても、200万票を獲得できれば、共産党との共闘の効果を証明できるとしていた。
 

 
その政治的感覚の古さ、鈍さ、現実の読みの甘さは笑うしかないレベルだ。

この党の代表はどこの大学の卒業だったっけ?(笑)恥ずかしいですわ。
 
そして、共産党はさらに無残だ。党の実情は厳しいものがある。国会での議席数は長年減少し続けている。党員数は、最盛期だった90年の50万人から25万人程度に半減している。党財政の基盤を担う『赤旗』の購読者数も80年の355万人から85万人まで落ち込んでいる。特に深刻なのは、党員の高齢化だ。平均年齢は70歳を超えているのではないかといわれている。
 
実際、共産党の運動員はさまざまな駅前でビラ配りなどの活動をしている。だが、どの駅でも、70歳以上と思われる高齢者ばかりだ。若者の姿をみることはほとんどない。新規党員の獲得はまったく進んでいないのだ。
 
そして、このような現状にある共産党が「候補者を降ろすこと」を党の戦略としている。共産党は、政権交代実現に向け、選挙で野党候補をできる限り一本化する「野党共闘」を党の戦略としてきた。
 
候補者を降ろし、国民に対して政策を訴えず、選択肢を与えない。その裏で、候補者を出さないことを条件に他の党と駆け引きをし、権力獲得に暗躍する。これは、政党が国民に対して果たすべきことの真逆ではないか。候補者を降ろすのは、立候補しても勝てないと自覚しているからでもある。共産党は、自由民主主義国の政党の体をなしていない。解党すべきであると強く主張したい。
 
そして、共産党を除く、立憲民主党など野党各党に問いたい。今、自民党・公明党を倒し、政権交代に必要なことはなにか。それは、「シン野党連合」を形成することだ。
 

 
要するに、サイレントマジョリティである無党派層のパワーを目の当たりにした今、まさにその支持を総取りにする政党連合を形成するということだ。
 
「シン野党連合」は、そんなに難しい話だと思っていない。改革と地方主権を掲げる馬場伸幸・日本維新の会代表。消費増税を封印し、安全保障政策などで現実路線を志向する泉健太・立憲民主党代表。「中道路線」を貫く玉木雄一郎・国民民主党代表。そして、かつて民進党を希望の党に合流させて政権交代を狙った前原誠司氏(新党「教育無償化を実現する会」代表)。
 
 彼らには過去のさまざまな因縁がある。それはわかるが、政策志向は中道の現実主義でそれほど変わらない。一緒にやれない理由はシンプルに言って「共産党の存在」だっだ。実際、馬場氏も玉木氏も、その発言をよく聞くと、言っていることは「共産さえいなければ」ではないか。共産さえ切れれば、一緒にやれるのだ。
 
しかし、もう遅いのかもしれない。石丸伸二氏のような完全無党派で、サイレントマジョリティの支持をかっさらう政治家が現れた。いまさら気づいて「シン野党連合」を形成したところで、それに魅力を感じる国民がいるのだろうか。

尚、2位に入った石丸伸二氏については、すでにその躍進を確信し、以下の通り論じているので、こちらをご覧ください。


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