【生きづらいあなたへ】2020年僕的おすすめ本ランキング10-6位

2020年に僕が読んだ本の中で、個人的おすすめ本ランキングを作ってみました。
小説・エッセイ・新書など、あまりジャンルにこだわらず、ごくごく個人的な感性で選んでおります。
独断と偏見で選んでおりますので、あまり参考になるかはわかりませんが、どれも素晴らしい本であることだけは保証しますので、興味があればぜひお手に取ってみてください。

YouTubeに動画もアップしておりますので、よろしければこちらも合わせてどうぞ。

10位 都会なんて夢ばかり / 世田谷ピンポンズ

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フォークシンガー・世田谷ピンポンズさんのエッセイ集。
少し前に行った京都旅行で「誠光社」に行き、その時に新刊コーナーで目についたので買ってみました。
世田谷ピンポンズ自体は知らなかったのですが、自分が世田谷区出身なこともあり、名前がとても気になって購入。

文章や内容は全体的に素朴でありながら、シンガーとしての葛藤や悩みを赤裸々に描いています。
どこか仄暗い雰囲気と、そこに見える前向きな姿勢のギャップが印象的でした。

下北沢、三軒茶屋など、世田谷の街が舞台となっていて、自分も馴染みのある街だったので余計に楽しめた部分もありました。

また、付録として世田谷ピンポンズさんの6曲入りCDも封入されています。
この中に入っている曲は、当たり前ですが、非常にこのエッセイとマッチしていて、読み終えた後に曲を聴くと不思議な納得感を覚えました。
舞台となっている世田谷の街を歩きながら聴きたい。そんな素朴で生活感のある曲たちでした。

9位 僕は線を描く / 砥上裕將

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水墨画家の方が書かれた水墨画をテーマにした物語という少し変わった作品。
話の大筋はシンプルで、少年が水墨画と出会い、水墨画の世界に足を踏み入れていくというもの。
ただ、そこに自身の実体験やリアルな感覚が織り交ぜられているからか、とても物語に入り込みやすいように感じました。

友情・努力・勝利」的ないわゆる少年漫画風の展開で、ある意味わかりやすい物語になっているというのも魅力的でした。
その中で水墨画という世界、あるいは創作をする人たちの葛藤、努力、才能との向き合い方などを描き出していることで、より深みのある作品に仕上がっています。

水墨画という僕らがあまり馴染みのないものを、こうしてポップな物語に仕上げたということも、大きな意義があるのではないかと思います。
キャラクターの立たせ方や登場人物同士の関係性の描き方も丁寧で、キャラ文芸としても楽しめる作品となっています。

楽しみどころがたくさんあり、読みやすい作品なので、色んな方におすすめしたいと思える一冊でした。


8位 東京百景 / 又吉直樹

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ピース・又吉直樹さんが書かれたエッセイ集。
単なる「芸人のエッセイ」という枠に収まらない、文学的、あるいは、小説的な書き方がされていました。
日常の出来事などを描きながらも、そこに虚構を織り交ぜることで、より深みのあるエッセイに仕上がっており、非常に技巧的な作品
白昼夢のような感覚、文字の奥に不思議な世界に広げ、擬似トリップ的な読書体験を与えてくれます。

現実と虚構の重なりを描くことで、逆にリアルな日常を浮き彫りにしていて、又吉さんの絶妙なバランス感覚があるからこそできる芸当だと思います。

また、この作品も吉祥寺などの京王線沿線がよく出てきて、こちらも比較的馴染みのある街が多かったので、そこもとても楽しく読むことができました。


7位 表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 / 若林正恭

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オードリー・若林正恭さんのキューバ旅行記をまとめたエッセイ集。
旅行の中で起こった出来事や感じたことを若林さんの独特な視点、感性を交えて描いています。

「なぜキューバという国を選んだのか?」
「キューバで見たもの・感じたことが、実際の自分の生活とどう繋がるのか?」
「社会主義国・キューバと、資本主義国・日本の違いとは」

読み進めるうちに少しずつそこが明かされていき、最後には自分もキューバという国に行きたくなってしまう一冊です。

これは偶然ながら、皮肉にもこの本で描かれている話が今のコロナ禍において、問題提起的な役割を果たす形となっており、その意味でも今の時代に読むべき本なのではないかと思います。
(実際、最後に付け加えられた書き下ろし編にて、現在の状況に絡めた形でこの本についてのあとがきが記されています)

また、作中で描かれている若林さんがずっと抱えてきた悩みが、自分と重なる部分が多く、自分の曖昧な悩みを分解して原因や現象を詳らかにしてくれる感覚が読んでいて心地よかったです。

 俺は、ずっと自分の内面ばかりを覗き込んで他人を見てこなかった。そういう人間は世間に「自意識過剰」「考え過ぎ」と嘲笑されるけど、それは内面を覗き込む必要がない強い人の無理解だ。内面ばかりを覗き込む必要がある人は「なぜもっとスムーズに生きられないのだろう?」という想いを抱えている。だから、自分の内面を隈なく覗き込んで一体どこに問題があるのかずっと探している。


自分が上手く生きられないもどかしさ、そしてそれを解決するための内省。
その無限ループの苦しさを的確に表現した一節だと思います。
若林さん自身は、このキューバ旅行を通じてこのループを脱することができたということを述べていて、僕もそういう体験を求めて、色んなことに取り組んでいきたいと感じました。


6位 生まれてきたことが苦しいあなたに / 大谷崇

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ペシミストと呼ばれる思想家・哲学者のシオランが残した思想を体系的にまとめた一冊。
ペシミストとは「悲観主義」「厭世主義」と訳され、『この世界は悪と悲惨に満ちたものだという人生観をさす』そうです。(wikiより引用)

元々、表紙を描かれているつくみずさんがきっかけで買った本になります。
(結構ジャケ買いが多いタイプです)
印象的なタイトルと、シオランという人自体にもとても興味があったので手に取ってみました。

タイトルにある通り、「生まれてきたことが苦しい」と思う方に読んでほしいと思います。
「どうやって生きていけばいいのか」「なぜ生きるのか」
そういったことを考え、答えを見つけるための一助となってくれるはずです。

前半はかなり実生活に即した話や自分の感性と近しい部分もあり、参考になることも多く書かれていました。
ただ、後半にかけては、シオランの思想が過激化していく雰囲気があり、若干、言葉遊びや思考実験的な文字面だけの話に帰着している部分もありました。
(本人がそう考えていたかは分かりませんが…)
ただ、それはそれとして面白く読めるので、自分の思考を支える材料としては役立つのではないかと思います。

個人的に印象的だった部分を下記に引用します。

 生には何の意味もないという事実は生きる理由の一つになる。唯一の理由にだってなる。
 生きるどんな理由もなければ、ましてや死ぬどんな理由もない――齢を重ねるにつれて、私はますますそう思う。だから、根拠などまるでなしに生き、そして死のうではないか。


厭世的でニヒリズム的な感覚でありつつ、それが逆にポジティブな考えに転換されていて、そういう楽観性を持ってもいいのではないかと考えさせてくれる一節でした。

ちなみに、シオラン自身はもっと屈折した人で、色々ややこしい経路を辿って答えを探していて、その様子も非常にユニークで面白いものだったので、その辺りも実際にこの本を読んで体験してみてください。
(前述の引用のように、自分に必要な部分だけを摘む形でもいいと思います)


図らずも、10位-6位は僕と同じように世の中に生きづらさを感じている人に読んで欲しいラインナップになりました。
きっとあなたが生きる上での支えや、自分の思考を支える足掛かりになるかと思うので、気になった作品があればぜひ読んでみてください。


長くなってしまったので、5位-1位はまた後日に。

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