「声が大きい左派」の恫喝効果 立憲民主党を蝕んだもの

三品純氏が立憲民主党の敗北を分析しているが、これが興味深かった。

「今後、立憲民主党は「中道保守」路線に転換できるでしょうか。相当困難だと思います。少数ながら声は大きい支持者からも強烈な突き上げがくるはず。」

「若い女性活動家かあるいはLGBT活動家が「裏切られた」といってご覧なさい。もうパニックムービーですよ。そして「差別」と言い出す。新代表がどなたになるか分かりませんが「差別」というレッテル貼りに対して抵抗できるとは到底思えません。」

「仮に共産党と組んだから「立民が左に寄った」のが正しい分析ならば解決方法は簡単です。野党共闘を破棄すればいいだけの話。しかし共産党を切ったところで党内の声の大きな左派議員は存在しています。もとをただせば自民党との対抗路線から人権、護憲、SDGs路線を突っ走ってきました。なにせ支持者は声が大きいから彼ら彼女らのSNS言説を「世論」と捉えたのが大失敗です。」

<引用終わり>

「声が大きい左派」が叫ぶと、それが「世論」になる。

しかし、それは本当の「世論」ではなかった、というのを示すのが今回の選挙結果だ。立民の勘違いだった。

それは、マスコミの勘違いでもあった。新聞・テレビは、「声が大きい左派」の言い分を好んで報道する。それをまた左派が引用する、という形でスキャンダルを増幅させていった。

それに対して、国民は、国会で叫ぶ「声が大きい左派」を嫌って、軒並み落選させたのである。

「声が大きい左派」には恫喝効果があり、周囲はおかしいと思っても沈黙してしまう。それどころか、それに従ってしまう。

それで社会が動いてしまう。「サイレント・マジョリティ」がそれにストップをかけるまで。

こういうことは、いわゆるキャンセル・カルチャー、一部のセクハラ・パワハラ騒動の裏にも、共通して見えてくる構図だ。

呉座勇一氏が日文研をクビになった件にも同様の構図が見える。

同じようなことは過去にもあった。

三品氏も触れている部落解放同盟の糾弾戦術はかつて悲劇も生んだのだが、そのときもマスコミは沈黙していた。カレル・ヴァン・ウォルフレンの本が、「被差別部落」ではなく単に「部落」と書いただけで出版妨害を受けたときも、日本のマスコミは報じず、外国特派員協会が騒ぐことになった。(作家の活動が右翼に妨害されると、マスコミはすぐに報道するのだが)

かつて解同に絡まれたときに駆け込み寺になったのが共産党だったのだが、立民との共闘のために共産党のその機能も弱まっている、というのが三品氏が上の記事で指摘することだ。「声の大きい左派」は、結局「左派」自体もおかしくしている。

こうしたことは、繰り返し起こるようだ。

「声が大きい右派」もおり、その恫喝が力を持った時代もあった。しかし現代では、「左派」ほどの効果は持たないように思う。

ということは、「声が大きい左派」の恫喝には、現代において特別な効果があるということだ。それは、上述のように、マスコミという増幅装置を通して、呉座氏の例ではネット空間も使って、無限にエコーしていくように見えるからだろう。

この現象が起こっているのは日本だけではない。かつてのファシズム、「赤狩り」や文化大革命を連想させるこうした社会的恐怖の蔓延を、我々はどのようにして止めればいいのだろうか。

単に立民という一政党の問題を超えて考えてしまう。

なお、立民の失敗については、慶応大学の細谷雄一教授のツイッターでの以下の指摘も参考になる。

「今後ますます自民党優位の時代が続き、リベラル政党が埋没する可能性がある」

「そうなってしまった大きな理由として、民主党政権を総括するときに、党内権力闘争の結果、政権の失策を党内右派の失敗と位置付けたことにあるのでは。政権期に党内右派が閣僚ポストの多くを取ったことへの党内左派の反発。その結果野に下りてからは党内左派が支配的となり、イデオロギー路線に突入。」

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