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尋ねる調査の限界とノンユーザーの“選択肢”に残る記憶の仕組み~プロフェッショナルを目指すための社長講義記録⑦

今日もわたしたちが所属している、トライバルメディアハウス社長池田(@ikedanoriyuki)の社内講義記録をあくせくまとめます。

不定期更新なので、少しお久しぶりです。
本日のテーマは「マーケティングリサーチ」と「消費者行動論」です。

一般的なマーケティングリサーチの手順

定性調査=仮説をあぶり出す調査
定量調査=仮説を立証する調査

なので、基本形は定性→定量の順番となる。

グループインタビューとデプスインタビュー

集団で行うグループインタビューと対面で行うデプスインタビューは、それぞれメリットとデメリットがある。

グループインタビューはグループダイナミクスで意見がどんどん発散されやすい点が特徴。しかし、声が大きめな人が現れることでその人の意見にメンバーが引っ張られてしまうことがある。(そうならないように進行するのがモデレーターの腕の見せどころだったりするのだが)

デプスインタビューは意見を深堀りできることが特徴。「なぜ?」を繰り返し尋ねることで心理に近づいていくことができる。

“尋ねる”マーケティングリサーチの限界

マーケティング1.0~2.0~3.0の流れを踏まえて考えてみる。
マーケティング1.0の時代は、プロダクトアウトの時代。作って知ってもらえさえすれば売れた時代。
マーケティング2.0の時代は、マーケットインの時代。STPで競合と差別化して、そのターゲットに欲しい物を尋ねて作れば売れた。

マーケティング2.0が全盛の時代では、市場は区切られ、同じ領域に競合企業がいることはなかった。なぜならSTPの目的は、競合がいないところを陣取ることだったから。

そして、消費者にもまだ未充足ニーズが多数あった時代。各企業は自社のターゲットに「欲しいものは何か?」を尋ねてそのとおり作れば売ることができたのである。

それが経済成長とともに、同じ市場に複数の企業が存在するとどうか。その各社が同じターゲットに同じ質問を繰り返す。そうすると出てくる答えは同じなので、リサーチの回答で生まれた商品は各社で違いが生まれず、コモディティ化を迎える。

もはや、生活者に“尋ねる”リサーチは限界なのだ。
生活者が気付いていない「インサイト」を探る旅がはじまる。

「聞く」から「気づく」リサーチへ

仮説を探すために、聞くのではなく行動観察をするエスノグラフィのような手法が注目を浴び始める。

エスノグラフィ
エスノグラフィーとは、文化人類学や社会学、心理学で使われる研究手法の1つです。もともとは、対象となる部族や民族の「文化」における特徴や日常的な行動様式を詳細に記述する方法のことを指します。
引用:「U-Site エスノグラフィー調査」https://u-site.jp/service-design/ethnography/

行動観察をしたあと、記録に残し、仮説を立てる手順となる。
「なんでこんなことするんだろう?」の発見が全ての始まりで、観察後のインタビューでそれを聞くという流れになる。

ここで発見された無意識下の行動からの発見が、深堀りすればイノベーションの種になるのかもしれない。

「買わない理由」を答えられるか?

シャンプーや歯磨き粉、レッドブルなどの飲料も、ユーザーが1日に消費する量に限界がある商品がある。

そうすると、今ある商品をもっと売るために企業が取り組むのがノンユーザー調査だ。しかし、ここに罠が潜んでいる。

その調査の際に聞いてしまいがちな質問の1つに、「あなたはなぜ◯◯を使わないのか?」という質問だ。

一度考えてみてほしいのだが、おそらく答えはでないと思う。なぜなら、「使わない理由なんか考えたこともない」からだ。

しかし、インタビュー調査の場という特殊な場所だと、回答者は謝礼ももらっているし…などを考えて、なんとか答えをひねり出す。その無理やり出てきた答えに踊らされてしまうのは危険である。

現代の消費者の情報処理とは?

マーケターは自身で体験することが大事とよく言われるが、それだけでは一流のマーケターになることはできない。なぜなら、その体験を言語化・構造化・抽象化するためには、必ず理論の力が必要になる。

自身がなぜその製品を買ったのか、なぜそれをしようと思ったのか。なぜいつも同じものを買っているのか。それを構造化するために役立つ理論が、消費者行動論である。以下の図は代表の池田作成のものだ。

生活者の脳にあるメモリ(作業領域)量は限られている。
その中に「いつもの=純粋想起ブランド」がいて、その中から人はヒューリスティックスという自動運転で行動をしている。ちなみに、自身にとって低関与すぎるモノを買う場合は(私の場合だとティッシュなどが該当する)、「いつもの=何でも良いから安いもの」の場合もある。

その純粋想起ポジションを獲得し、実際に反応、つまり購入へつなげるには5つの関門がある。

第一関門:気付いてもらえるか

世の中には情報があふれている。そもそも五感に届かなければその情報はその人にとって存在しないも同じである。(ただ目に止めるために派手にすればいいとか、どんな手段を使ってもいいというわけではない。)

第二関門:興味を持ってもらえるか

気付いてもらっても、興味を持ってもらわないと一瞬で忘却の彼方に消えていく。

第三関門:ジブンゴト化されるか

興味を持った情報をすこし咀嚼したタイミングで、いわゆる「自分ゴト化」=関心を持った状態になれば、長期記憶の中に入る。しかし、長期記憶は思い出すのに時間がかかる(あるいは思い出せない)ことがあるので、思い起こしてもらうためのコミュニケーションが大切である。一度自分ゴト化してもらうことができれば、次の情報は第一関門と第二関門は無条件で突破してもらいやすい。

第四関門:常に引き出される状態になるか

長期記憶の中でも、自分にとって特別なもの、好きなもの、お気に入りのもの、◯◯といえばで思い起こされるもの、というポジションをとることができるかの関門である。

刺激を受けたときにすぐに必要にならないことは多いので、「機会が発生する」「欲求が生まれる」タイミングですぐに思い出せるポジションにいることができるかが求められる。

第五関門:買うかどうか

たとえばとてもマクドナルドの気分だったのに、近くに店舗がないなど、機会が生まれすぐに想起されたのに、手に入れることができないという状態も往々にして起こりうる。

まとめ

自身の行動を振り返ったり、マーケターとして自身のブランドが買われるときに、どんな経験をユーザーはしているのだろう?と考えるときに消費者行動論のフレームワークは役に立ちます。

大切なのは、AIDMAやAISASなどのフレームワークがありますが、安直にそれを盲信しないことが大切です。(AISASでティッシュ買うフローって置けないですよね。検索しないですよね)

いろんな経験をして、どんどん咀嚼して構造化・言語化する学習はマーケターとして必ず役立つはず。私もどんどん実践したいと思います。

BtoBマーケティングのプロを目指すため、日々精進しています! ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます! スキくれる方はみんな大スキです(*´ω`*)