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安倍晋三と統一教会 共産VS反共の闇深い歴史

この時代になって、しかもこんな機会に、統一教会や勝共連合、世界日報などの名前を聞くとは思わなかった。

私が大学に入った1970年代後半、キャンパスは「原理研問題」で持ちきりだった。原理研究会は、統一教会の関連団体で、大学を中心にオルグ活動をしていた。

当時は「昭和の終わり」が意識され、元号法制化など、草の根の右翼活動が活発化していた。

キャンパスでも、原理研究会の他、生長の家などの右派宗教団体が活動し、「堕胎反対」の署名運動なんかをしていた。

それらの団体と自民党との密接な関係は周知の事実で、統一教会と生長の家の両方に関わる玉置和郎氏(宗教政治連合会長、故人)が中心人物だった。



当時から、こうした「いかがわしい」宗教団体と自民党の関係は、左派マスコミの攻撃対象だった。(生長の家は、その後代替わりして、現在は穏健化しているが、旧生長の家のグループが日本会議に流れたようだ)

最近、安倍晋三と統一協会の関係をしきりに暴いていたのはアカハタだったが、その「安倍ヘイト」的な記事が、今回の事件に影響した可能性がある。

安倍晋三と統一協会との関係は、安倍「聖人化」を恐れる左派にとって、かつての「日本会議」に代わる格好の攻撃材料になるだろう。

だから、それに乗っかるのは、統一教会に復讐したかった暗殺犯の思うツボであり、同時にサヨク、アベガーの思うツボとなる。

だが、そうはいっても、保守政治家とこうした宗教団体の関係のいかがわしさは実際にある。今回の暗殺犯の動機とともに、事実は解明されなければならない。


私自身は、前に書いたように、安倍晋三の統一教会との関係は、岸信介以来の「家業」のようなものではないか、と思う。

1950年代、60年代に、日本の共産化を防ぎ、日本をアジアの反共の防波堤としようとした岸と、国際的な反共組織、勝共連合との関係は必然であっただろう。

冷戦の終了と、統一教会の社会問題化で、勝共連合の影響力は弱まっていたはずだが、どうも最近、また盛り返していたようだ。

安倍自身は、統一教会の霊感商法や合同結婚式に共感したわけではもちろんなく、反共の国際組織として政治的に結びついていたのだろう。

「家業」という意味は、こういうことだ。

たとえば、創価学会と密接な毎日新聞で、社の幹部が創価学会の本拠地「信濃町」もうでをしたり、毎日新聞のメデイアに創価学会会長の手記を載せたり、毎日新聞記者が創価学会のイベントに付き合って記事を書いたりするのと同じだろう、という意味だ。

それは、毎日新聞の幹部なり記者なりが、創価学会の会長なり思想なりを信奉しているからとは限らない。毎日新聞のスポンサーだから、政治的に付き合っている。それと同じようなことだろう。


勝共連合のような、国際的な反共組織が、いまだに大きな力を持つ背景は理解されねばならないと思う。

カルト性という点では、統一教会も相当だが、共産主義はもっとひどかった。

今の日本共産党などを見ていると、正義感にあふれた善男善女の集まりに見える。実際、そうなのだろう。

しかし、オウム真理教などを含め、正義感にあふれた善男善女が、ある信念やイデオロギーを共有することによって、突然狂う。それが恐ろしいのである。


勝共連合が発生し、日本の保守主義者との結びつきが生じた1960年代の国際情勢は、一触即発のカオスだった。

戦後の日本に共産化の危険はなく、60年代に若者がちょっと反乱しただけだーー同時代の人と話しても、そういう歴史認識を持つ人が多い。

しかし、それは間違っていると思う。特に当時の日本の保守系政治家にとっては、日本が共産化する危機感は現実的なものだった。

朝鮮半島の半分が共産化したあと、インドシナ半島でベトナムが共産化しつつあり、台湾やインドネシアも共産化の危機があった。ベトナムは実際に共産化し、カンボジアでポルポト革命が起こるのはその後のことである。

三島由紀夫が楯の会を作ったのも、60年代のうちに国内で革命状況が起こるだろうと思ったからだ。そうなると自衛隊が出動する。三島は、それを利用して、右派クーデターを起こそうと狙っていた(だから、日本の左翼もがんばってほしい、という思いがこの頃の彼の言動に出ている)。

しかし、日本を含めた先進国の「革命」は、60年代後半の盛り上がりを最後に、消え去る。(だから、あてが外れた三島は、70年に腹を切る。ちなみに、三島のような民族派は、生きていても勝共連合的なものとは一線を画したと思う)

その後のことを我々は知っているから、それ以前に日本の保守政治家が感じていた共産化への現実的恐怖感がわからない。1960年の安保改訂時に、デモ隊に殺されるかもしれないと思って国会に閉じこもっていた岸信介や佐藤栄作の気持ちはわからない。


共産主義は、最初から「インターナショナル」だったが、保守主義者は、基本的に国内に孤立している。

だから、反共主義の国際組織が必要であっただろう。

(世界の「王族」がある程度連携したと思うが、証拠はない。また、統一教会とは別に、キリスト教右派がそのような反共国際組織として機能したことは、想像に難くない。桜井よしこが在籍した「クリスチャン・サイエンス・モニター」は、いちおう宗教と距離を置いた一流紙だったが、統一教会との関係を取りざたされたことがあった)

そうした組織は、CIAのような西側の謀略組織と手を結んで、さまざまな事象にかかわっているはずである。

20世紀において、共産主義と、反共主義は、国際的な謀略合戦を繰り広げており、その全貌は今もわからない。たぶん永久にわらかない。

CIAのような機関が、世界各国で反革命運動を組織したことはある程度知られている。

一方、共産主義組織も、日本を含めて各地で謀略活動、スパイ活動を行なった。有名な事例は朝日新聞記者・尾崎秀実の事件だが、戦後も、露見しなかっただけで、同様の事象は多々あったと思う。


冷戦終了で、この共産VS反共の戦いは終わったかに見えたが、最近のウクライナ情勢に付随して見えてきたように、実は終わっていなかった。

冷戦後には、イスラム原理主義のような宗教要素が加わり、構図はさらに複雑化しているだろう。

一見、そうした国際的謀略と関係ないような事件や事故に、巨大な隠れた背景があるかもしれない。

共産側の利益と思われたものが実は反共側の利益であったり、またはその逆であったりと、よほど事情を知らない限りは意味が明らかにならないことも多いだろう。

少々大げさに思われるかもしれないが、安倍晋三氏のような人が殺された以上は、巨大な背景を想像せざるを得ない。犯人の「家庭の事情」だけが原因だとにわかに信じることはできないのである。





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